安城市では、現庁舎が建設から長い年月を経て老朽化し、耐震性や機能性の面で数多くの課題を抱えています。庁舎が複数棟に分散しているため市民にとって利便性が低く、また大規模災害時の防災拠点として十分な役割を果たせない状況が続いています。
こうした問題を解決するため、市は令和5年に「安城市庁舎の在り方検討会」を設置し、現庁舎の改修や建替え、さらには民間建物の賃借といった複数の選択肢について検討を行いました。その結果、将来にわたって安全で持続可能な庁舎運営を実現し、市民サービスや防災機能を強化できる最も現実的な方策として、現位置での新庁舎建設が優位であるとの結論に至りました。
安城市新庁舎整備の概要
- 現庁舎の老朽化と課題
本庁舎や北庁舎、西庁舎など複数棟に分散しているため、市民の利便性が低く、建物自体も築後半世紀以上経過して老朽化が進行。耐震性能も現行基準を満たさず、災害時に庁舎として機能不全に陥る懸念がある。 - 防災拠点としての役割不足
南海トラフ地震など大規模地震に備える必要があるが、現庁舎は耐震改修しても十分な防災拠点性能を確保できない。市民からも「災害時に安全な庁舎」を望む声が強い。 - 検討された整備案
「大規模改修」「民間建物の賃借」「新庁舎建替え」の3案を比較検討。改修や賃借では費用対効果や防災性能に課題があり、最終的に建替えが最も現実的で持続可能な選択肢とされた。 - 現位置建設の優位性
JR安城駅から徒歩圏内で市民会館や安城公園とも近接する現庁舎の立地は、市民にとってアクセスが良く利便性が高い。土地取得や新規インフラ整備の必要がないため、コストや効率の面でも優れている。 - 市民参加と検討経緯
令和5年に「安城市庁舎の在り方検討会」を設置し、市民アンケートや専門家の意見を踏まえて議論。安全性・利便性・持続可能性を総合的に考慮し、現位置での建替えを優位と結論づけた。 - 財源確保と整備手法
令和3年度から庁舎整備基金を積み立てており、将来の財源を確保。発注方式については従来型に加え、設計と施工を一括する「デザインビルド方式」や官民連携手法も検討されている。 - 新庁舎の将来像
災害に強い防災拠点機能を持ち、バリアフリーやユニバーサルデザインを徹底。さらに省エネルギー設備や再生可能エネルギーを導入し、環境負荷を軽減する「未来型庁舎」として、市民に開かれた施設を目指す。

安城市の庁舎は、本庁舎を中心に北庁舎、西庁舎、さくら庁舎など、いくつもの建物に分かれて配置されています。これらの施設は建設からすでに半世紀以上が経過しているものも多く、壁や天井のひび割れ、雨漏り、老朽化した配管や空調設備の不具合などが頻繁に発生しています。庁舎を訪れる市民や利用者にとって快適性が損なわれているだけでなく、職員の業務効率にも悪影響を及ぼしています。
さらに深刻なのが耐震性能の問題です。現庁舎は現在の耐震基準に照らすと「Ⅰ類」相当を満たしておらず、大規模地震が発生した際に庁舎そのものが使用不能になるリスクがあります。庁舎機能が複数棟に分散しているため、市民が手続きを行う際には建物間を移動しなければならず、高齢者や障がいを持つ方にとっては大きな負担となっています。こうした課題は、市庁舎が市民生活における基本的なインフラであることを考えると看過できないものです。

市庁舎には行政機能の中枢であると同時に、大規模災害発生時には「災害対策本部」としての役割が強く求められます。特に安城市が位置する東海地域では、南海トラフ地震が今後30年以内に70~80%の確率で発生すると予測されており、防災拠点の強化は喫緊の課題となっています。
しかし現庁舎は、耐震改修を行った場合でも「Ⅱ類」相当であり、地震発生時に継続使用できる保証が十分ではありません。2016年の熊本地震では、耐震補強済みの庁舎であっても内部設備や壁が損壊し、災害対策本部としての機能が長期間失われた事例がありました。安城市においても同様の事態が起これば、市民の安全を守るべき拠点が機能不全に陥る恐れが現実味を帯びます。
市民アンケートの結果でも、「災害時にも安心して利用できる庁舎」や「防災上の安全性を重視した整備」を望む声が多数を占めており、災害対応能力を備えた庁舎の整備は市民からの強い要望でもあります。

安城市は新庁舎整備にあたり、複数の選択肢を幅広く比較検討しました。主な候補は「既存庁舎の耐震補強と大規模改修」「民間建物の賃借による機能移転」「新庁舎の建替え」の3案です。
大規模改修の場合、工事期間中に庁舎を使用することが困難となり、行政機能を一時的に移転する必要が生じます。これにより長期間にわたり市民サービスが分断され、費用面でも効率が悪いと判断されました。また、民間建物を借り上げて庁舎機能を移す案については、災害時に安定して使用できるかどうかの保証がなく、地域防災の要としての役割を十分に果たせないことが問題視されました。
最終的に、耐震性・防災性の確保、市民利便性の向上、そして長期的な維持管理の効率化という観点から、建替えが最も現実的であり持続可能な選択肢と結論づけられました。この結論は、検討会の議論だけでなく、市民アンケートや専門家の意見を踏まえた総合的な判断によるものです。

庁舎の建設地については、新しい場所への移転を含め複数の候補地が検討されました。しかし、現庁舎の立地はJR安城駅から徒歩10~15分とアクセス性が高く、市民にとって利用しやすい場所にあります。さらに市民会館や安城公園と隣接しており、文化・交流施設や憩いの空間と一体的に整備できる点が大きな強みです。
もし新庁舎を別の場所に移転する場合、土地取得や周辺インフラの整備に多額の追加コストがかかることが想定されます。その一方で現位置での建替えであれば、既存の公共施設やインフラを活用しながら効率的に整備を進められます。また、庁舎跡地の活用方法についても検討が可能であり、都市の再生や地域の活性化につながると考えられています。これらの点から、現位置での建替えは市民の利便性を確保しつつ、まちづくり全体にも寄与する優れた選択肢と評価されています。

安城市はすでに令和3年度から庁舎整備基金を積み立てており、将来の財源確保に向けて計画的に準備を進めています。今後はさらに市民参加を得ながら、新庁舎に導入するべき機能やサービス内容を精査し、複数棟に分散している機能をどのように集約するかを検討していきます。
また、発注方式についても従来の手法に加え、設計と施工を一括発注する「デザインビルド方式」や、官民連携による効率的な整備手法などが検討対象となる可能性があります。これにより、コスト削減や工期短縮が期待されます。
新庁舎は、災害に強い防災拠点としての性能を備えるだけでなく、バリアフリーやユニバーサルデザインを徹底し、誰もが安心して利用できる公共施設となることを目指しています。さらに、省エネルギー設備や再生可能エネルギーの活用など環境負荷の低減にも配慮し、「未来型庁舎」として市民に開かれた存在となることが期待されています。
最終更新日:2025年8月23日

