都立日比谷公園は、日本における近代的洋風公園の先駆けとして明治36年(1903年)に開園し、東京都心の貴重な緑地として長きにわたり都民に親しまれてきました。皇居周辺や都市のまちと一体となったこの公園は、憩いの場であるだけでなく、文化や歴史を感じる空間としても重要な役割を担っています。
東京都は、令和3年(2021年)7月に「都立日比谷公園再生整備計画」を策定し、開園130周年となる令和15年(2033年)の完了に向けて、段階的な再生整備を進めています。計画では、年齢、性別、国籍、障害の有無に関わらず、誰もが利用しやすく楽しめるインクルーシブな公園の実現を目指しており、令和5(2023年)には「バリアフリー日比谷公園プロジェクト」として具体的な事業計画を取りまとめています。また、新設される4代目の大音楽堂も令和9年(2027年)春に着工、令和12年(2030年)春の竣工予定とされており、日比谷公園内の施設が段階的に整備されていきます。
都立日比谷公園再生整備の概要
1. 歴史的価値
明治36年開園の近代洋風公園
都心における緑と文化の継承
2. 都市との連携
皇居周辺や霞が関との接続
都市機能と緑のネットワーク
3. 公園の構造
S字型園路と多様な広場空間
池・花壇・音楽堂の景観資源
4. バリアフリー整備
多様な年齢・障害に対応
誰もが利用できる安全空間
5. 景観・植栽計画
四季折々の樹木と花壇
歴史性を活かした景観創出
6. 環境・防災機能
ヒートアイランド対策と雨水循環
都市の防災・減災機能の強化
7. 多様な利用と運営
文化・芸術・スポーツの活動場
地域・民間との協働運営

日比谷公園は、都心の中心に位置し、北側に皇居や周辺緑地、東側に文化・交流・迎賓・業務機能を有する日比谷・内幸町、南側に業務・商業・居住機能が集積する新橋・虎ノ門、西側に政治・行政の中心である霞が関と、多様なまちに囲まれています。
公園の立地は国際ビジネス交流ゾーンにも属し、国際的に高水準な緑豊かな都市環境の整備が求められています。また、近年は隣接する「東京ミッドタウン日比谷」や内幸町地区の都市再生プロジェクトにより、周辺の賑わいや緑地との連続性が強化されつつあります。社会的背景として、少子高齢化、人口減少、都市化の進展、新型コロナウイルスの影響による生活様式の変化など、多様な社会環境が計画に影響を与えています。

明治36年の開園以来、日比谷公園は都市計画中央公園として都心の緑の骨格を形成し、我が国初の近代的洋風公園として「洋花・洋食・洋楽」の文化を発信してきました。開園当初から残るS字型園路、心字池、第一花壇、雲形池、大草地広場や大音楽堂などの施設は、文化・歴史的資源として現在も活用されています。公園は国家的行事や催事の場としても賑わいを創出し、都市の中で人々が交流するための重要な場となっています。


再生整備計画では、日比谷公園がこれまで積み重ねてきた歴史や文化の価値を次世代に継承しつつ、公園の持つ潜在力を最大限に引き出すことを目指しています。「のこす・かえる・つくる」の3つの基本方針のもと、文化・歴史の再発見、多様な利用者が楽しめるアクティビティの提供、都心の緑としての快適な空間創出が進められます。また、オンラインでは体験できないリアルの場として、人と人、人とまちがつながる空間を創出します。


日比谷公園の空間は、江戸城の濠を取り込んだ心字池、第一花壇、雲形池、公会堂前から小音楽堂までの広場空間、大音楽堂周辺の空間など、個性ある区域に分かれています。これらをS字型園路が結びつけ、回遊性と視認性を高めています。再生整備では、歴史的施設を保全しつつ、ユニバーサルデザインを取り入れ、多様な来園者が安全・快適に利用できる空間を整備します。また、和と洋の文化の融合や、新たな広場空間の創出により、公園全体の魅力を高めます。


公園の景観計画では、主要園路や広場からの眺望、皇居や周辺のまちへの視線を意識し、ビスタ景観や視点場を活かして空間の広がりや変化を楽しめるよう設計されています。公会堂から小音楽堂への視線、大噴水広場から祝田門までの見通し、雲形池の噴水景観など、歴史性と自然景観を融合させた魅力的な景観づくりが進められています。

四季折々の植栽を活かし、樹木や芝生の密度、樹冠の疎密を調整することで、快適な空間と美しい景観を維持します。ICTによる樹木管理や樹木診断を通じて、歴史性の高い樹木を保全・更新し、新緑、紅葉、花の開花など四季を通じて豊かな緑景観を提供します。皇居との緑のネットワークを意識し、被圧を避けた樹木管理や雨庭などの新たな植栽空間整備も行われます。


日比谷公園は都市のグリーンインフラとして、ヒートアイランド現象の緩和、雨水の循環、多様な生物の生息環境の提供、防災機能の強化などを通じて都市環境の向上に寄与します。雨水浸透や緑陰の提供により気温上昇を抑制し、HIROBAs(仮称)では雨庭の整備を通じて環境教育や地域への環境情報発信も進められます。災害時の避難・滞在機能も保持しつつ、緑と水の機能を活かした防災・減災対策が行われます。

公園内では、運動やリラクゼーション、文化・芸術の体験など多様なアクティビティを提供します。芝生広場や運動広場、球技広場などが整備され、子どもから高齢者まで幅広い世代が楽しめる場となります。また、公園はテレワークやカフェ利用など新しい働き方の場としても活用され、都市生活者にとってのWell-being空間を目指します。

再生整備計画では、都民、NPO、民間企業、周辺まちとの連携を強化し、公園の維持管理や魅力向上を図ります。DX(デジタル技術)の活用による効率的管理、利用ルールの策定、地域との協働によるイベントやアクティビティの運営も計画されています。多様な主体の参画により、公園とまちの一体的運営が推進されます。


日比谷公園内の象徴的施設である「大音楽堂(日比谷野外音楽堂)」と「日比谷公会堂」は、長年にわたりコンサートや講演会、演劇などの文化活動の拠点として利用されてきました。両施設は老朽化が進んでいることから、歴史的価値を尊重しつつ耐震補強や建物修復を行い、外観や意匠の保存に配慮した整備が計画されています。

また、観客席や舞台設備、音響・照明などの機能更新により、多様なイベントに対応可能な施設とします。バリアフリー化も進め、車椅子アクセスや段差解消、音声・点字案内の整備で高齢者や障害者の利用環境を向上させます。さらに、定期的な公演や教育・体験プログラムの実施、デジタル技術を活用した情報発信により、日比谷公園を文化・芸術発信拠点として強化します。周辺の園路や広場、植栽との景観調和も図り、来園者全体に快適で魅力的な環境を提供する計画です。

2033年の開園130周年を迎える日比谷公園は、歴史・文化・自然の価値を継承しつつ、多世代が楽しめる上質な公園として再生されます。皇居外苑との緑のネットワークや都市との回遊性を強化し、歴史的景観や多様なアクティビティが融合した、新しい東京のシンボル的公園としての役割を果たすことを目指しています。
過去の記事→開園130周年を迎える2033年までに「(仮称)HIROBAs」や「(仮称)パークプラザ」が新たに整備される日比谷公園の再整備計画!“日比谷公園再生整備計画”2021年4月現地の様子
最終更新日:2025年12月2日

