愛媛県松山市では、四国を代表する都市拠点であるJR松山駅の周辺整備の一環として、「バスタプロジェクト」に基づく新たなバスターミナルの整備構想が進行中です。これは、国土交通省が進める「バスタプロジェクト」に松山市が申請し、2023年度に選定を受け、2025年4月1日付けで国土交通省関係予算が発表され、「事業計画の検討」の段階に格上げされたことで正式に動き出したものです。2024年度中に整備の基本方針を策定することが目標とされており、将来的には都市の交通結節機能を大幅に強化するとともに、まちづくりと交通政策が融合した、持続可能な都市モデルの構築を目指しています。
松山駅は、JR予讃線・市内電車・伊予鉄道が交差する交通の要衝であり、観光・ビジネス・生活の各側面から見ても、地域全体の利便性に直結するエリアです。しかし現在のバス乗降場は、駅の東西に分散しており、利用者の乗換え導線がわかりづらいことが長年の課題となっていました。新たな整備では、こうした課題の解消に加え、観光都市・松山の玄関口としての魅力を高めるため、デザイン性や快適性にも配慮した複合的なターミナル整備が期待されています。
→松山市 松山駅のバスタプロジェクトが「事業計画の検討」の段階に格上げされました
→松山市 松山駅交通拠点機能強化検討会
松山駅前バスタ整備の概要
- プロジェクトの位置付け
愛媛県松山市が、国土交通省の「バスタプロジェクト」に選定され、JR松山駅周辺に新しいバスターミナルを整備する構想がスタート。 - 整備の背景
鉄道・市内電車・バスが交差する松山駅周辺で、バス乗降場の分散や乗換えの不便さが長年の課題だった。 - 交通結節点としての重要性
松山駅は四国の主要交通拠点であり、通勤・通学・観光など多目的な利用者の動線を集約する必要がある。 - 国の支援と連携体制
バスタプロジェクト選定により、国からの技術支援や財政的支援を受けながら、市・事業者との協力体制で整備が進められる。 - まちづくりとの一体化
交通インフラ整備に加え、駅前空間の景観や利便性向上など、都市再生と一体となった整備が構想されている。 - 利用者目線の設計
バス・電車の乗換え利便性向上、案内表示の多言語化、屋根付きの快適な待合空間などが検討されている。 - 今後の展望
2024年度中に整備の基本方針を策定し、段階的に整備を進行。松山駅を「次世代型の交通拠点」として再構築する計画。

松山市がバスタプロジェクトへの申請に踏み切った背景には、交通利便性に対する市民の声や、観光振興・都市再生に対する中長期的なビジョンがありました。特に松山駅周辺では、鉄道、バス、市内電車がそれぞれ別々の動線で運行しており、複数の交通手段を乗り継ぐ際の不便さが、観光客だけでなく通勤・通学者にとっても大きな障壁となっていました。また、駅の東西に分かれたバス停留所の配置は、駅前広場の活用や景観整備の妨げにもなっており、都市としての洗練度や利便性を損なう要因の一つとされてきました。
そうした中、2025年4月1日、国土交通省の予算発表により、松山駅で進められているバスタプロジェクトが「事業計画の検討」段階に格上げされました。これにより、国・県・市や交通事業者など関係者がより具体的な事業計画の策定に向けて検討を深めていくことになります。プロジェクトの最終的な目的は、交通機能の単なる強化にとどまらず、まち全体の魅力向上、地域経済の活性化、防災性の向上など、多角的な都市課題に対応できる「次世代型交通拠点」の構築にあります。

新たなバスターミナル整備に向けた方針では、JR松山駅西口を中心とした駅前広場の再構成が大きな柱となります。これにより、現在東西に分かれているバス停留所を一か所に集約し、電車やLRTとの乗換えを徒歩1〜2分以内で完結できるような動線設計が検討されています。さらに、バス利用者の待合環境の質を高めるため、屋根付きの上屋やデジタル案内板、多言語対応の表示機能を備えた施設の設置も想定されており、観光客にとっても分かりやすく、ストレスのない移動空間の創出が期待されます。

また、交通結節機能の強化だけでなく、駅周辺のまちづくりと連動した開発ビジョンも描かれています。駅前には既に商業施設やホテルが立地しており、バスターミナル整備と一体で再開発が進むことで、滞在型観光の促進やビジネス交流の活性化も期待されます。都市景観の向上や歩行者中心の空間設計など、公共空間の質的向上も視野に入れられており、単なる交通機能の強化にとどまらない、都市全体の価値を高めるハブ拠点としての整備が目指されています。


バスタプロジェクトの具体的な整備方針については、2024年度中に松山市が国土交通省および交通事業者と連携して基本方針を策定し、その後段階的に整備が進められる見通しです。初期段階では、現在の利用者動向やバス・電車の発着状況を詳細に分析し、最適な配置計画を策定します。その上で、駅前広場の再構成や、交通事業者との調整を経て、実際の整備事業が順次着工される計画です。整備完了後は、駅前の交通結節点としての機能が飛躍的に向上し、将来的には周辺地域全体の交通需要にも柔軟に対応できる拠点となることが期待されています。

また、都市の持続可能性という観点からは、自家用車に依存しない「公共交通優先のまちづくり」を進める上でも、このプロジェクトは大きな転換点となります。LRTや徒歩・自転車とのシームレスな接続性の向上、ユニバーサルデザインの導入、防災拠点としての機能確保など、多様な社会課題への対応力を備えた施設づくりが求められています。市民、観光客、事業者のすべてにとって「使いやすく、訪れたくなる交通拠点」を実現することで、松山市の都市価値そのものが一段と高まることが期待されます。

松山駅は、1927年に開業した愛媛県松山市の中心的な鉄道駅で、松山市中心市街地西側に位置するJR四国が運営する予讃線の駅です。以前は市街地から離れていたため、長距離利用者向けの駅でしたが、現在は、伊予鉄道の松山市駅と並んで愛媛県を代表する駅として機能しています。松山駅では、東西の交通分断や渋滞解消を目的に高架化事業が進められ、2008年に開始され、2025年に完了予定です。2024年9月には駅の高架化が完了し、2面4線の高架駅に生まれ変わりました。
新しい駅では、8両編成に対応する178メートルのホームと、バリアフリー対応のエレベーター・エスカレーターが整備され、商業施設や公共スペースも設けられました。構内には2か所の改札口や「だんだん通り」などの商業施設があり、利便性が向上しています。また、かつての車両基地は2020年に移転し、伊予鉄道の市内電車も乗り入れ、交通結節点としての機能が強化されています。松山駅は、交通と都市空間の改善を通じて、松山の新たな役割を担うことが期待されています。
最終更新日:2025年4月8日