いずみ野線A駅周辺まちづくり計画は、神奈川県藤沢市北部において、相鉄いずみ野線の延伸を見据え、秋葉台公園東側付近に設置が想定されている新駅を中心としたまちづくりの方向性を示した計画です。A駅は、小田急江ノ島線・相鉄いずみ野線・横浜市営地下鉄ブルーラインが乗り入れる湘南台駅と、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス周辺の「健康と文化の森」地区とのほぼ中間に位置する想定で、周辺には大規模商業施設や工業団地、住宅地、秋葉台公園などが立地しています。
藤沢市では、神奈川県、慶應義塾大学、相模鉄道などと連携して進められた延伸検討を踏まえ、市民や学識経験者、関係団体などによる検討委員会を設置し、地域住民へのアンケートや意見交換も実施されました。これらの検討結果をまとめた「いずみ野線A駅周辺まちづくり計画」は2014年3月に策定され、2016年3月には行政計画として「いずみ野線A駅周辺まちづくり基本計画」が策定されています。新駅を核とした地域の交流促進や商業・生活サービス機能の充実、緑豊かな住環境の形成、交通利便性と安全性の向上などを目指しています。
なお、A駅の設置やいずみ野線の延伸は、今後の事業計画や関係機関との協議などに関わる構想段階のものであり、まちづくり計画の内容がすべて事業化・整備決定されているわけではありません。
いずみ野線A駅周辺まちづくり計画の概要
1.計画の概要
相模鉄道いずみ野線の延伸を見据え、神奈川県藤沢市北部のA駅周辺で進めるまちづくり計画
新駅を核とした交流拠点の形成、商業・生活サービス機能の充実、緑豊かな住環境の整備
2.いずみ野線の延伸構想
湘南台駅から健康と文化の森地区方面への延伸構想と、秋葉台公園東側付近に想定されるA駅
B駅周辺の学術文化新産業拠点と連携した、沿線地域の交通利便性向上と都市機能の集積
3.周辺地区の現況と課題
大規模商業施設や工業団地、住宅地、秋葉台公園などが立地する藤沢市北部の市街地
南北方向の公共交通の不足、生活サービス機能の充実、住宅地への通過交通対策などの課題
4.商業・生活サービス機能の充実
既存の商業施設を生かした店舗の集積と、飲食店やカフェなどによる駅周辺のにぎわい創出
医療施設、子育て支援施設、金融機関、交流施設などの誘導による生活利便性の向上
5.緑豊かな街並みと交流空間の形成
駅前広場や街路樹、植栽などを活用した、ゆとりと潤いのある歩行者空間の整備
秋葉台公園や桐原公園、湘南の丘公園などを結ぶ緑のネットワークと良好な住環境の形成
6.交通アクセスと安全性の向上
駅前広場、バス・タクシー乗降場、自転車駐輪場などの整備による交通結節機能の強化
歩行者・自転車の安全確保、バリアフリー化、防犯・防災機能の充実と通過交通の抑制
7.地域住民との連携と今後の展望
まちづくり連絡会を通じた地域住民や関係機関との情報共有、意見交換による計画の具体化
鉄道延伸や周辺地区の整備と連携した、交通利便性と都市機能を備える新たな交流拠点の形成

相鉄いずみ野線の延伸は、湘南台駅から慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス付近を経由し、将来的には東海道新幹線新駅の誘致が進められている寒川町倉見地区・平塚市大神地区の「ツインシティ」方面へ接続する構想です。2012年3月に取りまとめられた延伸検討では、湘南台駅から健康と文化の森地区付近までを第1期区間とし、秋葉台公園東側付近にA駅、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス付近にB駅を設置する案が示されました。
この構想では、A駅周辺を「新たな交流拠点」、B駅周辺を「学術文化新産業拠点」として位置付け、水と緑に囲まれた多機能連携都市軸の形成を目指しています。A駅の整備によって、湘南台駅周辺と健康と文化の森地区を結ぶ交通ネットワークが強化され、地域住民の移動利便性や工業団地への通勤利便性の向上、駅周辺への新たな都市機能の集積などが期待されています。
一方、鉄道延伸の実現には、十分な利用需要の創出や事業性の確保が課題となっています。そのため、鉄道整備だけでなく、駅周辺のまちづくりや広域交通の拠点形成を並行して進め、沿線地域全体の魅力と利便性を高めていくことが重要とされています。

