明治安田生命ビルは、東京都千代田区丸の内2丁目に建つ地上30階、地下4階、高さ146.80mの超高層ビルです。立地は、丸の内エリアの馬場先濠の東側、西側を日比谷通り、北側を丸の内 3rd Street、東側を丸の内仲通り、南側を馬場先通りに囲まれた場所に位置しています。
国の重要文化財である「明治生命館」を保存・活用しながら、隣接する既存ビル跡地を一体的に再開発したプロジェクトとなっています。東京都の「重要文化財特別型特定街区制度」を初めて適用した事例として、歴史的建造物の保存と超高層ビルの開発を高次元で両立している点が大きな特徴です。明治生命館の保存と街区全体の活性化を目的に計画され、基準容積率1,000%から1,500%への容積率緩和が認められました。2004年の明治安田生命保険の発足にあわせて竣工し、本社機能を集約した新たな拠点として建設されています。
施設構成は、地下4階~地下3階に駐車場、地下2階~地上3階に商業施設、3階にオフィスロビー、4階にホール「明治安田ホール 丸の内」、5階~30階にオフィス、6階に機械室となります。オフィスのオフィススペックは、基準階面積約860坪(約2,843㎡)、天井高2,900mmとなっています。低層部分は「明治生命館」と軒高や外装材を調和させ、一体感のある街並みを形成しています。また、明治生命館と高層棟の間にはガラス屋根を備えたアトリウムとパサージュを設け、歴史的建造物を間近に望める開放的な空間が創出されています。高層部はガラスカーテンウォールを採用し、歴史的建造物との対比を生かしながら現代的なデザインに仕上げられています。
建築主は明治安田生命保険相互会社、設計は株式会社三菱地所設計、施工は竹中・大成共同企業体です。着工は2001年8月、竣工は2004年8月となっています。
概要
| 名称 |
街区名:明治安田ヴィレッジ 丸の内 新築棟:明治安田生命ビル 保存棟:明治生命館 |
| 計画名 |
明治安田生命ビル街区再開発 |
| 所在地 |
東京都千代田区丸の内2丁目1番1 |
| 用途 |
事務所、ホール、貸会議室、店舗等 |
| 階数 |
明治安田生命ビル:地上30階、地下4階、塔屋2階 明治生命館:地上8階、地下2階、塔屋1階 |
| 高さ |
明治安田生命ビル:146.80m 明治生命館:36.00m |
| 構造 |
鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造 制震構造 |
| 基礎工法 |
ー |
| 敷地面積 |
11,346.78㎡ |
| 建築面積 |
9,735.73㎡ 明治安田生命ビル:5,870.73㎡ 明治生命館:3,856㎡ |
| 延床面積 |
180,489.75㎡ 明治安田生命ビル:148,727.73㎡ 明治生命館:31,762.00㎡ |
| 着工 |
2001年8月 |
| 竣工 |
2004年8月 |
| 建築主 |
明治安田生命保険相互会社 |
| 設計 |
明治安田生命ビル:株式会社三菱地所設計 明治生命館:株式会社竹中工務店、株式会社三菱地所設計 |
| 施工 |
明治安田生命ビル:竹中・大成共同企業体 明治生命館:株式会社竹中工務店 |
| 最寄駅 |
JR、東京メトロ「有楽町」駅、東京メトロ、都営地下鉄「日比谷」駅、JR、東京メトロ「東京」駅 |
| 備考 |
▼施設構成 地下4階~地下3階:駐車場 地下2階~地上3階:商業施設 3階:オフィスロビー 4階:ホール「明治安田ホール 丸の内」 6階:機械室 5階~30階:オフィス |
位置図
イメージパース
出典:明治安田生命保険相互会社
南西側から見た明治安田生命ビルの様子です。明治安田生命ビルは、1934年竣工の国の重要文化財「明治生命館」を保存しながら、その隣接地を一体的に再開発したプロジェクトです。旧千代田ビルヂングや明治生命新館、明治生命別館を建て替え、2004年に地上30階、地下4階、高さ146.80mの超高層オフィスビルが竣工しました。東京都が創設した「重要文化財特別型特定街区制度」の全国第1号案件となり、文化財保存を条件に容積率を1,000%から1,500%へ緩和。歴史的建造物の保存と都市機能の高度化を両立したハイブリッド建築として、日本の都市再生における代表的な事例となっています。
明治安田生命ビルの西側には、国の重要文化財となっている歴史的建造物「明治生命館」が建っています。
明治安田生命ビルのオフィスのオフィススペックは、基準階面積約860坪(約2,843㎡)、天井高2,900mmとなっています。四面を連続する大開口の窓に囲まれ、自然採光と皇居方面を望む眺望に優れた執務環境を実現しています。
