等々力緑地は、神奈川県川崎市中原区に位置する面積約43.5haの総合公園であり、豊かな緑と水辺空間、そして多彩なスポーツ施設を併せ持つ都市の中核的なオープンスペースです。園内には、Jリーグ・川崎フロンターレの本拠地である川崎フロンターレが使用するUvanceとどろきスタジアム by Fujitsu(等々力陸上競技場)をはじめ、等々力球場、とどろきアリーナ、テニスコート、釣池、ふるさとの森などが集積しています。
一方で、施設の老朽化や防災機能の強化、武蔵小杉駅周辺の再開発による人口増加、気候変動に伴う豪雨災害リスクの高まりなど、新たな課題も顕在化してきました。こうした背景を受け、川崎市はPFI法に基づく手法を活用し、「再編整備」と「管理運営」を一体的に推進する「等々力緑地再編整備・運営等事業」を実施しています。事業期間は2023年度から2052年度までの30年間で、2029年度末の整備完了を目指し、段階的な供用開始が予定されています。
等々力緑地再編整備・運営等事業は、「スポーツと文化の感動」「健やかで豊かな生活」「地域の安心と安全」を柱に、次の100年へと続く“まちの誇り”を創出するプロジェクトです。
等々力緑地再編整備・運営等事業の概要
1.都市の中核を担う総合公園
神奈川県川崎市中原区に位置する約43.5haの広域総合公園。
緑と水辺、多彩なスポーツ施設を備える都市の中核的オープンスペース。
2.再編整備事業の背景と推進体制
施設老朽化や防災機能強化、人口増加への対応を背景とした再編計画。
PFI方式による整備・運営一体推進と川崎とどろきパーク株式会社による事業体制。
3.次の100年を見据えた未来像
日常とつながり人生の節目となる「まちの誇り」を目指す将来像。
スポーツ・ウェルネス・遊び・創造が融合する新たな緑地像の提示。
4.スポーツと文化の感動を生む施設整備
約35,000人規模への拡張と臨場感を高める球技専用スタジアム整備。
約5,000人規模アリーナを核とする複合スポーツ・文化拠点の形成。
5.健やかで豊かな生活を支える空間形成
「みんなのはらっぱ」やアクティビティループによる回遊性向上。
インクルーシブ空間や樹林再生を通じた世代横断型ウェルネス環境の創出。
6.防災機能と安全性の強化
雨水貯留や可動堰整備による豪雨対策と建築物の浸水対策。
防犯カメラや照明整備、関係機関連携による総合的安全基盤の構築。
7.段階的整備と今後の展望
2023年度開始、2029年度末完成を目指す長期事業スケジュール。
スポーツ・文化・自然・防災が融合する次世代型都市公園への進化。

等々力緑地は昭和30年代以降、段階的に整備が進められ、川崎市のスポーツ・レクリエーション拠点として発展してきました。しかし、陸上競技場やアリーナなど主要施設の老朽化が進み、防災機能の更新やバリアフリー対応、社会環境の変化への適応が求められるようになりました。


川崎市は2008年から検討委員会を設置し、パブリックコメントや周辺小中学校、利用団体へのヒアリングを重ねながら再編の方向性を整理。2022年には実施計画を改定し、PFI方式を導入しました。選定された民間グループは特別目的会社「川崎とどろきパーク株式会社」を設立し、整備から運営までを一体的に担っています。単なる施設更新にとどまらず、「日常的に賑わう空間」への転換が、本事業の大きな目的です。

等々力緑地の再編整備が目指す未来像は、「この緑地が人々の日常とつながり、人生の大切な節目となり、次の100年に続く、まちの誇りとなる場所」となることです。単なる公園の改修にとどまらず、都市と自然、そして人と人とを結び直し、世代を超えて愛され続ける空間へと進化することが構想されています。
その実現に向けて掲げられているのが、四つの将来像です。まず一つ目は、経験や世代を超えて誰もが楽しめる「スポーツの聖地」です。トップアスリートによる迫力ある競技観戦から、市民の日常的な運動や子どもたちのスポーツ体験まで、多様なレベルと関わり方を包み込む環境を整えることで、スポーツを通じた感動と交流を生み出します。

二つ目は、このまちの活力に触れる「ウェルネスパーク」です。健康づくりやリフレッシュの場としての機能を高め、散策や軽運動、自然とのふれあいを通じて、心身ともに健やかな時間を過ごせる空間を目指します。日常の延長線上にある“ちょっとした豊かさ”を提供することで、地域の活力を支える存在となります。

三つ目は、遊び心を育む「プレイングガーデン」です。子どもたちが自由な発想で遊び、大人も思わず童心に返るような仕掛けを取り入れ、多様な体験を通じて創造性や好奇心を育む場とします。自然の中でのびのびと過ごせる環境は、世代を問わず心に残る思い出を生み出していきます。
そして四つ目が、アタラシイが生まれる「クリエイティブフィールド」です。文化・芸術・交流の場としての機能を強化し、人々の出会いや挑戦が新たな価値を生み出す拠点となることを目指します。地域資源や多様な人材が交差することで、等々力緑地ならではの創造的な活動が広がっていきます。
このように、等々力緑地は「いつでも、いつまでも、気軽に足を運べて心地よく過ごせる緑地」として、市民一人ひとりの体験をつなぎ合わせる存在へと進化していきます。日常の中でふと立ち寄る場所でありながら、人生の節目や特別な記憶とも結びつく空間として、次の100年へと続くまちの誇りを育んでいくことが期待されています。

