松山市中心部、松山城の麓に広がる愛媛県庁敷地内で進められている「愛媛県庁第二別館新築工事」は、県庁機能の耐震化と災害対応力の強化を目的とした、約50年ぶりの大規模な建て替え事業です。新庁舎は地上11階・地下1階、延床面積1万4,255.36㎡の規模を持ち、地下1階には柱頭免震装置を備える免震構造を採用。各階にはCLT耐震壁も導入され、地震に強く、かつ環境負荷の低い庁舎として整備が進められています。
老朽化した既存建物の解体を経て、2023年10月に起工式が行われ、同年11月に本格着工。完成は2026年1月を予定しており、建設工事の進展とともに外観も姿を現し、県庁街区の新たなランドマークとして存在感を高めつつあります。
愛媛県庁第二別館新築工事の概要
1.約50年ぶりとなる県庁第二別館の建て替え事業
老朽化と耐震性能不足を背景に実施される新築計画。
大規模災害時にも機能を維持する県庁施設更新の中核事業。
2.地上11階・地下1階、延床約1万4,000㎡の新庁舎規模
最高高さ51.5mの中高層庁舎として整備される行政施設。
県庁街区における新たなランドマークとなる建築規模。
3.地下柱頭免震とCLT耐震壁による高い耐震性能
免震構造と木質耐震壁を組み合わせた複合的耐震対策。
地震被害の低減と環境配慮を両立する構造計画。
4.防災オペレーションルームを核とした災害対策拠点化
第一別館防災フロアと接続する回廊型防災動線の構築。
指揮・情報集約・関係機関連携を担う中枢機能の集約。
5.官民共創拠点「E:N BASE」によるDX推進の場の創出
交流・イベント・スタジオ・キッチンを備える共創空間。
政策形成と地域ビジネス創出を支える新しい行政機能。
6.ZEB Ready達成を目指す省エネルギー・環境配慮設計
高断熱外皮と高効率設備による一次エネルギー削減。
太陽光発電・雨水利用・EV充電設備などの導入。
7.歴史的県庁本館と調和する景観・配置計画
縦基調デザイン継承と低層部の開放的基壇部構成。
松山城麓の景観と県庁街区全体の一体性への配慮。

新しい第二別館の最大の役割は、県庁の災害対策機能の中核拠点となることです。3階には「防災オペレーションルーム」が設置され、既に防災フロアを有する第一別館3階と連絡通路で接続。回廊型の動線によって両館のフロアを一体的に運用できる構成とし、災害時の指揮・情報集約・関係機関との連携を迅速に行える体制を構築します。

敷地は最大2m程度の浸水が想定される区域に位置していることから、電源喪失対策も重視されています。2回線受電方式の採用に加え、非常用発電設備や高圧電源車接続口を整備し、電気室は最上階に配置。さらに免震装置を地下1階の柱頭部に設け、地上部全体を免震建物として計画することで、地震時の揺れを大幅に低減します。また、敷地が土砂災害特別警戒区域に隣接していることを踏まえ、土砂荷重を考慮した構造設計がなされており、複合災害にも耐えうる事業継続性(BCP)を重視した庁舎となっています。

新庁舎の低層部には、愛媛県のDX推進と地域連携の拠点となる官民共創スペース「E:N BASE(エン・ベース)」が整備されます。1階は来庁者が自由に出入りできる交流・共創・セミナーゾーンやカフェ、イベント対応のステージを備えたオープンな空間とし、2階にはキッチンやスタジオ、ディスカッションや共同研究に適したコラボレーションエリアなど、多様な活動を支える機能が配置されます。


名称の「E:N BASE」には、愛媛(Ehime)の頭文字「E」と、Next・Nodeなど多様な意味を持つ「N」を結び、共創の“縁”を広げる拠点でありたいという思いが込められています。産学官が日常的に交わることで、政策形成やビジネス創出につながる場とする狙いがあり、2026年5月以降の開設が予定されています。
施設内では高速Wi-Fi、Web会議設備、入退館認証システム、BEMS(ビルエネルギー管理)などのデジタル基盤も整備され、庁舎でありながら、民間施設に近い柔軟なワークスタイルを可能とする点も特徴です。
第二別館は、省エネルギー性能と環境負荷低減にも重点を置いた計画となっています。外皮性能の向上や高効率設備の導入により、基準一次エネルギー消費量から50%以上削減するZEB Readyを達成予定で、将来的なZEB庁舎化も視野に入れた設計です。

屋上には太陽光パネルを設置し、庁舎で使用する電力の一部を賄うほか、雨水貯留槽による水資源の再利用、EV急速充電設備の整備など、脱炭素社会を見据えた設備が導入されます。
構造面では、鉄骨造を基本としつつ、各階の南北面を中心にCLT(直交集成板)耐震壁を配置。地震時の水平力の一部を木材が負担する構成とし、構造性能の向上とともに、内装に木の温もりを感じられる空間づくりにも寄与しています。公共建築における木材活用の先進事例としても注目される庁舎となっています。

県庁敷地内には、1929年竣工の鉄筋コンクリート造4階建て「愛媛県庁本館」が現役庁舎として使用されており、国登録有形文化財にも指定されています。建築家・木子七郎の設計によるH字型平面とドーム屋根の塔屋を持つ外観は高い意匠性を誇り、内部には大島産花崗岩や当時最先端の建材が用いられるなど、歴史的・建築的価値の高い建物です。

新しい第二別館の外観デザインは、この本館をはじめ、第一別館や議事堂といった既存施設との調和を重視し、本館の縦基調の開口部デザインを継承しつつ、各棟の素材感を生かした落ち着いた構成としています。低層部は開放感のある基壇部デザインとし、市民に開かれた県庁としての印象を強める計画です。
また、来庁者動線を西側に集約し、バリアフリー動線や分かりやすいサイン計画を整備することで、歴史的建築と最新庁舎が共存しながら、誰もが使いやすい県庁街区を形成する点も大きな特徴となっています。
最終更新日:2026年1月12日