国立大学法人九州大学および独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)は、2025年6月3日、かつて九州大学が位置していた箱崎キャンパス跡地約28.5haの再開発に向けた「事業基本計画書」に係る第1回審議委員会を開催しました。会場は九州大学旧工学部本館内の第一会議室で、関係各機関から選出された審議委員らが出席し、現段階での計画案について審議が行われました。
本計画は、福岡市や民間企業8社とともに、官・学・民の連携によって推進される大規模プロジェクトであり、箱崎地区における新たな都市空間の形成を目指しております。今回の審議委員会では、これまでの検討内容や都市機能の方向性、また各街区ごとの整備計画について具体的な説明が行われました。
→国立大学法人九州大学 箱崎キャンパス跡地利用
→福岡市 九州大学箱崎キャンパス跡地のまちづくり
九州大学箱崎キャンパス跡地地区の概要
1. 審議委員会の設置と目的
九州大学とUR都市機構、民間8社などが連携し、箱崎キャンパス跡地開発のための審議委員会を設置。事業基本計画の検討と意思決定の透明性を確保するための場となっている。
2. 都市機能とゾーニングの方針
「居住」「業務・研究」「教育」「交流・にぎわい」などの複合的な都市機能をゾーンごとに整備。JR新駅との連携やイノベーション拠点の形成を目指す。
3. 主要街区(A-1・A-3・C-2)の整備概要
各街区で住宅、緑地、生活支援施設を組み合わせた計画が進行中。居住環境の質向上と歩行者に優しい都市設計が強調されている。
4. C-1街区と交通結節点の活用
JR新駅と連動する複合施設がC-1街区に整備予定。業務・商業・居住を融合させ、回遊性や歩行空間の整備も重視されている。
5. 環境・緑化への配慮
既存樹木の活用や屋上緑化など、環境に配慮した都市開発が計画されています。四季を感じられるまちづくりと生態系保全が柱となる。
6. 教育・研究機能の充実
ナレッジゾーンにおける教育機関の整備、学校との連携、学生・企業寮の統合により、学びと地域の融合が促進される。
7. 今後の展開と地域連携
今後も地域との対話を重ねながら計画を具体化。歴史を尊重しつつ、新しい都市価値の創造を目指す再開発が進められる。

審議委員会は、2024年5月17日に締結された「優先交渉協定書」に基づき、九州大学、UR都市機構、福岡市、及び住友商事、大和ハウス、西部ガスなど計8社の民間事業者が共同で設置したものです。この委員会は、跡地開発の根幹となる「事業基本計画書」の審議・検討を行うもので、各分野の専門家によって構成されています。
今回の第1回委員会では、委員長および副委員長の選任が行われるとともに、計画策定の前提条件や評価軸、審査委員会の講評内容など、重要な資料が共有されました。これにより、今後の開発において透明性と客観性の高い意思決定がなされることが期待されています。


計画区域は「居住」「業務・研究」「教育」「交流・にぎわい」など多様な都市機能が融合する構成となっており、各ゾーンの性格に応じた開発が検討されています。特に注目されるのは、ナレッジゾーンやイノベーションコアといった新たな知的・創造的拠点の整備です。
加えて、JR新駅と連携したノースゲートゾーンでは、オフィスや商業施設の立地に加え、職住近接を実現する住宅や生活支援施設も計画されています。これにより、通勤や来訪の利便性と地域のにぎわいが共存する都市構造が目指されています。

A-1街区では、建物の最高高さを地上16階、高さ55mとしながらも、景観への圧迫感を軽減するため段階的な階層構成がとられています。計画戸数は約350戸で、広場や緑地、歩行者動線を重視した設計となっております。A-3街区では「サウスリビングストリート」を中心に、全天候型の快適な動線や、緑豊かな休憩空間の整備が予定されています。また、最大地上16階、高さ53m、計画戸数約1,000戸の共同住宅も建設されます。
C-2街区においては、最大地上18階、高さ60mの計約650の住宅が供給され、1階部分に生活支援機能(飲食店やカフェなど)を備える構成が検討されています。また、公共交通やモビリティとの連携も視野に入れた空間設計がなされており、歩道空間のにぎわい創出も重要なテーマです。


C-1街区は、業務・研究・居住の複合機能を担うゾーンとして位置付けられており、JR新駅とのスムーズな動線形成が重視されています。オフィス、賃貸住宅、商業施設の複合建築が検討されており、最大高さは35mと建蔽率や容積率も適切に調整されています。
また、当該街区ではまちの回遊性や歩行者の安全性に配慮した歩行空間が整備される予定で、来訪者や居住者が快適に過ごせる環境づくりが意識されています。JR新駅との一体的なまちづくりにより、地域全体のアクセシビリティが大幅に向上することが期待されます。

本計画では、「まちと建物をつなぐ外構緑化」や「既存樹木の活用」など、環境配慮型の都市開発が随所に盛り込まれています。残置可能な樹木は極力活用し、移植の必要がある場合もその歴史性や生態的価値を活かして再利用する方針です。木材チップや再生木材としての活用も検討されています。
さらに、建物の屋上まで緑をつなぐことで、生物多様性の保全や、緑視率の高い景観形成も目指されており、「環境と調和するまちづくり」という理念が反映されています。四季折々の植栽を取り入れることで、まちの賑わいにもつながる計画となっています。

ナレッジゾーンでは、複合型教育施設や専門学校の設置が計画されており、箱崎中学校との連携や通学路の安全性確保にも配慮した位置変更がなされています。また、学生寮と企業寮の統合により、世代や属性を超えた交流が生まれる居住空間の創出も期待されています。
このように教育と地域が融合する仕組みを通じて、次世代の人材育成やコミュニティ形成が促進されることになります。九州大学跡地という場所の特性を生かし、知と交流のハブとしての役割が高まっていくと見込まれています。


審議委員会では、今後も段階的に検討を進め、地域住民や関係者との意見交換を行いながら、より良いまちづくりを目指していく方針が確認されました。今回の第1回委員会で示された方向性をもとに、事業基本計画書のさらなるブラッシュアップが期待されています。
また、跡地が持つ歴史的・文化的価値を尊重しながら、新しい価値の創造を目指すこのプロジェクトは、福岡市東部エリアの将来像を大きく左右する重要な取り組みです。今後の動向にも引き続き注目が集まります。

最終更新日:2025年7月3日