旧上瀬谷通信施設地区は、横浜市瀬谷区および旭区にまたがる、約242ヘクタールという首都圏でも極めて貴重な大規模土地です。東京ドーム約52個分に相当する広さを持ち、横浜市内では数少ない一体的な土地利用転換が可能なエリアとして注目されています。
戦後長年にわたり米軍通信施設として利用されてきたため、一般市民が立ち入ることはほとんどなく、市街地の中にありながら「空白地帯」として存在してきました。2015年6月30日の全面返還を契機に、ようやく本格的なまちづくりの検討が始まりました。
返還後は、地権者、横浜市、市民、民間事業者が連携しながら、2027年国際園芸博覧会の開催を核とした段階的な土地利用転換が進められています。本地区では、「農業振興」「観光・賑わい」「物流」「防災・公園」という4つの機能を柱に、自然と都市機能が共存する新たな郊外型都市モデルの創出が目指されています。
→横浜市 旧上瀬谷通信施設地区
→横浜市 GREEN×EXPO 2027
→国土交通省 2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)
→国土交通省 GREEN×EXPO 2027 日本政府出展起工式を開催しました ~開幕500日前を控える令和7年11月2日(日)に開催~
→GREEN×EXPO2027 公式サイト
→三菱地所株式会社 関東圏初・高速道路IC直結「次世代基幹物流施設」開発計画始動
旧上瀬谷通信施設地区の概要
1.首都圏有数の大規模返還地
横浜市瀬谷区・旭区にまたがる約242ヘクタールの広大な土地。
市街地近接で一体的な再編が可能な希少な大規模返還地。
2.米軍通信施設からの歴史的転換
戦後約70年にわたり米軍通信施設として利用されてきた土地。
2015年の全面返還を契機とする本格的な土地利用転換。
3.自然環境と都市機能が共存する立地特性
市民の森や農地に囲まれた緑豊かな都市近郊エリア。
環境資源を活かした郊外型まちづくりの適地。
4.国・市・民有地が混在する土地所有構成
国有地・民有地・市有地がほぼ均等に分布する所有形態。
地権者主体の合意形成を前提とした再整備条件。
5.土地区画整理事業による基盤整備
横浜市施行による大規模土地区画整理事業の実施。
道路・公園・調整池など都市基盤の一体的整備。
6.4ゾーン構成による計画的土地利用
農業振興、観光・賑わい、物流、防災・公園の4機能配置。
役割分担と相互連携を重視した土地利用構想。
7.国際園芸博覧会を起点とする未来拠点形成
2027年国際園芸博覧会開催を契機とした段階的開発。
博覧会レガシーを継承する横浜西部の新たな拠点形成。

旧上瀬谷通信施設地区は、横浜市西部の瀬谷区北町・瀬谷町・中屋敷三丁目、旭区上川井町に位置しています。相模鉄道本線瀬谷駅の北側約2kmに広がり、市街地と農地、森林が連続するエリアにあります。

交通面では、東名高速道路横浜町田IC、保土ケ谷バイパス上川井ICに近接しており、東京都心や神奈川県央部への広域アクセス性が高い点が大きな強みです。将来的には物流拠点や観光拠点としての機能を支える重要な基盤となります。
また、瀬谷市民の森、上川井市民の森、矢指市民の森などが周囲に点在し、生態系ネットワークが形成されています。このような都市近郊でありながら豊かな自然環境が残る立地条件は、本地区のまちづくりにおいて他に代えがたい価値を持っています。

旧上瀬谷通信施設地区は、もともと農地や山林として地域住民の生活と密接に結びついてきた土地でした。しかし戦前に旧日本海軍が取得し、戦後は米軍に接収されることで、その性格は大きく変化しました。
1951年以降は米軍通信施設として再接収され、高度なセキュリティが求められる施設であったため、立ち入り制限や土地利用制約が厳しく課されてきました。農業は継続されていたものの、建物の建築や土地改良には多くの制限があり、基盤整備は十分に進められませんでした。2015年の全面返還は、地域にとって歴史的な転換点であり、長年固定化されてきた土地利用構造を見直し、将来世代に向けた新たな価値を創出する大きな契機となりました。


