名古屋港管理組合は、2050年頃を見据えた新たな港湾の将来像を描く「名古屋港長期構想(中間案)」を公表しました。本構想は、名古屋港がこれからも日本経済を支える国際拠点港として持続的に発展していくための中長期ビジョンであり、気候変動への対応や物流のデジタル化、エネルギー転換など、時代の大きな変化を踏まえた方針が盛り込まれています。
「物流で日本をひっぱる価値創造港湾」を基本理念に掲げ、グローバルサプライチェーンの再編やGX・DXの加速、地域社会との共生を見据えた新しい港湾像を提示。脱炭素社会を支える次世代エネルギー拠点の形成、国際競争力のある物流基盤の整備、防災・環境・交流の一体的推進など、多様な施策群が示されています。名古屋港の新たな価値創造と未来志向の港づくりを進めるための指針として注目を集めています。
→名古屋港管理組合 名古屋港長期構想(中間案)に関する意見募集について
名古屋港長期構想(中間案)の概要
- 策定の背景と目的
国際貿易港としての名古屋港の現状評価
2050年に向けた持続可能な港湾ビジョンの提示 - 将来像の三本柱
国際競争力のある物流拠点の整備
安全・安心で環境共生型の港湾構造の構築 - GX・DXによるスマート港湾形成
脱炭素社会への対応と再生可能エネルギー活用
デジタル技術による物流効率化と生産性向上 - エリア別開発方針(物流・産業エリア)
大型船舶対応や自動化設備の導入
次世代エネルギー基地と産業集積の推進 - エリア別開発方針(交流・賑わいエリア)
観光・商業・交流施設の再編整備
市民と港をつなぐにぎわい空間の創出 - 自然環境保全と共生
藤前干潟など生態系保全区域の整備
環境教育や地域連携による持続可能な利用 - 持続可能な港湾経営と展望
官民連携による港湾運営モデルの構築
災害対応・BCP整備を含む長期的戦略

名古屋港は、貨物取扱量・輸出入額ともに日本最大級を誇る国際貿易港として、長年にわたり中部圏の産業を支えてきました。2007年に策定された前回の長期構想「名古屋港の針路」以降、自動車産業をはじめとする製造業の国際展開が進む一方で、港湾を取り巻く環境は急速に変化しています。近年では、カーボンニュートラル実現への動きや地政学リスクの高まり、AIやIoTによる物流の効率化など、これまでにない課題と機会が同時に訪れています。

こうした時代の要請を踏まえ、名古屋港管理組合は新たな長期構想の策定を決定しました。目的は、単に現状の延長線で将来を描くのではなく、「2050年にあるべき名古屋港の姿」を明確に描き、そこから逆算して必要な施策を導き出すことにあります。このため、中間案では“バックキャスティング”の発想を導入し、国際物流の変革期においても地域と共に成長するための具体的方向性を提示。産業振興・環境保全・地域共生のバランスをとりながら、持続可能な港湾経営を目指す姿勢が強調されています。

中間案では、名古屋港の将来像を「国際競争力のある物流拠点」「安全・安心な防災港湾」「環境と共生する地域港湾」の三本柱で描いています。まず、国際競争力強化に関しては、船舶の大型化や物流の自動化に対応した次世代コンテナターミナルの整備を進めるとともに、港湾間の連携強化によって物流ネットワークの最適化を図ります。AIによる需要予測やデジタルツイン技術の導入など、港湾運営のスマート化も推進される見込みです。
次に、防災・減災の観点からは、高潮・地震など自然災害への備えを重視。防潮堤の強化や岸壁の耐震化、電力・通信インフラの二重化など、災害時の港湾機能維持を支える「レジリエントな港湾構造」への転換を進めます。さらに、環境・地域共生の観点では、再生可能エネルギーの導入拡大や水素・アンモニア燃料の活用、港とまちの一体的な再生による交流・観光機能の向上を目指します。
加えて、GXとDXを基盤に「スマートグリーンポート」を形成することが構想の重要なテーマとなっています。GXによるエネルギー転換で環境負荷を低減し、DXによって物流効率と生産性を高めることで、国際的にも競争力のある港湾運営モデルを構築します。

