2025年8月6日、大阪市と大阪府は、夢洲アクセス鉄道に関する新たな検討資料を公表しました。この資料では、大阪・関西万博の開催地であり、将来的には統合型リゾート(IR)の開業も見込まれる夢洲(ゆめしま)への交通アクセスのあり方について、複数の交通手段の選択肢とその実現可能性、費用、効果などが幅広く検討されています。
現在、夢洲へは大阪メトロ中央線の延伸によってアクセスが整備されつつありますが、万博やIRといった大規模集客施設の需要に対応するには、より強靱かつ多様なアクセス体制の構築が必要とされています。今回の検討では、鉄道・新交通システム・道路交通など、様々な側面からアクセス手段が検討されており、事業の優先順位や財政的な持続可能性も含めた多角的な議論が進められています。
夢洲アクセス鉄道に関する検討の概要
1. 公表日と背景
2025年8月6日、大阪市と大阪府が「夢洲アクセス鉄道」に関する検討資料を公表。大阪・関西万博や将来のIR(統合型リゾート)開業を見据えた交通インフラ強化が背景。
2. 現状のアクセス状況
現在は大阪メトロ中央線の延伸が行われたが、単一路線への依存では大規模集客や災害対応に課題あり。
3. 万博・IRにおける需要予測
万博開催時は最大28万人/日、IR開業後は年間2,000万人超の来訪者が見込まれ、輸送力の増強が急務。
4. 多様なアクセス手段の検討
鉄道延伸に加え、新交通システム(LRT/BRT)や既存鉄道の分岐延伸など、複数のアクセス案を比較検討。
5. 検討の視点
輸送力、建設費、整備期間、費用対効果、民間事業者との連携可能性など多角的な視点で評価。
6. 課題と今後の方向性
単独案だけでなく、段階的整備や複数案の組み合わせも視野に。財政的持続性と実現可能性が課題。
7. 今後の展望
中長期的にはIR時代を見据えた多ルート・高輸送力の構築が必要で、官民連携を含めた本格的な調整へと移行。

夢洲は大阪湾に浮かぶ人工島であり、大阪市此花区に属します。2025年に開催される大阪・関西万博の会場として整備が進む一方で、その後には世界的IR施設の誘致・整備が予定されています。しかし、現在のアクセス手段は限定的で、大阪メトロ中央線が延伸される計画があるものの、一本の路線のみに依存する状態では、将来的な大規模集客や災害時のリスク対応には不十分とされます。
とくに、万博開催中は1日最大約28万人、IR開業後は年間約2,000万人規模の来訪者が見込まれており、こうした需要に対応する輸送力や、複数の代替手段を確保することが求められます。また、中央線自体も輸送力に制限があり、ピーク時の混雑や設備老朽化も懸念されています。これらの課題を踏まえ、鉄道延伸を含む複数のアクセス整備案が検討対象となっています。

今回の公表資料では、夢洲アクセス強化のための複数の鉄道・新交通システム案が提示されました。その主な案は以下の通りです:
- 答申路線(中之島〜西九条〜新桜島〜咲洲〜夢洲):北港テクノポート線延伸や中之島新線延伸新設。
- JR桜島線の延伸案(桜島駅~夢洲):ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)との観光軸形成が可能。※検討路線
- 京阪中之島線延伸案(中之島〜九条):※検討路線
これらの案は、それぞれ整備費用、年間輸送人員、整備期間、既存交通網との接続性、将来的な拡張性、事業スキーム(官民連携の可否)といった要素ごとに整理され、比較検討されています。また、単独案としての導入だけでなく、複数案を段階的・組み合わせて導入する可能性も示唆されています。

JR桜島線(ゆめ咲線)の延伸は、桜島駅から夢洲までの約4.9kmを新設する鉄道路線であり、USJとIRをダイレクトに結ぶ観光・ビジネス両面にわたる利便性向上が期待されています。
この案では、JR西日本が主体となる可能性もあり、既存インフラとの接続性の良さ、環状線や新大阪方面への利便性なども高評価です。1日あたり最大12万人以上の輸送が可能と試算されており、大量輸送ニーズにも十分応える形となっています。
一方で、建設費は約2,850億円とされ、用地取得や海底トンネルの整備、地質条件への対応などが技術的・財政的ハードルとして挙げられます。また、JR西日本との事業調整や民間投資の確保も大きな課題となっており、実現には官民連携による明確なスキーム構築が必要不可欠です。


他の案もそれぞれ独自の特徴と課題を有しています。
ニュートラムの延伸案では、既存の南港ポートタウン線を活用し、比較的短期間かつ低コストでの整備が可能とされます。しかし、ニュートラムの輸送力は限定的であり、混雑時の対応力に課題が残ります。
また、阪神なんば線の分岐延伸案では、三宮・奈良方面など広域圏からのアクセス向上が期待されますが、既存線の容量限界や夢洲方面への分岐整備に伴う技術的ハードルが存在します。
さらに、新交通システム(LRTやBRTなど)の導入案では、比較的柔軟で安価な導入が可能である一方、運行本数・混雑対策・安全性など、大規模イベント対応の観点では不安材料も多く、単独案としての採用には慎重な検討が必要とされています。

それぞれのアクセス案については、初期投資額、維持管理コスト、輸送需要への対応度、年間旅客数、IR開業後の混雑緩和効果など、複数の指標に基づく費用対効果(B/C)の比較分析が行われています。
JRゆめ咲線延伸案は輸送力・利便性ともに高評価を受けていますが、費用対効果の観点では、初期投資が重く、採算確保の見通しを立てる必要があります。一方、ニュートラムやLRT案は費用が抑えられるものの、IR時代の需要に追いつかない可能性があります。
そのため、当面は万博対応を優先し、長期的にはJR延伸を視野に入れた段階的整備、あるいは複数案の組み合わせによる多ルート化の戦略が現実的とされており、今後の政策判断が注目されます。

大阪市および大阪府は、今回の検討結果を踏まえ、2026年度中を目標に整備方針の具体化を進める方針です。今後は、各鉄道会社や民間デベロッパー、ゼネコンなど、関係事業者との連携協議が本格化する見込みです。また、国土交通省の支援や特区制度の活用による財源確保の可能性についても議論されるとみられています。
万博に向けては、大規模イベント時の臨時輸送体制やシャトルバスの増便、交通管制の高度化など短期的な施策が並行して実施される予定です。2030年前後のIR開業に向けては、アクセス鉄道の整備が都市の将来像に直結するインフラ戦略として位置づけられており、持続可能でレジリエントな都市交通のモデルケースとして、全国的にも注目が集まっています。
最終更新日:2025年8月7日

