横須賀市は、浦賀駅前周辺地区の再生とにぎわい創出を目指す「浦賀駅前周辺地区活性化事業」において、インデックス株式会社を代表とする「Team Perry’s」を優先交渉権者に選定しました。浦賀はペリー艦隊の来航地として日本の開国の象徴であり、近代以降は造船業で栄えた「海の町」として知られています。明治時代から続く浦賀ドックの遺構や港湾景観を活かしながら、地域の魅力を再生する取り組みが本格的に動き出します。
事業地は、住友重機械工業が所有する約12.2ヘクタールの民有地と、同社が令和3年に横須賀市へ寄附した約2.8ヘクタールの市有地を合わせた約15ヘクタール。ホテルや住宅、商業施設、公共空間などを一体的に整備し、総事業費は1,000億円を超える見通しです。2025年(令和7年)12月ごろに住友重機械工業・Team Perry’s・横須賀市の三者で協定を締結し、法的手続きや土地利用調整を経て2027年から基盤整備に着手。2029年以降の段階的供用開始を目指します。
→横須賀市 浦賀駅前周辺地区活性化事業におけるパートナー事業者の公募について
浦賀駅前周辺地区活性化事業の概要
1.事業の概要
浦賀駅前周辺地区における再生とにぎわい創出を目的とした都市拠点整備事業。
総面積約15ヘクタール、総事業費1,000億円超を見込む大規模開発。
2.優先交渉権者の決定
インデックス株式会社を代表とする「Team Perry’s」を優先交渉権者に選定。
地域再生と観光振興を担う多企業連携体による提案の採用。
3.浦賀の歴史的背景
ペリー来航の地として知られる「開国のまち」浦賀の再生。
造船業で栄えた港湾都市の産業遺産を活かしたまちづくり。
4.開発理念と基本方針
「第二の開国」を掲げる新たな都市拠点形成の推進。
海とまち、歴史と未来を結ぶ複合的な交流空間の創出。
5.施設構成と空間計画
ホテル、住宅、商業施設、文化施設、親水空間などの整備。
駅前から海辺までの一体的な回遊性と景観性の向上。
6.地域貢献とにぎわい創出
観光、文化、スポーツ、福祉など多分野にわたる地域活性化。
イベント企画や文化発信による継続的な交流拠点の形成。
7.今後のスケジュールと展望
2025年12月の三者協定締結を経て、設計・施工段階へ移行。
2029年以降の段階的供用開始を目指す長期的再生プロジェクト。

浦賀は幕末の1853年、ペリー艦隊が来航したことで日本の近代化の扉を開いた「開国の地」として知られています。開港後は造船の拠点として発展し、明治32年(1899年)に建造された「レンガドック」は、日本に現存する唯一のレンガ造りドライドックとして高い文化的価値を有します。平成15年の閉鎖までに1,000隻以上の船舶を建造・修理し、国内造船技術の発展を支えてきました。

こうした歴史資産を未来へ継承するため、令和3年3月に住友重機械工業が浦賀ドック周辺地を横須賀市へ寄附。市は暫定開放整備を進めつつ、海洋都市構想の中核拠点としての活用検討を開始しました。今回の活性化事業はその延長線上にあり、「海・まち・歴史」が共生する新たな地域モデルを構築することを目指しています。


本事業の公募は令和6年11月に始まり、翌令和7年10月の優先交渉権者決定まで、約1年間にわたり丁寧に進められました。浦賀駅前地区活性化事業選考委員会が設置され、計6回の審査を実施。公募には3グループが参加し、参加資格を満たした2グループ(Team Perry’s、フジタグループ)が審査対象となりました。
審査は書類・提案書による1次評価、さらにプレゼンテーションを含む2次評価の二段階で実施。事業実現性、地域貢献性、デザイン性、経済効果、将来の持続運営能力など、多角的な評価項目に基づき点数化が行われました。その結果、Team Perry’sが74.28点、フジタグループが71.15点を獲得し、僅差でTeam Perry’sが優先交渉権者に決定。選考結果は令和7年10月14日に正式に公表されました。

