香川県坂出市では、中心市街地の活性化と持続可能なまちづくりを目指し、「坂出市中心市街地活性化公民連携事業」を展開しています。この取り組みは、坂出駅前エリアおよび坂出緩衝緑地(東大浜緑地)を対象に、設計、建設、維持管理、運営までを一体的に進めるPFI方式で進められており、官民が連携することで、柔軟かつ先進的なまちづくりを実現しようとするものです。
事業期間は令和6年から令和27年3月末まで。再整備後は、インクルーシブな公共空間、滞在型ライブラリー、子育て支援施設、交流拠点、イベントスペースなど多機能が融合した都市空間が展開される予定です。プロジェクトのコンセプトは「坂を越える感動」と「坂で出会うまち」。坂出の地名に込められた意味を視覚的にも体験的にも表現しながら、地域らしさと新たな価値を融合させた都市空間の創造が進められています。
坂出市中心市街地活性化公民連携事業の概要
1. 事業の位置づけ
坂出市が推進する都市再生の一環であり、駅前や市街地の中心部における活性化と持続可能なまちづくりを目指す、官民連携型の都市整備事業。
2. 対象エリア
対象は坂出駅前および坂出緩衝緑地(東大浜緑地)で、施設整備と空間デザインを一体で進める。
3. 手法と方式
PFI(Private Finance Initiative)方式を採用し、設計・建設・維持管理・運営を包括して民間に委ねる仕組み。
4. 事業期間
令和6年度から令和27年3月末までの長期プロジェクトとして計画されている。
5. 整備後の機能
再整備されたエリアには、インクルーシブ空間、図書機能、子育て支援、交流スペース、イベントスペースなど多機能が融合。
6. コンセプト
「坂を越える感動」「坂で出会うまち」という地名を活かした体験的な空間コンセプトを採用し、都市の個性を引き出す。
7. まちづくりの姿勢
ハード整備にとどまらず、市民参加と地域らしさの尊重を重視し、まちの新しい価値を創出することを目指している。

本事業は、坂出市が長年抱えてきた中心市街地の空洞化という課題に真正面から取り組むものです。かつては多くの人で賑わっていた駅前や市街地のエリアも、現在では人通りが減少し、施設の老朽化も進んでいました。こうした状況を打開すべく、単なる施設の建て替えではなく、「まち全体をどう再構築するか」を軸に、都市の新しい価値を創出することが求められていました。
そこで坂出市は、公共と民間の力を結集するPFI方式を採用。民間事業者の知見や創意を取り入れ、機能的かつ魅力ある都市空間を生み出すことを狙いとしました。地域住民とともに未来のまちの姿を描く、市民主導のまちづくりも大きな特徴です。

事業は2024年(令和6年)2月に特定事業として選定され、そこから約10か月にわたり公募・対話・提案・審査などのプロセスが展開されました。募集には2グループが応募し、同年8月の選定委員会で審査の結果、優先交渉権者として選ばれたのが、大林組を代表とする民間6社のグループです。建設、設計、都市開発、文化事業など多様な分野の専門家が名を連ねており、総合力と実現性の高さが評価されました。
審査では提案内容の革新性、事業継続性、市民サービスへの貢献度などが加点方式で評価され、最高得点1500.03点を獲得しての選定となりました。2024年12月に事業契約が正式に締結され、その後は段階的に設計・工事・運営が進められます。

「坂を越える感動」「坂で出会うまち」という本事業のコンセプトには、坂出の地形的・文化的特性をポジティブに表現し、新たな都市の魅力として昇華させる意図が込められています。設計思想としては、物理的な“坂”を空間に取り入れながら、視覚や体験の変化を通じて都市に奥行きとドラマを与える工夫がなされています。

駅前施設や緑地空間には、屋内外を緩やかにつなぐ「スキップフロア」や「吹き抜け」「芝生の丘」といった立体的な構造を採用し、単なる移動経路ではなく、滞在や発見の場として機能させています。多様な人が自分のペースで過ごせる「まちのリビング」が設けられ、世代や目的を超えて交流が生まれる空間構成が意図されています。


坂出駅北口に整備される駅前拠点施設は、駅とまちをつなぐ“顔”として、誰もが何度でも訪れたくなるような開かれた施設を目指しています。施設はスキップフロア形式で、1〜3.5階までを階段(=坂)でゆるやかにつなぐ構成。中央にある吹き抜け空間は4層にわたり貫かれ、本に囲まれた象徴的な空間が人々の目を引きます。
各階は「まちの魅力に出会う」「学びに出会う」「こどもの成長に出会う」というテーマで分かれており、カフェやギャラリー、図書館、学習室、子育て支援スペースなどが階層ごとに展開。施設全体が一つの“活動空間のショールーム”として、日々の暮らしに新たな出会いと発見を提供します。また、1階のラウンジや階段スペース「坂のステージ」は、イベントやワークショップにも柔軟に活用可能です。


子どもと子育て世代の視点からも高く評価されているのが、3階に配置される子ども専用ゾーンです。このフロアは一般利用者と物理的に分けることで、安全性と安心感を確保。乳幼児の一時預かりや年齢に応じたプレイルーム、豊富な児童図書を揃える子ども図書館など、多彩な機能がワンフロアに集約されます。
特に注目されるのは、知育玩具や工作道具を用いて子どもと遊びをつなぐ「プレイリーダー」の配置。学びと遊びの両立を促す試みとして、家庭とは異なる新しい育ちの場が提供されます。保護者にとっても、安心して利用できる「市民の子育て拠点」としての価値が高まっています。

坂出緩衝緑地(東大浜緑地)は、市民の憩いの場として再整備されます。既存樹木をできる限り残しつつ、適度な間伐や剪定を通して明るく心地よい緑の空間を創出。目玉となるのは、讃岐富士の姿をモチーフにした「芝生の丘」で、ランドマークとしての機能を果たすと同時に、子どもたちの遊び場としても活用されます。
丘は自然の地形そのものが遊び場となっており、走り回ることで子どもたちの体幹を鍛えることも期待されます。また、道路からの視線や車の動きを遮る構造により、安全性と落ち着きのある環境が両立されている点も特徴です。自然と都市が共存する、質の高い都市緑地が実現される見込みです。

緑地内には、ロビーや貸室を備えた緩衝緑地拠点施設が新設され、市民の活動拠点として機能します。ハンドメイド雑貨の販売やアート展示、産直市、カルチャー講座など、多様な市民活動に対応した場として、柔軟に利用可能な設計となっています。活動の“見える化”が進められることで、市民参加が自然に広がることも期待されます。
また、拠点施設には、芝生広場を一望できるカフェも併設され、家族連れにとっても居心地の良い空間が提供されます。深い軒を持つ縁側のようなデザインによって、屋外と屋内をつなぐ空間が創出されており、子どもが遊ぶ様子を見守りながら安心してくつろげる場となります。市民の暮らしに寄り添い、日常の延長として利用される“まちの縁側”として、にぎわいと温かみをもたらす空間が育まれていくでしょう。
最終更新日:2025年7月22日

