東京都練馬区の西武新宿線・上石神井駅周辺では、鉄道の連続立体交差事業や都市計画道路「外環の2(新青梅街道~千川通り間)」の整備を契機として、駅周辺全体のまちづくりが本格的に進められています。急行停車駅として練馬区南西部の拠点を担ってきた同地区は、商店街や住宅地、公共施設が集積する一方、踏切による交通渋滞や道路の狭隘さ、鉄道による地域分断など、長年の課題を抱えてきました。
こうした状況を受け、練馬区は都市計画マスタープランにおいて上石神井駅周辺を「地域拠点」と位置付け、土地の高度利用や交通結節機能の強化、にぎわいある駅前空間の創出を目指しています。近年では、北西地区における市街地再開発事業準備組合の設立、駅前交通広場の整備、南北道路沿道での建物の共同化検討、さらには車両留置施設再編後の土地利用誘導など、多方面から段階的なまちづくりが進行しています。
上石神井駅周辺のまちづくりの概要
1.上石神井駅周辺まちづくりの位置付けと課題
練馬区都市計画マスタープランにおける地域拠点としての位置付け。
踏切による交通遮断や道路狭隘、地域分断といった長年の都市課題。
2.まちづくり構想・地区計画による将来像の明確化
住民・商店街と連携したまちづくり構想の策定と令和3年の改定。
令和6年都市計画決定による土地利用・建築ルールの明確化。
3.上石神井駅北西地区再開発の検討状況
市街地再開発事業準備組合の設立による地権者主体の再編検討。
老朽建物や細分化敷地の解消と防災性・都市機能更新への期待。
4.駅前拠点機能の強化と複合利用の推進
商業・業務・居住機能を組み合わせた駅前複合拠点形成の検討。
交通広場や道路整備と連動した一体的なまちづくり。
5.外環の2(南北道路)整備と沿道まちづくり
バリアフリー化や自転車空間整備による安全で快適な街路空間。
延焼遮断帯や緊急輸送路としての防災機能強化。
6.駅前交通広場整備と建物共同化の誘導
バス・タクシー・歩行者動線を集約した交通結節点の形成。
沿道建物の共同化による段階的な土地高度利用。
7.鉄道立体化と車両基地再編による都市再編効果
西武新宿線連続立体交差事業による踏切除却と回遊性向上。
車両基地再編跡地を核とした新たな拠点機能創出。

上石神井駅周辺地区は、練馬区都市計画マスタープランにおいて「地域における活動と交流の中心」と位置付けられています。駅を中心に商店街が広がり、公共施設や学校も立地することから、生活利便性の高い拠点として発展してきました。
一方で、駅前を通過するバス路線や自動車交通、歩行者、自転車が狭い道路に集中し、安全性や快適性の面で課題が顕在化していました。さらに、西武新宿線の踏切による交通遮断や、外環計画に伴う長期的な建築制限が、まちの更新を難しくしてきた経緯があります。こうした制約条件を整理し、基盤整備と一体となった将来像を描くことが、上石神井まちづくりの出発点となっています。

練馬区は、地域住民や商店街とともに「上石神井駅周辺まちづくり協議会」を設立し、平成20年にまちづくり構想を策定しました。その後、外環の2や鉄道立体化の計画が具体化したことを受け、令和3年6月に構想を改定しています。
さらに、令和6年3月には「上石神井駅周辺地区地区計画」が都市計画決定され、土地利用や建築物の用途・高さ、景観形成に関するルールが明確化されました。これにより、無秩序な開発を抑制しつつ、地域の特性に応じた高度利用やにぎわい創出を誘導する枠組みが整えられています。


上石神井駅北西側では、令和6年9月に市街地再開発事業準備組合が設立されました。事務局は日鉄興和不動産が務め、地権者主体で建物の共同化や土地の有効利用に向けた検討が進められています。対象区域は上石神井四丁目の一部で、現時点では具体的な用途構成や規模は未定とされています。
同地区は駅近接という立地特性を持つ一方、老朽建物や細分化された敷地が多く、再編による防災性向上や都市機能更新が期待されています。


北西地区の再開発では、単なる建替えにとどまらず、駅前にふさわしい拠点機能の形成が重視されています。商業、業務、居住など多様な都市機能を複合的に導入することで、日常利用と来街者利用の双方に対応した空間づくりが想定されています。
練馬区は準備組合の活動支援を継続し、周辺の交通広場や道路整備と連動した一体的なまちづくりを目指すものとされています。


外環の地上部街路である「外環の2(新青梅街道~千川通り間)」は、幅員約22メートルの南北道路として整備が進められます。歩道のバリアフリー化や自転車走行空間の確保、街路樹や電線類地中化により、安全で快適な都市空間の形成が図られます。
また、防災面では延焼遮断帯や緊急車両通行路としての役割も担い、地域全体の安全性向上に寄与します。


南北道路沿道では、建物の共同化による土地の高度利用が検討されています。これは強制ではなく、将来像を共有した上で段階的に進められるものです。
あわせて、駅西側では交通広場の整備が計画され、バスやタクシーの乗降機能、歩行者動線、オープンスペースを一体的に配置することで、交通結節点としての機能強化とにぎわい創出が期待されています。


西武新宿線の連続立体交差事業に伴い、上石神井車両基地の再編が想定されています。再編後の跡地については、地区計画において「鉄道施設・拠点機能創出地区」と位置付けられ、地域の新たな核となる土地利用が誘導されます。
交通利便性の高い立地を活かし、公共性や地域貢献性の高い施設導入が検討されており、駅周辺全体の価値向上につながる重要な要素となっています。


西武新宿線(井荻駅~西武柳沢駅間)連続立体交差事業は、杉並区および西東京市にまたがる約5.1kmの区間において、鉄道を高架化し、道路と鉄道を連続的に立体交差化する都市高速鉄道事業です。本事業は、令和3年11月26日に都市計画決定が行われ、令和6年3月6日に事業認可を取得しています。
本区間には多数の踏切が存在し、交通渋滞や安全面での課題が指摘されてきましたが、事業の実施により、補助第229号線(千川通り)など19か所の踏切が除却されます。これにより、踏切による慢性的な交通混雑の解消や、道路・鉄道双方の安全性向上が図られます。

鉄道は高架方式(嵩上式)を基本とした構造とし、地域を分断していた線路の影響を解消します。あわせて、鉄道付属街路や自転車歩行者専用道などの側道整備を進めることで、駅へのアクセス性向上、安全な歩行空間の確保、日影など環境影響の緩和、防災性の向上といった効果が期待されています。
さらに、都市計画道路や駅前広場の整備を併せて進めることで、駅周辺の回遊性や利便性が高まり、にぎわいのある沿線まちづくりの推進につながります。事業期間は、都市高速鉄道事業が令和6年度から令和20年度まで、道路事業が令和22年度までとされており、段階的に整備が進められる予定です。
▼出典・引用元
・練馬区 西武鉄道新宿線(井荻駅~西武柳沢駅間)連続立体交差事業などについて
・練馬区 上石神井駅周辺のまちづくり
最終更新日:2026年2月2日