横浜市中区と西区を結ぶ歴史的な遊歩道「汽車道(きしゃみち)」では、老朽化した木製ボードウォークの改修工事が進められています。かつて臨港線として港と旧横浜駅を結んでいた鉄道跡を活用したこの遊歩道は、現在も線路や橋梁といった産業遺産を残す貴重な存在です。
今回の工事では、デッキの下に隠れていたレールや枕木が姿を現し、往時の鉄道の姿が垣間見える状態となっています。今後も安全性と景観を保ちながら、複数年にわたって段階的に改修が進められる予定です。
汽車道/ボードウォーク改修工事の概要
1.鉄道遺構を活かした歴史的遊歩道
旧横浜駅と新港埠頭を結んだ臨港線跡を再生した歩行空間。
港町・横浜の産業遺産を現代に伝えるシンボル。
2.ウッドデッキ老朽化に伴う改修工事
長年使用された木製ボードウォークの更新。
歩行者安全と景観保全を両立させる補修計画。
3.桜木町側から進む第3期工区
港一号橋梁から港二号橋梁までの施工範囲。
2025年7月中旬から翌年3月下旬までの実施予定。
4.通行を確保しながらの段階施工
歩道幅を半分に制限し、安全対策を徹底。
交通誘導員配置による安心な歩行空間の維持。
5.デッキ下に現れる鉄道の痕跡
レールや枕木、バラストが露わになる景観。
往時の臨港線を想起させる歴史の可視化。
6.保存される3基の歴史的橋梁
港一号橋梁から港三号橋梁に至る鋼トラス構造。
近代化産業遺産として認定された文化的価値。
7.横浜ウォーターフロントの回遊軸
日本丸メモリアルパークや赤レンガ倉庫を結ぶ動線。
港の記憶と都市の未来をつなぐ散策ルート。

汽車道は、旧横浜駅(現在の桜木町駅付近)と新港埠頭を結んでいた臨港線の廃線跡を活用し、1997年に開通した全長約500メートルの遊歩道です。もともとは1911年(明治44年)に開通し、貨物輸送を中心に運行されていましたが、1920年からはサンフランシスコ航路に合わせて旅客列車(ボートトレイン)も運行されていました。
戦後の米軍接収や貨物線としての役割を経て、1986年に廃止。その後、横浜博覧会(1989年)で一時的に旅客線として復活し、博覧会終了後に廃線となったのち、1997年に「港湾緑地」として再整備されました。鉄道遺構を保存しながら都市景観と調和した空間として、多くの観光客や市民に親しまれています。

汽車道に架かる「港一号橋梁」「港二号橋梁」「港三号橋梁」の3橋は、いずれも明治期に製作された貴重な鋼トラス橋であり、横浜市の認定歴史的建造物に指定されています。アメリカ製とイギリス製の橋梁が並び、産業技術史的にも価値が高い構造物です。
2007年には経済産業省による「近代化産業遺産群33」にも選定され、「貿易立国の原点」である横浜港の発展を物語る遺産の一部として評価されています。また、汽車道は2001年に「土木学会デザイン賞最優秀賞」を受賞。周囲の赤レンガ倉庫やナビオス横浜と一体化した景観設計は、横浜の都市デザインを象徴する事例として高く評価されています。


現在進められている「汽車道ボードウォーク改修工事(その3)」は、木製デッキの老朽化に伴う根太材の交換および床板の表面加工などを行うもので、2025年7月中旬から2026年3月下旬までの実施が予定されています。工事区間は桜木町駅側の港1号橋梁から港2号橋梁までで、昨年度に続く第3期工事にあたります。歩道幅を約半分に狭めて施工するため通行止めは実施されず、交通誘導員を配置して安全を確保しています。バリケード越しに下部構造が見える区間もあり、線路・枕木・バラストなどの鉄道構造物が確認できることから、工事中ならではの貴重な光景が広がっています。


汽車道の両端には、日本丸メモリアルパークや運河パーク、赤レンガ倉庫などの観光施設が並び、横浜のウォーターフロントを代表する回遊ルートを形成しています。特に運河パーク周辺はロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」や水上バスのピアなどが整備され、桜木町駅前から海辺までシームレスにアクセスできる都市空間が整っています。今後も汽車道は、安全性の確保と景観保全を両立させながら、横浜港の歴史と未来をつなぐ歩行者空間として再整備が進められる見込みです。改修完了後には、歴史的橋梁と新たなボードウォークが調和した、より魅力的な散策ルートとしての再生が期待されています。
最終更新日:2025年11月9日