代表企業はインデックス株式会社で、隈研吾建築都市設計事務所、前田建設工業、大和リース、木下グループ、丹青社など、国内外17社が参加する大規模な共同体制を構築しています。海外からはスペインのOcean Capital Partners, S.L.が参画し、国際的な港湾都市開発の知見を活かしてプロジェクトを推進します。


設計・監理は隈研吾建築都市設計事務所と梓設計、日本工営都市空間が担当し、建築と景観の融合を図ります。また、丹青社が市有地活用の設計・監理、アクティオが維持管理業務を担うほか、文化・イベント分野ではW TOKYOやHOT STUFF PROMOTIONなどエンタメ企業も加わり、地域文化の再興とにぎわい創出をリードします。地域再生・観光・文化を横断的に支える、オールラウンド型の開発チームです。


本事業の基本理念は、「新しい都市拠点の形成による“第二の開国”の実現」。ペリー来航の象徴である浦賀を、今度は未来への開国拠点として再構築することを目指します。コンセプトには「海とまちの共生」「歴史と未来の融合」「暮らす・訪れる・働くの一体化」の3つの柱が掲げられています。
事業区域は「駅前工場跡エリア」「みかん山周辺エリア」「レンガドック周辺」の3ゾーンで構成。駅前エリアでは都市機能と観光機能を融合させ、みかん山では自然と健康をテーマにした居住・スポーツ拠点を形成。ドック周辺では、歴史的景観を守りながら観光・文化の発信拠点を整備します。各エリアをペデストリアンデッキやドックブリッジで有機的に結び、海とまちを一体化する計画です。


「駅前工場跡エリア」には、地上16階建ての高層ホテル(約80室)と高層マンション(計150戸)が建設され、定住人口は約500人を想定。さらにヴィラ(コンドミニアム)、商業施設、ペデストリアンデッキ、公共広場「徳田屋パーク」などを設け、住む・訪れる・集うが融合した都市空間を創出します。駅前にはロータリー型の交通広場も整備され、雨や日差しを避けて移動できる快適な歩行者空間を実現します。
「みかん山周辺エリア」では、スケートボードやボルダリングなどを楽しめるアーバンスポーツ施設と、高齢者の安心な暮らしを支える有料老人ホームを整備。世代を超えて活躍できるスポーツ・福祉複合ゾーンが誕生します。
「レンガドック周辺エリア」では、浦賀の象徴である歴史資産を活用し、海とまち共生センターを整備。センター内には浦賀ミュージアム、カフェ、行政センターが入り、観光・学び・行政サービスが融合した拠点となります。さらにイベント広場、親水空間、ドックブリッジを配置し、海辺での散策や催事を楽しめる空間づくりが進められます。

次点に選定されたのは、株式会社フジタを代表とする「フジタグループ」。フージャースコーポレーション、ASK GROUP HOLDINGS、SYLジャパン、アール・アイ・エー、東京ビジネスサービスの6社で構成され、設計から運営管理まで一貫した体制を提案しました。
フジタグループの提案も高く評価され、得点差はわずか3点程度でした。都市開発の専門性とともに、地元資源を生かした観光・文化の融合案が盛り込まれており、審査委員会からは「今後の地域協働の参考となる優れた提案」との評価が寄せられています。市は、今後の協議や代替施策の検討において、同グループの知見も活用していく考えです。

今後のスケジュールとしては、令和7年12月頃に住友重機械工業、Team Perry’s、横須賀市の三者間で協定を締結。土地売買契約や設計準備、各種調整が進められます。令和8~9年にかけて、土地調査や港湾計画・都市計画の変更、関係者協議が行われ、令和9~10年には実施設計・基盤整備・建築工事に着手する予定です。

施設は段階的に供用開始され、令和11年(2029年)以降に開業を予定。ホテルや商業施設の開業と同時に、浦賀ミュージアムや親水広場などがオープンすることで、観光・文化・居住が融合する新しい都市生活のスタイルが浦賀から発信されます。
「開国の地・浦賀」が、今度は“海と未来をつなぐ開放のまち”として生まれ変わろうとしています。歴史と文化を礎に、次世代の港湾都市モデルを描く壮大な挑戦が、いよいよ現実のものとなります。
最終更新日:2025年10月25日

