都市高速鉄道12号線、いわゆる「都営大江戸線」の延伸計画が、練馬区大泉学園町から新座市を経て、清瀬市、所沢市の東所沢駅方面へと進展しつつあります。この延伸計画は、地域の交通利便性を飛躍的に高めるとともに、沿線エリアのまちづくりの在り方を大きく変える可能性を秘めています。とくに新座市では「新座中央駅(仮称)」の設置に向けた位置検討調査が実施されており、清瀬・東所沢でも新駅設置を前提とした具体的な構造案が検討されています。
延伸計画は国の交通政策審議会答申においても評価が進んでおり、過去の答申から大きな前進を見せています。
→新座市 都市高速鉄道12号線(大江戸線)の延伸促進活動
→新座市 地下鉄12号線(大江戸線)延伸促進活動に係るまちづくり構想の見直しについて
→所沢市 都市高速鉄道12号線(地下鉄大江戸線)の延伸に関する調査研究について
→清瀬市 都市高速鉄道12号線延伸に向けた基礎調査報告書(平成31年3月)
都市高速鉄道12号線(都営大江戸線)大泉学園町駅以西延伸の概要
1.都市高速鉄道12号線とは
都営大江戸線として知られる都市高速鉄道12号線は、東京都を環状に結ぶ全長40.7kmの地下鉄路線。現在、練馬区の光が丘から埼玉県東所沢方面への延伸が計画されている。
2.延伸計画の経緯
昭和60年の交通政策審議会答申第7号から検討されてきたが、平成28年の答申では「光が丘〜東所沢間の一体整備」が初めて明記され、実現に向けた動きが加速している。
3.新座中央駅の検討状況
新座市では「新座中央駅(仮称)」の設置位置をめぐる調査が進行中。3案(坂下・坂上・関越道寄り)で構造・コスト・地域影響を比較検討している。
4.清瀬北部駅の計画案
清瀬市では通信所北側に「(仮称)清瀬北部駅」の設置が検討されており、狭い導入空間の課題を克服するため、上下2層構造の地下ホーム案が浮上している。
5.東所沢駅との接続方針
JR武蔵野線・東所沢駅に隣接する形で新駅の地下設置が検討されているが、既存駅構造との接続は難しく、徒歩やバスによる連絡交通の整備が課題。
6.各自治体の取り組み
新座・清瀬・所沢・練馬の4自治体は延伸促進協議会を結成。要望活動や調査、建設促進基金の設置など、連携した準備を進めている。
7.今後の展望と課題
延伸実現には、まちづくりとの整合、財源確保、地域合意の形成が不可欠。単なる鉄道延伸にとどまらず、地域全体の都市構想を左右する重要プロジェクトとなっている。

都市高速鉄道12号線(都営大江戸線)は、東京都の練馬区光が丘から都心部を経て再び光が丘に戻る、環状型の路線です。全長40.7kmを有し、日本最長の地下鉄として2000年に全線開通しました。延伸区間については、これまでの交通政策審議会答申においても段階的に評価が進んでおり、昭和60年の第7号答申で「新座市方面」への検討が示唆され、平成28年の最新答申では「光が丘〜東所沢間の一体整備」が初めて明記されました。
この動きを受け、新座市、清瀬市、所沢市、練馬区の4自治体が連携し、延伸促進協議会を結成。東京都および埼玉県に対する要望活動やPR、調査事業などを継続して展開しています。延伸の実現には、地域の熱意ある取り組みと同時に、計画段階での綿密な構造検討やまちづくりとの整合が求められており、各市では新駅設置を想定したまちづくり構想の策定が進められています。

新座市では、延伸ルート上に想定される「新座中央駅(仮称)」の位置を巡って、令和6年度に「新駅位置検討調査」が実施されました。候補地は馬場地区内の3カ所(高低差の低い坂下エリア、高い坂上エリア、関越自動車道寄り)で、構想時は掘割式の半地下構造を主としながらも、高架・地下・地上の構造別にメリットとデメリットを検証しています。
▼各案の特徴:
A案(坂下):施工上の支障が少なく、コスト優位。ただし住宅エリアへの影響が懸念される。
B案(坂上):市役所や観光地に近接し、利用者増が期待できるが、延伸距離が長くコストは最も高い。
C案(関越道寄り):物流エリアとの連携可能で事業延長が最短だが、用地買収コストが膨らむ可能性がある。
構造面では、高架案がコスト効率に優れ、まちづくりと一体化しやすいものの、地域の分断や日照への影響が課題です。地下案は都市景観への影響が少ない一方で事業費が高くなります。地上案は利便性が高いものの、交差道路との整合など課題が残ります。
新座市は、12号線の延伸を新たな都市拠点形成の契機と捉えており、美しい自然環境と調和しながら利便性の高いまちづくりを推進する構想を描いています。