A駅周辺は、藤沢市北部の工業・商業・住宅機能が集積する地域です。駅の南側では土地区画整理事業によって道路などの都市基盤が整備され、住宅や商業施設、工場・事業所が混在する市街地が形成されています。北側でも北部第二(三地区)土地区画整理事業が進められ、周辺の市街地整備が進展してきました。また、東側にはいすゞ自動車藤沢工場や桐原工業団地などの工業集積地が広がり、西側には秋葉台公園が位置しています。
一方、交通面では湘南台駅方面と慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス方面を結ぶ東西方向のバス路線が運行されているものの、南北方向の公共交通は限られています。周辺には高倉遠藤線や藤沢厚木線などの幹線道路が通り、自動車によるアクセス性が高い反面、住宅地内への通過交通や大型車の流入、安全な歩行・自転車通行などが課題となっています。さらに、医療施設や子育て支援施設、金融機関などの生活サービス機能が十分に集積していないことから、新駅の整備を契機に、交通利便性と生活環境の双方を改善することが求められています。


A駅周辺のまちづくりでは、若い世代から高齢者までが暮らしやすく、にぎわいや活気のある地域の形成を目指しています。駅の近くには大規模商業施設が立地しており、地域住民の日常生活を支える重要な拠点となっています。今後は、既存の商業機能を維持しながら、飲食店やカフェ、パン店、書店、雑貨店などの魅力ある店舗の立地を促し、駅周辺に人々が集い、交流できる空間を形成する方針です。
また、住宅需要の高まりを見据え、マンションなどが駅周辺に立地する場合には、低層階に商業施設を配置することなどによって、駅前のにぎわいを創出する考えも示されています。さらに、医療施設やクリニック、子育て支援施設、金融機関などの誘導を通じて、生活利便性の向上を図るものとしています。小ホールや広場など、多世代が気軽に利用できる交流施設の導入も検討の方向性に含まれており、単なる鉄道駅の設置にとどまらず、地域住民や就業者、来訪者が日常的に集まる交流拠点の形成を目指しているとのことです。


A駅周辺では、ゆとりがあり落ち着いた駅前空間と、緑あふれる良好な住環境の形成を目指しています。駅前広場を整備する場合には、バスやタクシーなどの交通処理機能だけでなく、植栽やシンボルツリーを取り入れ、待ち合わせや交流の場としても利用できる空間とする考えです。また、高倉遠藤線や湘南の丘自転車歩行者専用道路などを活用し、街路樹や季節を感じられる植栽を配置することで、歩いて楽しい緑のネットワークを形成する方針です。

周辺の公園との連携も重要な要素となっており、既存の秋葉台公園や計画されている湘南の丘公園、桜の名所である桐原公園などを結ぶ歩行環境の充実が想定されています。一方、駅の整備や住宅需要の増加によって交通量が増えた場合には、住宅地内への通過交通の流入や、建築物の高層化に伴う日照・ビル風などの影響が懸念されます。そのため、地域の落ち着いた街並みや周辺環境との調和に配慮しながら、道路交通の抑制や建築物のあり方について検討し、利便性と住環境を両立させるまちづくりを進める考えです。


A駅周辺では、鉄道駅へのアクセス性を高めるため、駅出入口や駅前広場、バス・タクシー乗降場、自転車駐輪場などの配置・規模について検討する方針が示されています。駅出入口については、大規模商業施設の利用者や秋葉台公園の来訪者、工業団地への通勤者など、さまざまな利用者の動線を考慮し、幹線道路の横断をできるだけ避けられる配置や、エスカレーターなどによるバリアフリー化が構想されています。また、歩行者と自転車の通行空間の確保や、住宅地内への通過交通の抑制、防犯・防災機能の強化なども、安全で安心して暮らせる地域を実現するための課題となっています。

藤沢市では、2017年10月に「いずみ野線A駅周辺まちづくり連絡会」を設置し、六会・御所見・遠藤地区の地域住民などと、駅周辺のまちづくりや鉄道延伸、関連交通について情報共有と意見交換を続けています。
2025年3月の連絡会では第10回の意見交換が行われているほか、B駅周辺の健康と文化の森地区における土地区画整理事業やまちづくりガイドライン、BRTの機能強化、新幹線新駅誘致など、延伸に関連する取り組みも紹介されています。A駅周辺のまちづくりは、駅の設置だけでなく、地域住民や関係機関との連携を通じて、周辺地域全体の交通環境と都市機能を段階的に充実させていく取り組みとして位置付けられています。
出典・引用元:藤沢市 いずみ野線A駅周辺地区のまちづくり
最終更新日:2026年10月21日