名古屋港は広大な港湾区域を有しており、地区ごとに異なる機能と役割を持っています。中間案では、これらを大きく「物流・産業機能強化エリア」「環境・エネルギー創出エリア」「交流・賑わい創出エリア」の3つに分類し、それぞれに応じた開発方針を提示しています。
まず、飛島ふ頭・鍋田ふ頭・潮見地区などの西部エリアでは、コンテナ物流機能の高度化と背後地拡張を推進。自動化クレーンや無人搬送車の導入、AIによる荷役最適化などを進め、世界水準の物流拠点を目指します。また、次世代燃料の供給基地や脱炭素型産業の誘致など、新しいエネルギー産業の集積も視野に入れています。
一方、ガーデンふ頭や金城ふ頭を中心とする内港・交流エリアでは、地域との共生を重視。水族館やクルーズ船ターミナル、商業施設など既存の観光・交流資源を再編し、港とまちが連続的につながる空間づくりを推進します。港湾景観の整備や再生可能エネルギーを活用したスマート街区の形成も検討されており、市民に開かれた「にぎわいの港」を創出します。
さらに、藤前干潟をはじめとする自然環境区域では、生態系の保全と環境教育の拠点整備が計画されています。これにより、環境と産業が共存する名古屋港らしい空間構造を形成していく方針です。

名古屋港の最大の特徴は、膨大な物流量を誇る一方で、地域社会や産業界、行政機関など多様な主体が関わる複雑な運営構造にあります。中間案では、こうした多様なステークホルダーとの連携を一層強化し、官民協働による持続可能な港湾経営モデルを確立する方針です。具体的には、サプライチェーン全体を俯瞰したデータ共有基盤の構築や、再生可能エネルギーの共同利用スキーム、民間資本を活用したインフラ更新などが想定されています。
また、防災やBCP(事業継続計画)の観点でも、災害発生時の物流機能確保を最優先に位置づけています。港湾機能の迅速な復旧体制の整備に加え、エネルギー供給や通信ネットワークの維持を支える「自立型港湾」の構築も重要課題としています。
名古屋港管理組合は、今回の中間案をもとに市民や事業者、学識者などから幅広く意見を募集し、最終案の策定へと進む予定です。2050年を見据えたこの長期構想は、名古屋港が国際的な物流の中核拠点であるだけでなく、環境と人、産業が共に生きる「未来共創型港湾」への進化を目指す指針として期待されています。

ポートアイランドは名古屋港の浚渫土砂処分場として利用されてきましたが、現在は仮置き土砂が山積みとなっています。中部国際空港沖の新たな土砂処分場の計画により搬出が進み、利活用への期待が高まっています。広大な開発用地を活かし、港湾機能の高度化や地域経済の発展につながる多様な拠点整備が可能です。
現時点での構想では、西部地区の飛島ふ頭・鍋田ふ頭と連携し、AIやIoT、自働化技術を活用した高性能コンテナターミナルを整備することで、物流効率の向上と将来のコンテナ需要に対応するものとされています。また、北浜・南浜ふ頭や南5区の既存LNG基地と連携し、次世代エネルギーを扱う大規模拠点を形成し、GX対応や関連産業の集積も促進されます。

開発にあたっては、仮置土砂の撤去や埋立地の部分竣工、道路アクセスの整備など基礎施策を進めています。港湾内の航路や既存施設を考慮し、橋梁やトンネルのルート・規模を検討することで、船舶の安全で効率的なアクセスを確保するものとされています。将来的に想定外の土地需要が発生した場合も、開発状況を踏まえ柔軟に対応が可能です。
これらにより、ポートアイランドは西部地区の物流拠点、南部地区の次世代エネルギー拠点と一体化し、名古屋港の中核的発展拠点として機能することが期待されます。
最終更新日:2025年11月8日