返還時の旧上瀬谷通信施設地区の面積は約242万㎡に及び、国有地が約45.2%、民有地が約45.4%、市有地が約9.4%という構成となっています。特定の主体が一括して所有していない点は、本地区の大きな特徴です。
特に民有地の割合が高く、地権者は約250名にのぼります。農家を中心とした個人地権者が多く、土地に対する思いや将来像も多様です。このため、画一的な再開発ではなく、丁寧な合意形成を重ねながら計画を進める必要があります。こうした複雑な土地所有構成は事業推進上の課題である一方、地域主体のまちづくりを実現する可能性を秘めた重要な条件とも言えます。

旧上瀬谷通信施設地区では、横浜市施行による大規模な土地区画整理事業が進められています。約248.5ヘクタールという広範囲を対象に、道路、公園、調整池などの都市基盤を一体的に整備する計画です。


区画整理では、将来の土地利用ゾーンを見据えた街区形成が重視されており、環状4号線(通称:海軍道路)を軸として、物流施設や観光施設、大規模公園などの立地を想定した骨格道路が計画されています。また、地権者の生活再建に配慮し、仮換地指定や段階的な工事実施など、柔軟な手法が採用されています。都市機能の導入と地域の持続性を両立させる点が、この事業の大きな特徴です。


本地区では、「農業振興地区」「観光・賑わい地区」「物流地区」「防災・公園地区」の4つの土地利用ゾーンが設定されています。それぞれのゾーンが明確な役割を担い、相互に補完し合う構成となっています。

農業振興地区では、ICTやスマート農業技術を活用した次世代型農業の導入が検討され、都市農業の新たなモデル形成が目指されています。観光・賑わい地区では、テーマパークや交流施設を中心に、多世代が集う拠点が形成されます。物流地区は高速道路直結型の基幹物流拠点として、広域経済を支える役割を担います。防災・公園地区は、緑地と防災機能を兼ね備えた地区として整備されます。


2027年に開催される国際園芸博覧会は、旧上瀬谷通信施設地区のまちづくりを世界に発信する最大の機会です。「幸せを創る明日の風景」をテーマに、約100ヘクタールの会場で約1500万人の来場者が見込まれています。


本博覧会は、国際園芸家協会(AIPH)および博覧会国際事務局(BIE)の認定を受けた最高位クラスの国際博覧会であり、日本国内だけでなく海外からも注目を集めています。展示を通じて、花と緑、農、環境技術、脱炭素社会の実現に向けた先進的な取り組みを発信し、その成果を博覧会後のまちづくりへと確実に継承していくことが重視されています。


博覧会終了後は、その会場跡地を活用した大規模公園「KAMISEYA PARK(仮称)」の整備が計画されています。広大で平坦な地形を活かし、横浜市内でも類を見ないスケールの公園空間が誕生する見込みです。

園内では、自然体験、スポーツ、イベント、学習といった多様な活動が可能となり、日常的な市民利用と観光利用の両立が図られます。また、災害時には広域避難場所や物資集積拠点として機能することが想定されており、防災都市・横浜を支える重要なインフラとしての役割も担います。


物流地区では、東名高速道路に直結する新たなインターチェンジの整備が検討されており、関東圏初の高速道路直結型次世代物流拠点の形成が目指されています。この物流拠点では、自動運転トラックや隊列走行、AIによる倉庫管理など、次世代物流技術の導入が想定されています。環境負荷の低減や人手不足への対応といった社会課題解決にも寄与します。さらに、災害時には首都圏への緊急物資輸送拠点として機能し、平時と非常時の両面で高い価値を持つ施設となる計画です。


2017年に設立された「旧上瀬谷通信施設まちづくり協議会」は、地権者主体でまちづくりを進めるための中核的組織です。行政との意見交換や情報共有を通じて、計画の具体化が進められてきました。2023年に策定された「土地利用基本計画デザインノート」では、建築物の配置、景観形成、緑の考え方などが整理され、地区全体で共有される指針となっています。これにより、今後参画する民間事業者に対しても、質の高い開発を誘導する環境が整えられています。


旧上瀬谷通信施設地区の再整備は、単なる跡地利用にとどまらず、郊外部における都市のあり方そのものを問い直す試みです。自然環境と都市機能を融合させ、農業、観光、物流、防災といった多様な機能を一体的に展開することで、持続可能な都市モデルを提示しています。本地区は、横浜市西部の新たな拠点としてだけでなく、日本全国の郊外再生にとっても示唆に富む先進事例となっていくことが期待されています。
過去の記事→旧上瀬谷通信施設地区 (上瀬谷通信施設跡地再開発) 2020年5月現地の様子
最終更新日:2026年1月1日