茨城県古河市では、大堤南部地区において、宇都宮線の新駅「(仮称)南古河駅」の設置構想と連動した大規模なまちづくりを進めるため、「大堤南部地区まちづくり構想」の策定に向けた検討を本格化させています。同地区は平成8年に土地区画整理事業の都市計画決定がなされたものの、長年にわたり事業化には至らず、道路幅員の不足、雨水排水対策、緊急車両の進入性、防災面の不安など、生活基盤上の課題を抱えてきました。
こうした状況を受け、古河市は「合意形成が難しいから進めない」のではなく、「可能な部分から段階的に整備を進める」という現実的な方針のもと、地区北側エリアを中心に生活道路の拡幅や下水道整備に着手しています。今後は、土地利用ゾーニングの共有、個別意向調査、地区整備方針の検討を段階的に進めながら、実現性の高い都市基盤整備と持続可能な市街地形成を目指すものとされています。
さらに、地区中央部には新駅設置構想が位置付けられており、交通結節点としての機能集積や交流・防災拠点化を図ることで、古河市の新たな玄関口となる都市拠点の形成が期待されています。
大堤南部地区まちづくり構想の概要
1.大堤南部地区まちづくり構想の位置付け
宇都宮線新駅(仮称)南古河駅構想と連動した古河市南部の将来都市拠点形成構想。
長期未着手地区の再編と持続可能な市街地形成を目的とする総合的まちづくり方針。
2.未整備都市基盤が抱える地域課題
狭隘道路、雨水排水、防災性不足、踏切による分断など生活環境上の構造的課題。
安全性・利便性・防災性の向上を求める地域ニーズの顕在化。
3.段階的整備を基本とする現実的アプローチ
一括整備に依存しない、可能な区域から進める段階的都市基盤整備方針。
二重投資回避と実現性重視による着実な事業推進姿勢。
4.土地利用ゾーニングによる機能分担整理
住宅系・複合系・産業系・沿道系の4ゾーン設定による役割分担整理。
道路率向上と面的整備誘導を通じた市街地更新方針。
5.生活道路・上下水道整備の先行実施
地区北側を中心とした道路拡幅・下水道整備の先行着手。
日常生活の安全性・快適性向上を目的とする基盤改善施策。
6.住民参加型の合意形成プロセス構築
説明会、意向調査、地区整備方針共有による段階的合意形成。
地区計画導入を見据えたルールづくりと将来像共有。
7.南古河新駅構想がもたらす将来波及効果
交通結節点形成による交流・防災・生活機能集積の可能性。
土地利用転換と新たな都市拠点形成への波及期待。

大堤南部地区では、平成8年に土地区画整理事業の都市計画決定がなされたものの、社会情勢の変化や事業採算性、合意形成の難しさなどから、長期間にわたり具体的な事業化には至りませんでした。その間、地区内では道路幅員が4m未満の狭隘道路が多く残り、降雨時の雨水排水、緊急車両の進入性、踏切による東西分断など、日常生活や防災面での課題が顕在化してきました。

令和5年度に実施された「大堤南部地区まちづくり意向調査」では、「道路や上下水道の整備」が約38%、「防災施設の整備」が約28%と、生活に直結する基盤整備への要望が特に高い結果となりました。市はこれらの声を踏まえ、地区全体を一気に再整備するのではなく、二重投資を避けながら、地区の特性に応じて段階的かつ着実に整備を進める方針を掲げています。
この考え方のもと、「地区の状況や特性を踏まえ、実現性の高いまちづくりを進める」ことを基本理念とし、都市計画の見直しも視野に入れながら、将来の土地利用と都市基盤のあり方を地域と共に検討していく段階に入っています。

大堤南部地区は市街化区域に指定されており、「都市的土地利用を誘導する市街地」の形成が基本方針とされています。検討中の土地利用ゾーニング(案)では、地区の現況や道路率、土地条件を踏まえ、次の4つのゾーンに区分されています。
「住宅系市街地ゾーン」は、既存住宅地を中心にコミュニティの維持を図りながら、道路拡幅や下水道整備など生活基盤の充実を進める「道路整備推進地区」と位置付けられています。現状の道路率は約10.1%と低く、安全性と利便性の向上が重要なテーマとなっています。
「複合系市街地ゾーン」は、新駅周辺を含むエリアで、住宅・商業・サービス機能など多様な都市機能の集積を想定する「面整備検討地区」です。道路率は約7.5%と低く、水田部との高低差もあるため、道路整備と宅地盛土を一体的に行う面的整備が検討されています。
「産業系市街地ゾーン」および「沿道系市街地ゾーン」は、既に道路率が14%を上回っており、既存の産業活動や沿道環境を維持することを基本とした「維持地区」と整理されています。
地区全体の道路率は約10.3%と依然として低いため、将来的には道路率14%以上を目標に、幅員5m以上の道路整備、公園・緑地の創出、地区計画による建築ルールの導入などを組み合わせ、質・量ともにバランスの取れた市街地形成を目指します。

本構想では、計画倒れを避けるため、説明会・意向調査・方針整理を段階的に積み重ねるプロセスが重視されています。令和7年7月に開催された第1回説明会では、土地利用現況とゾーニング案が共有され、地域住民と将来像を議論する場が設けられました。続く秋頃には、より具体的な「地区整備の考え方」を共有する説明会が予定されています。
さらに、令和7年度から令和8年初頭にかけて、地権者を対象とした個別土地利用意向調査が実施され、土地ごとの活用意向や整備への考え方を丁寧に把握したうえで、合意形成を前提とした具体的な整備手法が検討されます。その結果を踏まえ、必要に応じて都市計画の見直しを判断していく流れとなっています。
また、地区計画によるルールづくりも重要な柱です。予定道路の指定、建物用途制限、壁面位置の制限、ブロック塀の高さ制限などを通じて、防災性・景観・歩行環境の質を高め、将来にわたって魅力ある市街地を維持していく仕組みづくりが検討されています。

大堤南部地区のまちづくりにおける最大の特徴が、JR宇都宮線(東北本線)の新駅「(仮称)南古河駅」構想です。古河駅~栗橋駅間は約7.5kmと駅間距離が長く、古河駅側から約3.2km、栗橋駅側から約4.3km地点に新駅を設置する構想が以前から検討されてきました。新駅は、新市建設計画において先導的プロジェクトに位置付けられ、JR東日本への要望活動や基礎調査も実施されています。

2017年度の基礎調査では、駅舎・自由通路・昇降設備・鉄道システム整備などを含む概算事業費は約106億円と試算され、財政負担や事業スキームの構築が大きな課題となっています。一方で、周辺開発が進んだ場合の利用者数は、開業想定年で約7,300人、将来には約8,900人規模まで増加する可能性が示されており、交通需要のポテンシャルは一定程度見込まれています。


新駅が実現した場合、交通結節機能の強化に加え、交流、防災、生活サービス機能が集積する新たな都市拠点として、大堤南部地区の土地利用転換を大きく後押しすることになります。特に複合系市街地ゾーンでは、駅前市街地として住宅・商業・サービス機能の集積を図り、古河市南部における新たな玄関口形成が期待されます。
最終更新日:2026年1月22日