岡山市は令和8年1月26日、都市計画決定済みである岡山電気軌道の路面電車延伸環状化事業「ハレノワ線(仮称)」(大雲寺前〜ハレノワ〜西大寺町間)について、運行事業者である岡山電気軌道株式会社と事業実施に合意し、事業計画案がまとまったと発表しました。
本計画は、岡山駅前エリアと表町・千日前エリアの賑わいを公共交通で結び、中心市街地の回遊性向上と都心活性化を図ることを目的としています。延伸区間は約0.6kmで、新たに「ハレノワ前電停」を設置し、ピーク時には1時間あたり3本以上の運行を想定しています。概算事業費は約27.4億円で、国の補助制度を活用し、市と国が折半で負担する計画です。
また、維持管理費や固定資産税相当額の市負担、運行後の収支調整スキームなど、持続的な運営を見据えた枠組みも整理されました。令和11年度中の運行開始を目標に、今後は調査設計や詳細設計へと事業が進められます。
→岡山市 路面電車の延伸環状化(大雲寺前~ハレノワ~西大寺町間)について事業計画案がまとまりましたのでお知らせします
ハレノワ線(仮称)の概要
1.事業の位置づけと合意の成立
岡山市と岡山電気軌道による、路面電車延伸環状化「ハレノワ線(仮称)」の事業計画案の公表。
令和3年都市計画決定区間における、整備・運営に関する正式合意の成立。
2.整備区間とネットワーク形成
大雲寺前~ハレノワ~西大寺町間、約0.6kmの新規軌道整備。
既存路線と連続する環状動線による、都心交通ネットワークの強化。
3.都市活性化と回遊性向上の狙い
岡山駅前エリアと表町・千日前エリアを結ぶ公共交通軸の形成。
中心市街地における人流拡大、滞在時間延伸、消費促進への寄与。
4.運行計画と利便性向上策
単線左回り運行、一部サイドリザベーション方式、新設「ハレノワ前電停」の整備。
ピーク時1時間3本以上の運行による、日常利用・イベント対応力の確保。
5.事業費と財源スキーム
総事業費約27.4億円、軌道・道路設計、軌道整備、道路改良を含む整備内容。
国補助1/2、市負担1/2による、安定的な財源構成。
6.維持管理と収支リスク対応
維持管理費および固定資産税相当額の市負担、みなし上下分離方式の採用。
赤字時50%支援・黒字時50%納付による、収支変動リスクの平準化。
7.スケジュールと今後の展開
令和8年度の調査設計着手、段階的な設計・施工の実施。
令和11年度中の運行開始を目標とする、都心交通機能高度化の推進。

ハレノワ線の最大の目的は、岡山駅前に集中している人の流れや賑わいを、表町・千日前エリアへと広げ、都心全体の回遊性を高めることにあります。現在の岡山市中心部では、駅前再開発や岡山駅前広場への路面電車乗り入れ整備が進められており、公共交通の利便性は大きく向上しつつあります。一方で、駅前と既存商業地・文化施設エリアとの回遊動線の弱さが課題とされてきました。

延伸区間の沿線には、岡山芸術創造劇場「ハレノワ」をはじめ、表町商店街、西川緑道公園筋、城下エリアなど、観光・文化・商業の集積地が点在しています。路面電車による新たな環状動線が形成されることで、徒歩移動に頼っていたエリア間の移動が容易になり、滞在時間の延伸や回遊消費の促進が期待されます。
路面電車は定時性・分かりやすさ・輸送力に優れた都市交通であり、高齢化の進行や自動車依存の見直しといった社会背景の中で、持続可能な都市交通ネットワークの中核を担う存在として位置付けられています。ハレノワ線は、岡山駅前乗り入れ事業と一体となり、岡山市の公共交通再編と都心構造の高度化を支える重要なインフラ整備といえます。

ハレノワ線は、大雲寺前〜ハレノワ〜西大寺町間の約0.6kmを新設する計画で、単線左回り運行を基本とし、一部区間ではサイドリザベーション方式(道路中央や側帯に専用軌道を確保する方式)を採用します。新たに設置される「ハレノワ前電停」は、劇場来場者や周辺施設利用者の新たな交通拠点となることが想定されています。
運行頻度は、ピーク時で1時間あたり3本以上を確保する計画で、日常利用だけでなくイベント開催時の輸送需要にも対応できるダイヤ設定が検討されています。利用予測では、「ハレノワ前電停」の乗降客数は約700人/日と見込まれており、一定の需要創出が期待されています。
概算事業費は約27.4億円で、内訳は軌道・道路設計、軌道整備、道路改良などが含まれます。財源は国の補助制度を活用し、国と岡山市がそれぞれ2分の1ずつ負担するスキームとなっています。令和8年度当初予算には調査設計費の計上が予定されており、その後、設計、工事、認可手続きを経て、令和11年度中の運行開始を目指します。

本事業では、岡山電気軌道が整備・管理・運行を担いながら、市が財政面で強く関与する「みなし上下分離」方式が採用されます。軌道施設の所有は形式上は事業者側としつつ、実質的には自治体が施設を所有しているものとみなし、維持管理費や固定資産税相当額を市が負担する仕組みです。
具体的には、ハレノワ線の維持管理費として年間約800万円、新設区間にかかる固定資産税相当額として年間約500万円程度を市が負担します。また、運行開始後の営業収支については、赤字の場合は赤字額の50%を市が支援し、黒字の場合は黒字額の50%を市へ納付するルールが設定されています。これにより、事業者の過度なリスク負担を避けつつ、公共交通としての安定運営を確保する狙いがあります。

整備費については、国の補助制度改正により、事業者が施設を保有する場合でも補助率1/2が適用可能となったことが、今回の合意形成を後押ししました。従来は事業者側の負担が大きく、民設民営方式での合意が困難でしたが、制度改正により現実的な事業スキームが構築された形です。

ハレノワ線構想は、令和2年に策定された「路面電車ネットワーク計画」や「岡山市地域公共交通網形成計画」において、延伸・環状化施策として位置付けられ、令和3年9月に都市計画決定がなされました。当初は民設民営方式で協議が進められましたが、コロナ禍による需要減少や事業者の経営環境悪化により協議は一時中断されました。
その後、国の補助制度改正や、岡山芸術創造劇場ハレノワの開館、地域公共交通計画の再整理などを背景に、令和6年度から協議が再開され、令和8年1月に事業実施の合意に至りました。岡山電気軌道は、車両の老朽化や収支の厳しさを抱えており、新たな投資を単独で行うことが難しい状況にあります。今回のスキームは、そうした実情を踏まえた現実的な公共支援モデルともいえます。

今後は、令和8年度に調査設計を実施し、順次詳細設計・工事へと移行する予定です。岡山駅前広場への路面電車乗り入れ整備とあわせて、都心の交通結節機能と回遊性が大きく強化されることが期待されます。ハレノワ線は単なる短距離延伸にとどまらず、岡山市の都市構造・公共交通政策の転換点となるプロジェクトとして注目されます。
最終更新日:2026年1月27日