東京都豊島区は、池袋駅東口エリアの再生に向けた新たな取り組みとして、「池袋駅東口A・C・D地区街並み再生方針(素案)」を公表しました。対象区域は約23ヘクタールに及び、老朽化建築物の更新や防災性の向上、文化芸術を核とした多機能な都市空間の形成を目指します。近年の都市間競争や人口動態の変化、国際的な観光需要への対応といった背景を踏まえ、駅周辺の再編を通じて、より魅力的で持続可能なまちづくりを推進する狙いです。今後、住民説明会などを通じて地域の意見を反映し、正式な方針案の策定を進めていく予定とされています。
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池袋駅東口A・C・D地区街並み再生方針(素案)の概要
1. 再生方針の目的と背景
池袋駅東口エリア(約23ha)の老朽化や防災課題に対応し、文化・商業・防災機能を融合させた持続可能な都市空間の形成を目指す再生方針が示された。
2. 対象区域の概要
上池袋、東池袋、西池袋、南池袋など7地区を対象とし、副都心・池袋の中心地として都市機能を再編・高度化していく。
3. 過去の取り組みとの連携
交通戦略や池袋駅コア・ゾーンガイドライン2020など過去のまちづくり計画と連動し、文化芸術・観光・商業機能の集積を進める。
4. 6つの整備目標の提示
都市拠点形成、歩行者ネットワーク強化、文化と商業の融合、防災性向上、歴史景観保全、エリアマネジメント強化など多角的な再生目標を設定。
5. 公共空間と交通環境の整備方針
グリーン大通りやアニメイト通りなど主要軸に沿って、滞在型空間や歩車分離型の交通整備を推進。利便性と安全性を両立させる都市設計を目指す。
6. 建築・土地利用に関するルール整備
建物の高さや壁面位置の制限、敷地統合による高度利用の誘導など、街並みの統一性と防災性を両立させるルールを導入予定。
7. 今後のスケジュールと展望
住民説明会を経て2025年夏頃に正式方針を策定予定。官民連携とエリアマネジメントによって、国際性と地域性を併せ持つ都市の再生を進める。

本方針の対象となるのは、池袋駅を中心に広がる上池袋、東池袋、西池袋、南池袋、池袋一丁目など、7地区・総面積23.0ヘクタールに及ぶ広大な都市エリアです。このエリアは、池袋副都心の中核を成す重要な地域でありながら、老朽化した建築物が多く、防災性や都市機能の面で多くの課題を抱えてきました。
東京の「しゃれた街並みづくり推進条例」に基づく今回の素案では、街並み再生地区としてA・C・D地区を位置づけ、土地の高度利用や多様な都市機能の共存を促進する新たなルールを設けようとしています。これにより、東口エリアの持つポテンシャルを最大限に活かしながら、都市の安全性・快適性・魅力を同時に高めることが期待されています。

池袋副都心はこれまで、商業・業務・文化の各機能が集積する副都心として発展を遂げてきました。豊島区では平成23年に「池袋副都心交通戦略」を策定し、まちの回遊性と魅力の向上を図ることを目指してきました。さらに平成27年には「特定都市再生緊急整備地域」に指定され、駅前広場や連絡通路などの基盤整備が本格化。令和2年には「池袋駅コア・ゾーンガイドライン2020」が策定され、文化・芸術の拠点としての街づくりが明確に打ち出されました。
令和7年3月に策定された「豊島区基本計画」では、池袋駅を核とした多機能都市の実現が掲げられています。文化芸術、観光、商業、業務、住宅、教育などが融合し、多様な人々を惹きつけるまちを目指す中で、今回の再生方針はその具現化の第一歩と位置付けられています。

今回の街並み再生方針では、6つの明確な整備目標が掲げられています。第一に、東池袋一丁目地区や中池袋公園(Hareza池袋)、南池袋公園といった既存施設を核としながら、沿道や交差点を含む歩行者ネットワークを強化し、連続性と魅力のある都市空間を形成することで、安全で快適、かつにぎわいのある都市構造への転換を図ります。
次に、これまで東西方向に偏っていた回遊動線を南北方向へと広げることにより、都市の活力を面的に展開することが目指されます。とくに、アニメイト通りなど既存のにぎわいエリアを起点に、公民連携による快適で歩きやすい都市空間の整備が進められます。

三つ目の目標としては、文化拠点の機能更新や再開発を促進し、既存施設との連携を図ることで、文化芸術や交流、業務機能が有機的に融合した都市空間の構築が挙げられています。中池袋公園や東池袋一丁目地区などを中心に、多様な都市機能の集積が図られます。
また、誰もが安心して過ごせる環境づくりと防災性の向上も重要な目標の一つです。老朽化した建築物への対応を進めるとともに、災害時における対応力を強化するため、共同荷さばき施設や外周部に設けられる駐車施設によって車両と歩行者の動線を分離し、安全な都市環境の実現が目指されます。
さらに、美久仁小路や栄町通りなど、歴史と趣のある通りの景観を保全しつつ、現代の都市機能と調和させながら地域らしさを活かしたリノベーションが推進されます。地域の個性を大切にした街並みの再生が進められることになります。
最後に、まちづくりを支える仕組みとして、地域の民間企業や住民との連携を深め、「池袋エリアプラットフォーム」のようなエリアマネジメント活動を支援することで、都市全体のブランド価値の向上と持続的な発展を図っていきます。

整備が求められるのは、単なる建物の更新にとどまりません。グリーン大通りやアニメイト通りといった重要な都市軸に沿って、ユニバーサルデザインに配慮した空地の確保や、歩行者が滞在しやすい空間の創出が盛り込まれています。
また、地区内への車両流入を抑える「フリンジ型駐車施設」や、共同荷さばきスペースの設置によって、物流の効率化と歩行者の安全確保を両立。都市の利便性と快適性をともに追求する再生方針が特徴です。

街並み再生を実効性のあるものにするため、土地の統合や建物の配置・高さの制限も盛り込まれています。敷地の統合を促し、敷地面積に応じた高度利用を可能にすることで、都市機能の更新を誘導。さらに建物の壁面位置や高さ制限を設け、統一感のある街並みの形成を目指します。例えば、主要路線に面した建物には壁面のセットバック(0.6m~0.3m)や、高さの上限(80m~90m)などのルールを適用し、周囲との調和や防災空間の確保を意識した都市設計を進めます。
今回の素案は今後、住民説明会を通じて地域住民や関係者からの意見を募集し、2025年夏頃を目処に正式な街並み再生方針として策定される予定です。民間開発との連携や行政による制度整備、エリアマネジメントの支援体制などを通じて、池袋東口エリアは次なる段階へと進化を遂げていくでしょう。
東京副都心の玄関口にふさわしい、国際性と地域性を併せ持つ新しい都市空間の創造に向けて、豊島区の挑戦が本格化しています。
最終更新日:2025年5月21日