第一生命保険株式会社と清水建設株式会社は、東京都中央区京橋の日本橋・銀座エリアを結ぶ中央通りと鍛冶橋通りが交差する都心の一等地に、木造ハイブリッド構造による高層オフィスビル「第一生命京橋キノテラス」の建設を進めています。足場やシートが外されて外観が姿を現し、竣工が間近に迫っています。
地上12階、地下2階、延床面積約16,000平方メートル、高さ約56メートルの本ビルは、国内最大級の木材使用量約1,000立方メートルを誇る中高層木造ビルとして注目されています。最新の耐火・耐震技術を駆使し、木材と鋼材を適材適所で組み合わせる清水建設の「シミズハイウッド」技術を導入。40メートル×17メートルの無柱空間や、開放感あふれるファサードなど、環境に配慮しつつ快適で機能的なオフィス空間を実現しました。国土交通省のサステナブル建築物等先導事業にも採択され、建築技術の普及や持続可能な社会実現への寄与も期待されています。
→第一生命保険株式会社/清水建設株式会社 東京都中央区京橋における木造ハイブリッド構造の賃貸オフィスビル計画 サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)に保険業界初の採択決定
→清水建設株式会社 中央区京橋で木造ハイブリッド構造のオフィスビルが近く上棟
第一生命京橋キノテラスの概要
- プロジェクト概要
第一生命保険と清水建設が東京都中央区京橋に地上12階、地下2階、高さ約56メートルの木造ハイブリッド高層オフィスビル「第一生命京橋キノテラス」を建設中。 - 立地の特徴
日本橋・銀座エリアを結ぶ中央通りと鍛冶橋通りの交差点に位置し、高い視認性と交通利便性を持つ都心一等地。 - 先進的な構造技術
木材と鋼材を組み合わせた清水建設の「シミズハイウッド」技術を活用し、耐火・耐震性能を確保した国内最大級の木材使用量を誇る中高層木造建築。 - 快適なオフィス空間
40m×17mの無柱空間や開放感のあるファサード設計で、執務環境の快適性と機能性を追求。 - 環境配慮とCO2削減
約1,000立方メートルの木材使用により、鉄骨造建物と比べ約20%以上のCO2削減を実現し、持続可能な社会づくりに貢献。 - 持続可能な森林管理
北海道足寄町の「第一生命の森」や群馬県川場村の「シミズめぐりの森」などでの植林活動を通じ、木材のウッドサイクルと環境保全を推進。 - 社会的意義と先導的役割
国土交通省のサステナブル建築物等先導事業に採択され、木造高層建築の普及や安全性向上に寄与する先進モデルケース。

本ビルは、東京都中央区京橋二丁目に位置し、日本橋と銀座をつなぐ主要な大通りである中央通りと鍛冶橋通りが交差する「京橋交差点」に面しています。この立地は、都内でも有数の交通量・歩行者数を誇り、ビジネスや商業の中心地として極めて高い視認性を持つことが特徴です。建物は地上12階、地下2階建てで、延べ床面積は約16,000平方メートルに達します。構造は木造と鉄骨造を組み合わせたハイブリッド構造を採用し、環境配慮型の木質建築として国内でも先進的なモデルケースとなっています。特に、従来の木造建築では困難とされてきた14階級の高層化と大スパン無柱空間の実現に挑戦し、オフィスフロアの快適性と機能性を両立させています。
さらに、周辺では東京スクエアガーデンや京橋エドグランなど大型再開発が進んでおり、高層部のセットバックによる視界の開放性が高まっています。本ビルの設計もこれらの周辺環境を最大限に活かし、執務室から銀座や日本橋方面への視線の抜けを意識した開放的な空間づくりが行われています。


第一生命京橋キノテラスの最大の技術的特徴は、木材の温かみや環境性能を活かしつつ、耐震性・耐火性・施工性を確保するために、木材と鋼材を最適に組み合わせたハイブリッド構造技術「シミズハイウッド」を採用した点です。
特に注目されるのは、長大スパンを可能にした「ハイウッドビーム」と呼ばれる耐火木鋼梁です。木材を耐火被覆した鉄骨梁で、これまでの1時間耐火仕様を大幅に強化し、国内初となる2時間耐火認定を取得しました。木材が炭化層で遮熱する性質とせっこうボードの燃え止まり層を活用し、構造の安全性を高めています。また、地震時に圧縮力をCLT(直交集成板)が、引張力を鋼材ブレースが担う耐震壁「ハイウッドウォール」は、高靭性・高耐力を実現しつつ、木材の自然な美観を活かせる設計となっています。

さらに、「ハイウッドスラブ・サポートレス工法」というRC(鉄筋コンクリート)とCLTの合成床技術では、CLTを型枠兼化粧材として使用し、従来必要だった床下の支保工を省略。これにより施工の迅速化とコスト削減を実現し、音振動性能や防耐火性能の向上にも寄与しています。これらの先進技術は、中高層木質建築物の施工性や耐久性を飛躍的に高め、今後の木造建築の可能性を広げる画期的な挑戦です。


第一生命京橋キノテラスは、約1,000立方メートルの木材使用によって、鉄骨造の標準建物と比べ約20%以上のCO2排出削減効果を見込んでいます。さらに、木材のCO2固定量は約710トンにのぼり、建物全体の環境負荷低減に大きく貢献します。
木材は再生可能な資源であり、適切な森林管理によって持続可能なサイクルを形成可能です。木材利用は環境負荷を減らすだけでなく、オフィス利用者の心身の健康や生産性向上にも寄与するとされており、本ビルはQOL(Quality of Life)の向上や健康経営を目指した施設設計となっています。加えて、建築材料の選定や耐久性確保のために、屋外に使う耐火集成材には防水シートや通気層を設ける工夫を行い、長期的な資産価値の維持にも注力しています。

本プロジェクトは単なる建築物の建設にとどまらず、木材の持続可能な利用を促進する「ウッドサイクル」の実現に積極的に取り組んでいます。
第一生命保険は、北海道足寄町にて「第一生命の森」づくりを2022年6月から開始。森林保全団体「more trees」と連携し、地域適合した樹種の植林を通じて二酸化炭素の吸収と生物多様性の保全に貢献しています。地元住民や関係団体と協働し、地域に根差した持続可能な森林づくりを推進しています。

一方、清水建設は群馬県川場村において「シミズめぐりの森」プロジェクトを展開。木材の需要拡大を見据え、植林・育林・伐採を長期計画で循環させ、40年目以降に伐採した樹木を建築材として利用する体制を構築。これにより、木材資源の持続的な供給と環境保全の両立を目指しています。
このように建物の木材使用のみならず、原材料となる森林の整備や環境保護活動も包括的に進めることで、サステナブルな社会実現に寄与しています。

「第一生命京橋キノテラス」は、国土交通省の「令和4年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に採択された先導的な木造建築物であり、保険業界における採択は初の快挙です。これにより、木質建築の安全性・快適性・経済性を示す重要なモデルとなります。
建設現場では竣工に向けて最後の内装工事等が進み、足場撤去により外観が現れたことで、その斬新な木質デザインが街並みに溶け込み、地域や社会に木材建築の魅力を伝えています。
最終更新日:2025年7月1日