岐阜県は、岐阜市司町に現存する歴史的建築「旧岐阜県庁舎」の利活用事業について、プロポーザル評価会議の結果を踏まえ、優先交渉権者を「ワールドヘリテージミュージアム共同企業体」に選定しました。大正13年(1924年)竣工の旧県庁舎は、県内でも最古級の鉄筋コンクリート造庁舎として高い歴史的価値を有しており、閉庁後は保存を前提とした活用方法が模索されてきました。
今回選定された事業者は、建物の主要部分を保存しながら、ミュージアム、ホテル、レストラン、ジムなどを組み合わせた複合施設「Heritage Hotel & Craft Museum」として再生する計画を提案しており、供用開始は令和11年4月を目標としています。周辺には「みんなの森 ぎふメディアコスモス」や岐阜市役所新庁舎といった公共施設が集積しており、歴史的建築物の保存活用と都市拠点機能の連携による、司町エリア全体の価値向上が期待されています。
→岐阜県 旧岐阜県庁舎(岐阜市司町)の利活用事業に関する優先交渉権者を選定しました
旧岐阜県庁舎利活用事業の概要
1.旧岐阜県庁舎利活用事業の位置付け
大正期竣工の歴史的庁舎を保存活用し、民間活力で再生する県有資産活用プロジェクト。
文化財的価値の継承と都市拠点機能の更新を同時に図る取り組み。
2.優先交渉権者の選定と事業体制
ワールドヘリテージミュージアム共同企業体を優先交渉権者に選定。
財団法人と民間企業による運営・維持管理一体型の事業スキーム。
3.複合施設「Heritage Hotel & Craft Museum」構想
ミュージアム、ホテル、レストラン、ジム等を組み合わせた複合機能構成。
観光利用と市民の日常利用を両立させる施設計画。
4.歴史的意匠・空間の保存方針
正面玄関、中央階段、旧正庁、旧知事室、ステンドグラス等の原則保存。
耐震補強とバリアフリー化を前提とした保存改修型再生。
5.供用開始目標と事業スケジュール
令和11年4月の供用開始を目標とする段階的整備計画。
基本協定締結後の詳細設計・改修工事を経た開業想定。
6.みんなの森 ぎふメディアコスモスとの連携
図書館・文化施設と観光・滞在機能の相互補完による回遊性向上。
イベント連携や来訪者滞在時間延長を促すエリア一体活用。
7.岐阜市役所新庁舎と形成する都市拠点機能
行政・文化・観光・交流が集積する司町エリア中核の完成形。
平常時のにぎわい創出と非常時の公共機能連携を兼ねる都市構造。

優先交渉権者に選定されたのは「ワールドヘリテージミュージアム共同企業体」で、一般財団法人ワールドヘリテージ財団を代表構成員とし、フィットイージー株式会社が構成員として参画します。提案されている施設コンセプトは「Heritage Hotel & Craft Museum(ヘリテージ ホテル アンド クラフト ミュージアム)」で、歴史的建築の保存と新たな観光・交流機能の導入を両立させる内容となっています。フロア構成については、1階にミュージアム、企画展示場、カフェを配置し、2階にはジム、ガーデンテラス、ホテル機能を設け、3階にはホテル、レストラン、バンケット、バーを整備する計画で、観光客だけでなく市民の日常利用も想定した複合利用が特徴です。

プロポーザルの要件では、「正面玄関」「中央階段ホール」「旧正庁」「旧知事室」「ステンドグラス」など歴史的・文化的価値の高い部分の原則保存が求められており、今回の提案もこれらの保存を前提とした改修計画となっています。あわせて、耐震補強やバリアフリー対応などの安全対策も必須条件とされており、民間事業者の責任と費用負担で整備・運営・維持管理を行うスキームが採用されています。県は今後、基本協定の締結に向けて事業者と詳細な協議を進める予定です。

旧岐阜県庁舎の西側には、岐阜市立中央図書館を中核とする複合文化施設「みんなの森 ぎふメディアコスモス」が立地しています。2015年に開館した同施設は、図書館機能に加え、市民活動交流センター、多目的ホール、展示ギャラリー、カフェなどを備えた滞在型公共施設として、年間100万人規模の来館者を集める市内有数の交流拠点となっています。

建築は伊東豊雄建築設計事務所による設計で、金華山の稜線を想起させる波打つ木造屋根と大空間ワンルーム構成が特徴的で、建築そのものが都市のランドマークとして高い評価を受けています。屋外には「せせらぎの並木 テニテオ」や「みんなの広場 カオカオ」といった歩行者空間・広場が整備され、イベントや市民活動の舞台として日常的に活用されています。

旧県庁舎がミュージアムやホテル、レストラン機能を備えた観光・滞在拠点として再生されることで、メディアコスモスの文化・学習機能と、旧県庁舎の観光・交流機能が補完関係を築き、回遊性の高いエリア形成が期待されます。特に展示・イベント連携や観光客の滞在時間延長など、司町一帯を「文化と歴史を体感できる拠点」としてブランディングしていく上で、両施設の近接立地は大きな強みとなります。

旧岐阜県庁舎の南西側には、2021年に供用開始した岐阜市役所新庁舎が立地しています。地上18階・高さ約84mの高層庁舎で、市内行政機能の中枢を担うとともに、免震構造や非常用電源、災害対策本部機能を備えた防災拠点として整備されています。低層階には市民窓口や金融機関、交流スペースが配置され、市民が日常的に訪れる開かれた庁舎となっている点も特徴です。
新庁舎は、メディアコスモスや周辺広場と一体的に配置され、イベント時や平常時の人の流れを受け止める都市の結節点として機能しています。災害時には、市役所が司令塔、メディアコスモスがボランティアセンター機能を担う想定となっており、公共施設同士の機能連携が都市防災の観点からも重視されています。

ここに旧県庁舎の利活用施設が加わることで、司町エリアが行政・文化・観光・交流が集積する複合的な都市拠点が完成形に近づくことになります。平常時は観光・市民活動・滞在の都市拠点としてにぎわいを創出し、非常時には公共空間としての役割も担う可能性を持つ点で、旧県庁舎の再生は単体の建物活用にとどまらず、司町エリア全体の都市機能強化に直結するプロジェクトと位置付けることができます。
最終更新日:2026年1月9日