エアフローサッシやダブルスキンサッシ、高性能ガラスによって断熱性能と省エネルギー性を高め、氷蓄熱システムや屋上緑化など環境配慮型設備も積極的に導入しています。また、高度な制震装置を採用し、一般的な超高層ビルを上回る耐震性能を確保するなど、安全性・快適性・環境性能を高次元で実現したオフィスビルとなっています。
街区はオフィスだけでなく、多彩な都市機能を備えた複合施設として整備されています。地下4階から地下3階には駐車場、地下2階から地上3階には商業施設を配置し、街のにぎわいを創出しています。3階にはオフィスロビー、4階には約300人を収容できる「明治安田ホール 丸の内」と貸会議室を設置。上層階にはテナントオフィスや明治安田生命本社機能が入居しています。2004年の完成に合わせて本社機能は新宿から丸の内へ移転し、現在では丸の内を代表するビジネス拠点として、多くの企業や来街者に利用されています。
街区は完成当初「丸の内 MY PLAZA」の愛称で親しまれ、「私の広場(MY PLAZA)」という思いが込められていました。2023年には街区全体が「明治安田ヴィレッジ 丸の内」へ改称され、より広域なエリアブランドとして新たなスタートを切っています。
歴史ある明治生命館と超高層ビルが融合した街区は、保存と開発を両立した先進的な都市再生として国内外から高く評価され、日本建築学会賞など数々の賞を受賞しました。皇居前という都心屈指の立地において、歴史・景観・環境・都市機能を高い水準で融合させた、丸の内を象徴するランドマークの一つとなっています。
北西側から見た明治安田生命ビルの様子です。
北西側から見た明治生命館の様子です。
西側から見た明治安田生命ビルの低層基壇部と明治生命館の様子です。軒の高さが100尺で揃えられています。
北西側から見た明治安田生命ビルの低層基壇部の様子です。
北東側から見た明治安田生命ビルの様子です。
丸の内仲通り側の明治安田生命ビルの低層部分の様子です。
明治安田生命ビルのエントランスです。丸の内仲通り側に位置しています。
アトリウムへ至る通路です。二重橋前〈丸の内〉駅の3番出入口があります。
街区中央には丸の内仲通りと日比谷通りを結ぶガラス屋根付きのアトリウムと、南北方向へ抜けるパサージュが整備されています。再開発前には存在しなかった開放的な公共空間を創出し、歩行者が自由に回遊できる都市動線を形成しました。
アトリウム内部には明治生命館の歴史的ファサードがそのまま取り込まれ、新築ビルと文化財を間近に見比べられる特徴的な景観を実現しています。さらに、仲通りから皇居方面まで視線が抜ける開放感も生まれ、歴史と現代建築が共存する象徴的なパブリックスペースとして、多くの人々に親しまれています。
アトリウムのガラスの大屋根です。
アトリウムの内観です。
商業施設テナント一覧です。
南東側から見た明治安田生命ビルの様子です。
明治安田生命ビルは、歴史的景観との調和を重視したデザインが特徴です。低層部は明治生命館の軒高や列柱のリズムに合わせ、イタリア産花崗岩を用いることで街区全体に統一感を持たせています。
一方、高層部は全面ガラスカーテンウォールを採用し、現代的で洗練された表情を演出しています。このように低層部では歴史を継承し、高層部では未来性を表現することで、新旧建築が自然に融合する街並みを実現しました。また、解体された旧建物のブロンズ装飾をロビーへ移設するなど、街区の記憶を受け継ぐ工夫も随所に施されています。
南側から見上げた明治安田生命ビルの様子です。
明治生命館は1934年に竣工したネオ・ルネサンス様式の歴史的建造物で、昭和の建築として初めて国の重要文化財に指定されました。再開発では単なる外観保存ではなく、建物を現役オフィスとして使い続ける「動態保存」が採用されています。
隣接して建てられていた旧明治生命新館などを撤去したことで、長年隠れていた東側立面を復元し、四方すべての外観を鑑賞できるようになりました。また、設備更新や耐久性向上を図りながら歴史的意匠を可能な限り維持し、オフィスとしての快適性と文化財としての価値を両立しています。歴史的建造物保存の新たなモデルケースとして高く評価されています。
明治生命館は1934年(昭和9年)3月に竣工した、鉄骨鉄筋コンクリート造、地上8階、地下2階、軒高約31mの大規模な歴史的建造物です。その意匠は古代ギリシア・ローマを源流とする古典主義様式に徹底して従っており、お堀端(日比谷通り)と馬場先通りが交わる角地に堂々と建ち続けています。