清瀬市では、「(仮称)清瀬北部駅」の設置が想定されており、基本ルートは通信所北側を通る形で地下鉄12号線が進行する計画です。この駅は、東村山市との市境付近に位置し、都市計画道路・東村山3・4・17号線と3・4・26号線の交差部付近が導入空間とされています。
しかしこの地点では、道路幅員が16mと狭いため、一般的な地下駅の島式ホームを設置するには不十分であり、上下2層式のホーム構造(1面1線のホームを2層に分けて配置)とする特異な設計が検討されています。これは、周辺に住宅が密集しており用地買収が難しいという現実を反映したもので、限られた空間内で機能的な駅整備を行うための創意工夫といえます。
このように、清瀬北部駅の計画は技術的課題を抱えつつも、市街地と一体となった地下駅整備を進める方針であり、清瀬市北部の活性化に資する交通拠点として期待が寄せられています。

東所沢駅では、JR武蔵野線との接続が大きなテーマとなっています。現在の計画では、東所沢駅の東側にある都市計画道路3・4・21東所沢駅前線の地下空間を活用して、地下駅を設置する案が検討されています。道路幅員は18mで、一般的な地下駅の建設が可能な空間幅とされています。
一方、JR武蔵野線の東所沢駅自体は掘割構造となっており、新駅をJRの既設構造と交差する形で設けるのは技術的・コスト的に困難と判断されています。そのため、新駅はJR線に交差せず手前で終点とする案が主軸となっており、両駅の連絡をスムーズにするためには歩行者動線やバス交通の整備も併せて検討が必要です。
東所沢駅周辺は、物流拠点や再開発の計画も進行しており、大江戸線との接続によって地域の交通利便性が格段に向上することが期待されています。


延伸計画の実現に向けては、国の交通政策審議会の答申内容に基づいたルート案・駅構造の具体化とともに、地域の合意形成と事業費の負担構造の整理が不可欠です。特に、駅周辺の土地利用や都市計画との整合性、沿線住民の理解と協力が、事業進行の鍵を握ります。
新座市では建設促進基金の設置、清瀬・所沢でも基礎的な課題整理や構造調査が進行しており、今後のさらなる進展には、4自治体が一体となって国や都道府県との連携を深めることが求められます。
この延伸計画は、単なる交通インフラの整備にとどまらず、地域の新たな都市ビジョンと共鳴する事業であり、地域の未来像を共有する「まちづくり」の取り組みとして、ますます注目が集まっています。
新座市 新駅周辺予定地のまちづくり

新座市では、鉄道空白地帯となっている市中央部の課題を解消し、地下鉄12号線(大江戸線)の早期延伸を実現するため、駅設置予定地周辺のまちづくり構想を見直しています。その一環として、市職員によるワークショップを通じて将来像のビジュアル案を策定し、これに対する市民の意見を収集するためのアンケート調査を実施しました。
まちづくり案は、「流動人口8万人のまち」として計画されたA案と、「来て楽しい・住んで嬉しい」を掲げたB案の2案が提示されています。A案では、貨物列車の乗入れによる物流拠点化、病院や住宅の複合エリア、保育園から大学までの一体的な教育ゾーン、駅前商業空間や高速道路と連携したハイウェイオアシス整備などを構想。雨水貯留施設の導入による防災対策も盛り込まれています。一方、B案では、小中一貫教育や自然と共生した住環境、ホテルと医療の融合、屋上BBQスペース付き複合商業施設、最大5000人収容のアリーナなど、暮らしの質と交流の創出に焦点を当てた内容となっています。

まちづくり全体の方向性としては、2015年に市が定めた「快適都市」「観光都市」「防災都市」の3つを統合する複合都市像が基本となっており、「住んでよし」「訪れてよし」「安全・安心」の実現が掲げられています。これに基づき、駅周辺(仮称:新座中央駅)を中心とする半径600m圏(約90ha)を構想区域とし、地形や都市計画に即した再整備が進められる予定です。区域の柔軟な見直しも今後の課題や変化に応じて検討される方針です。
今回の構想見直しは、まちの将来像を市民と共有しながら計画の具体化を図る試みであり、地下鉄延伸の実現性向上に向けた重要なプロセスと位置付けられています。
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最終更新日:2025年7月16日

