三重県の県都・津市において、中心部の交通・都市機能が集積する津駅周辺の再整備に向けた新たなビジョンが策定されました。津駅は、行政、商業、業務、教育、文化、医療、福祉などの機能が集約された市の中枢であると同時に、複数の公共交通機関が乗り入れる重要な交通結節点でもあります。
長年にわたり都市基盤が整備されてきたこの地域では、施設の老朽化や東西エリアの分断、西口広場の混雑など、さまざまな課題が顕在化してきました。そうした現状を踏まえ、津市は国や三重県と連携し、「津駅周辺基盤整備の方向性(ビジョン)」を策定。未来志向の視点から、交通、防災、にぎわい、連携、回遊性といったキーワードを軸に、持続可能な都市空間の形成を目指す方針を明確にしました。
津駅周辺基盤整備の方向性(ビジョン)の概要
- ビジョン策定の背景と目的
津駅周辺は市の中心として長年整備されてきましたが、施設の老朽化や交通課題が顕在化しています。これらの課題解決と将来の持続可能な都市づくりを目指し、新たな基盤整備ビジョンが策定されました。 - 基本理念と整備コンセプト
「地域の顔として活力を引き出し、災害にも強い空間づくり」を基本理念に掲げ、西口・東口・東西連携の3つの領域で安心快適で交流が生まれる空間形成を目指します。 - 交通結節機能の強化
駅周辺のバスやタクシー、自転車など多様な交通モードを再編し、歩行者の安全確保や案内充実を図ることで、利便性の高い交通拠点へと機能向上を図ります。 - 防災機能の確保
災害時に一時避難が可能な安全空間や耐震・水害対策を備えた施設整備を進め、地域の防災拠点としての役割を強化します。 - にぎわいと滞留空間の創出
駅前広場や周辺に滞留しやすい空間や交流施設を整備し、多様な人が集い賑わうことで地域経済活性化を促進します。 - 東西連携の強化
東西エリアの分断解消を目指し、新たな自由通路やバリアフリー化を進めるとともに、両エリア間の人流・交流を活発化させます。 - 回遊性の向上と地域連携
駅を起点に周辺地域や観光地へのアクセスをスムーズにし、新型モビリティやデジタル技術を活用した歩行環境整備により、市内外の回遊性を高めます。

津駅周辺エリアは、市民や来訪者が都市的サービスを享受する中核的な地域として、これまで段階的に整備されてきました。昭和39年に始まった土地区画整理事業を契機に、東西連絡橋や駅前広場、地下道などが整備され、現在の都市空間の骨格が形成されました。しかし、その整備から半世紀以上が経過し、施設の老朽化が進むと同時に、津駅西口周辺の住宅地開発による人口増加も相まって、交通・防災・都市機能面で多くの課題が浮き彫りになっています。
こうした中、2020年の道路法改正をきっかけに、津市は三重県とともに津駅東口の道路空間を見直す調査検討を進めてきました。翌2021年には「津駅周辺空間の活用に関する方向性」が取りまとめられ、さらに2022年には国・県・市の三者による「津駅周辺道路空間の整備方針」が公表されました。そこでは、公共交通の利便性向上や防災力の強化、歩行者の滞留機能、東西の連携強化などが重点項目とされ、津駅西口駅前広場や東西自由通路の整備が進められることとなりました。
このような調査等の成果を踏まえ、津市は本格的に将来像を描くための「津駅周辺基盤整備の方向性(ビジョン)」が策定されました。

今回のビジョンでは、「みえ県都の顔となり、地域の活力を引き出し、災害にも強い空間へ」という基本理念が掲げられています。これは2022年の整備方針を踏襲する形で、都市としての魅力と機能、そして安全性の向上を一体的に目指す内容です。
整備コンセプトは、津駅西口・東口・東西連携の3領域ごとに明示されています。西口では「市民の安心・快適な移動を支える」空間を、東西連携では「様々な人が行き交い交流が生まれる」空間を、東口では「交通結節機能が強化され、にぎわいや憩いの場がある」空間をそれぞれ目指します。こうした構想の中では、ユニバーサルデザインやスマートシティ、カーボンニュートラルの視点も取り入れられ、新しい技術や仕組みを積極的に導入することで、将来の持続可能な都市空間を創出していく意志が示されています。

津駅周辺が交通拠点として持つポテンシャルを最大限に引き出すため、東口・西口双方で多様な交通モードの集約化が図られます。路線バス、タクシー、一般車両、高速バス、企業送迎車などの乗降スペースを適切に再配置することで、駅前広場全体の動線を整理し、広域交通拠点としての機能を高める狙いです。
加えて、歩行者の安全性や快適性を向上させるために、歩道の整備やペデストリアンデッキの設置も検討されています。また、利用者が迷わず移動できるよう、駅周辺の案内誘導の充実も進められます。さらに、駐輪場の再整備や、電動キックボード・シェアサイクル・自動運転などの新型モビリティに対応したインフラの導入も見込まれており、駅を中心に多様な移動ニーズに応える体制が整えられていきます。

災害時にも安全で機能的な都市空間を確保するため、津駅周辺の防災機能強化がビジョンの柱の一つとなっています。駅利用者や周辺住民が災害時に一時避難できる空間の整備や、津波・豪雨・地震といった自然災害への対応策が検討され、立体的で安全な避難経路の確保が進められます。
駅前の施設自体も防災対応を強化する方向で整備が進められ、地域住民が安心して過ごせる都市空間づくりが目指されます。駅という公共交通の要所が災害発生時に地域の拠点となるよう、耐震性や水害対策の観点も取り入れた施設づくりが求められています。

津駅は東西にまたがって発展してきた歴史がある一方で、東西の行き来が円滑でないという課題を抱えています。この課題を解決するため、新たな自由通路の整備や既存経路のバリアフリー化が進められ、誰もが安全かつ効率的に移動できる環境づくりが行われます。
また、駅を中心に両エリアの人流が活発になるよう、東西連携の視点から交流空間の創出も検討されており、都市全体の一体感が高まる構造へと変化していくことが想定されています。

津駅周辺は、商業・業務・居住のニーズが交錯する都市拠点であるため、多様な人々が集い、交流できる空間の創出が重要です。駅前には滞留しやすい広場や広場周辺のオープンカフェ、ベンチ、イベントスペースなどの整備が検討されており、市民や観光客が自然と滞在する環境が目指されます。
また、周辺の土地利用促進に向けて再開発事業の実施も視野に入っており、官民連携によるエリアマネジメントの体制構築、商業、宿泊、業務、居住等の機能を持った複合建築物の建設も進められる予定です。駅を起点に魅力的な都市空間が広がることにより、地域経済の活性化にも寄与することが期待されています。


最後に、津駅を起点とした回遊性の強化にも重点が置かれています。駅から中心市街地や文化施設、観光地、大門・丸之内エリア、津なぎさまちなどへとスムーズにアクセスできるよう、新型モビリティを活用した「ラストワンマイル」の支援施策が導入される予定です。
駅周辺の歩行空間も再整備され、誰もが安心して歩ける魅力的な街並みが形成されます。併せて、デジタル案内板やスマート誘導など、先進技術を取り入れた都市導線も導入され、駅を核にしたシームレスな都市回遊が実現されていきます。津駅だけでなく、津新町駅など近隣地域との連携も強化され、より広域的な都市圏としての展開も視野に入れた整備が進められる見通しです。
最終更新日:2025年8月4日