特に目を引くのは、5階分の高さを貫く巨大なコリント式列柱の並びであり、柱の表面には視覚矯正のためのエンタシスと呼ばれる絶妙なふくらみが持たされています。アカンサスの葉などをモチーフにした柱頭、3段の帯からなるエンタプレチュア、そして大きなコーニスなどが調和し、昭和初期におけるオフィスビルの頂点を示す端正な外観を形作っています。
コリント式列柱は5層分を貫く、10本の列柱となっています。
コリント式列柱の柱頭に設けられたアカンサスの葉飾りの様子です。
軒部分に設けられた葉飾りの様子です。
7階の大コーニスに設けられているライオン像の様子です。
ブロンズ製の装飾もあるアーチ窓が特徴的です。
竣工からわずか数年後、明治生命館は日中戦争や太平洋戦争という激動の時代に巻き込まれていきました。戦時中には国家総動員法に基づく金属類回収令により、美術的価値の高いブロンズ製のドアや手摺、照明器具、さらにはエレベーターなどの設備機器までが供出されるという大きな痛手を被りました。
終戦直後の1945年(昭和20年)9月には連合国軍(GHQ)に接収され、アメリカ極東軍司令部として使用されることになります。館内の2階会議室は「対日理事会(ACJ)」の会場となり、マッカーサー元帥らの出席のもとで計164回もの会議が開かれるなど、戦後史の重要な舞台となりました。1956年に接収が解除されてからは先人が遺した姿への復旧工事が進められ、1997年(平成9年)にはその高い建築的・歴史的価値から、昭和の建造物として初めて国の重要文化財に指定されました。
明治生命館と馬場先濠の様子です。
明治生命館のエントランスです。
明治生命館の内観です。
建物内部の大きな見どころである店頭ロビー(店頭営業室)は、美しい大理石の柱が林立する荘厳かつ開放的な大空間です。外観とはまた違った趣を醸し出すため、イタリア産のボティチーノ・クラシコをはじめとする各種の大理石が贅沢にあしらわれ、中央部にはガラス屋根のトップライトから柔らかな光が降り注ぎます。
さらに、室内の家具やカーテン、絨毯といったインテリア全般は梶田恵が岡田との緊密な連携のもとでデザインしました。各室の性格や用途に合わせてスパニッシュ式、イギリス式、ルネサンス式などの多彩な西洋古典様式が巧みに使い分けられており、細まやかな線象嵌や木彫などが施された工芸的な調度品が空間の格調を高めています。
明治生命館に設置されている三菱二号館の模型です。現在の明治生命館が建てられる以前の敷地には、1895年(明治28年)にジョサイア・コンドルとその弟子・曾禰達蔵の設計で完成した赤レンガ造りの「三菱二号館」が立っていました。その後、関東大震災にも耐えた三菱二号館の解体と新社屋建設の決断が下され、昭和3年(1928年)に指名コンペ方式によって岡田信一郎の設計案が採用されました。
岡田は設計だけでなく重要な部分の製作まで監修していましたが、竣工を前に急逝したため、弟の岡田捷五郎らがその意志を引き継ぎ、昭和9年にようやく竣工を迎えました。外装材には岡山県北木島産の花崗岩が総量約10万切(立方尺)も用いられ、2年間にわたり1日平均200人が採掘・運搬にあたったという壮大な規模の工事でした。
明治生命館の模型です。
明治生命館の1階床の大理石には、アンモナイトの化石があります。
柱と吊り照明の連続が印象的な明治生命館の内観の様子です。
明治生命館の内外装のあらゆる部分には、「繰型(モールディング)」と呼ばれるさまざまな断面形状(凹凸)を持つ装飾的な縁取りが施されています。この繰型の表面にはさらに「彫琢(エンリッチメント)」という細かい連続彫刻を加えることで、より華麗で奥行きのある意匠へと仕立てられています。
古典主義建築の厳格な決まりに従い、正シーマ線型や反シーマ線型、饅頭線型(オヴォロ)、玉縁線型(アストラガル)といった型ごとに、それぞれエッグアンドダート(卵と鏃)やリーフアンドダート(葉と鏃)、ビードアンドリール(連珠紋)などの決まった彫刻が正確に彫り込まれています。これらの技法は石材、木材、金属、石膏など素材を問わずすべてに駆使されており、豊かな表情を生み出しています。
2階の会議室の様子です。
中央の吹き抜けの様子です。
2階の食堂の様子です。
レトロなランプが印象的です。
明治生命館は、昭和の建造物としては初めて国の重要文化財に指定されています。
明治安田生命ビル街区再開発は、2010年日本建築学会賞も受賞しています。
明治安田生命ビルの夜景です。
明治生命館の夜景です。
明治安田生命ビルと丸の内二重橋ビルの様子です。
明治安田生命ビルと丸の内の超高層ビル群の様子です。
明治安田生命ビルと丸の内パークビルディングを見上げた様子です。
明治安田生命ビルと明治生命館の全景です。
最終更新日:2026年7月24日