再編整備はハード整備だけでなく、ソフト面の充実も重視しています。既に、キッチンカーの誘致、キャッシュレス化、授乳室の設置、ホームページの統一、SNSによる情報発信強化など、来園者の利便性向上が図られています。

また、ナイトヨガやリレーマラソン大会、モルック大会、ソフトボールリーグのプレーオフ開催など、多様な参加型イベントを展開。スタジアムツアーやパブリックビューイング、音楽フェス、ペットイベント、食フェスなども開催され、スポーツ観戦以外の目的でも訪れたくなる公園へと変化しています。
今後もウェルビーイングの向上や健康意識の醸成、文化発信の場として、積極的なプログラム展開が計画されています。

再整備の象徴となるのが、球技専用スタジアム化です。現在約27,000人収容のスタジアムを約35,000人規模へと拡張し、ピッチと観客席の距離を縮めることで国内有数の臨場感を実現します。
コンセプトは「Emotional Stadium」。観客と競技者の一体感を創出し、感動・賑わい・誇りを生み出す場とします。公園と連続するデッキや屋上庭園、日常利用可能な施設を備え、“開かれたスタジアム”として整備されます。

また、新とどろきアリーナは約5,000人規模のメインアリーナを中心に、スポーツセンターやプールを合築。バレーボールやバスケットボールなどのトップスポーツからコンサートまで対応するフレキシブルな施設となります。

本事業の中核を担うのが新たに整備されるこの球技専用スタジアムとなります。観覧機能を備えた大規模施設として計画されており、敷地面積は約82,600㎡、建築面積は約31,000㎡、延べ面積は約70,000㎡に及びます。構造は鉄筋コンクリート造を基本とし、一部に鉄骨造および鉄骨鉄筋コンクリート造を採用します。

建物は地上6階建て、高さ約43mとされており、等々力エリアの新たなランドマークとなる規模です。充実した観覧環境と機能的な動線計画により、大規模大会やプロスポーツの開催にも対応できる中核的スポーツ拠点として整備されます。

次に、(新)とどろきアリーナ・スポーツセンターは、観覧場機能と日常利用を両立する複合型施設として計画されています。敷地面積は約20,000㎡、建築面積は約14,000㎡、延べ面積は約23,000㎡で、構造は鉄筋コンクリート造および鉄骨造です。地上3階・地下1階建て、高さ約27mの規模で整備されます。大会時には観覧機能を発揮しながら、平常時には市民のスポーツ練習や各種イベント利用にも対応する施設となり、地域に根差したスポーツ振興の拠点としての役割を担います。

さらに、(新)等々力陸上競技場も観覧機能を備えた施設として再整備されます。敷地面積は約46,000㎡、建築面積は約6,000㎡、延べ面積は約5,000㎡で、構造は鉄骨造です。建物は地上2階建て、高さ約15mと比較的コンパクトな規模ながら、競技観戦に対応した機能を有します。陸上競技を中心とする大会開催や日常的な競技利用に対応し、地域スポーツの基盤強化を図る施設として位置づけられています。

加えて、公園利用者や来場者の利便性向上を目的とした便益施設等も整備されます。対象敷地面積は約242,500㎡に及び、建築面積は約23,900㎡、延べ面積は約30,000㎡です。構造は鉄筋コンクリート造および鉄骨造で、地上1~2階建て、高さは約4.8mから15mまでの範囲で計画されています。管理棟や店舗、温浴施設などを含む多様な施設群が配置され、スポーツ観戦や公園利用と連動した滞在型のにぎわい空間を創出します。

これらの各施設は、単体での機能向上にとどまらず、緑地全体の再編と一体的に計画されている点が特徴です。スポーツ・レクリエーション・交流・商業機能を有機的に組み合わせることで、等々力緑地を広域的な集客拠点へと進化させるとともに、市民の日常利用と大規模イベント利用の双方を支える持続可能な都市型公園モデルの構築が目指されています。

公園中央には「みんなのはらっぱ」を整備し、誰もが自由に過ごせる開放的なランドマーク広場を創出します。桜並木や親水空間、インクルーシブ遊具を備え、世代や障がいの有無を超えて楽しめる場となります。
「アクティビティループ」は園内を回遊する主要動線として整備され、歩くたびに新たな魅力と出会える構成に。テニスコートは10面から12面へ増設され、ストリートスポーツパークも整備されます。
「こもれびの森」や「ふるさとの森」では、適切な樹林管理により採光・通風を確保し、自然体験や防災キャンプなどの活動拠点を形成。都市の中のオアシスとしての機能を高めます。

等々力緑地は広域避難場所としての役割も担っています。再編整備では、防災機能の抜本的強化が図られます。
釣池には可動堰を新設し、豪雨時には事前に水位を下げることで流出抑制を実施。約2,250㎥の雨水貯留槽を整備し、浸水対策を強化します。建物1階の嵩上げや機械室の上階設置など、ハード面の対策も実施されます。
さらに、園内約40台の防犯カメラ設置、照明整備、放送設備の充実、警察・消防との連携強化など、ソフトとハード両面から安全性を高めます。


現地標識では、本事業は2025年12月から本格的な整備工事に着手しており、市民ミュージアム解体工事を皮切りに、建築物整備、公園基盤整備を進め、2031年3月の完成を予定しています。完成した施設は段階的に供用開始され、順次、維持管理・運営フェーズへ移行します。

等々力緑地は、これまでの歴史を受け継ぎながら、スポーツ・文化・自然・防災が融合する新たな都市公園へと進化します。川崎のまちの誇りとして、次の100年へつながる「かわさきパークライフ」の拠点形成が、いま着実に進められています。
出典・引用元:川崎市 等々力緑地再編整備
最終更新日:2026年3月6日