東京都は、交通の要衝である飯田橋駅周辺における都市基盤の充実と強化を図るため、2025年5月12日に「飯田橋駅周辺基盤整備計画(案)」を公表しました。飯田橋駅周辺基盤整備計画(案)は、2023年4月に策定された「飯田橋駅周辺基盤整備方針」を具体化するものであり、駅や周辺地域の再開発と連携しながら、快適で安全な歩行者空間の形成、災害対応力の強化、地域資源の活用など、総合的なまちづくりの推進を目指しています。現在、都はこの計画案に対する都民からの意見募集を行っており、寄せられた意見を踏まえて今後の正式な計画策定を行う予定です。
飯田橋駅周辺基盤整備計画(案)の概要
- 計画の目的と背景
老朽化、混雑、バリアフリー未対応などの課題を抱える交通結節点としての機能強化と都市基盤の再構築。 - 整備の基本方針
道路・歩行者ネットワーク改善や災害対応力強化など5つの目標に基づく段階的整備の推進。 - 重点整備対象
JR東口周辺、A2出入口付近の立体駅前広場、駅東口と文京区方面をつなぐ歩行者デッキの整備。 - 現在の課題
動線の複雑化、バリアフリーの不備、滞留空間の不足、景観の未整備、放置自転車の増加などの都市課題。 - 地域資源との連携
神田川や外濠などの自然・歴史資源と調和した景観形成と親水空間の創出。 - 段階的な整備と柔軟な対応
既存の再開発との連携と、社会状況の変化に応じた柔軟な整備の実施。 - 今後の進め方と市民参加
市民意見の反映、関係機関との調整、都市再生モデルとしての合意形成の推進。

飯田橋駅は、千代田区・新宿区・文京区の区境に位置し、JR中央・総武線や東京メトロ各線、都営大江戸線が交差する交通の要所として、多くの人が乗降・通行するエリアです。また、外堀通り・目白通り・大久保通りといった都道3路線が交差しており、道路交通の結節点としても重要な役割を担っています。
一方で、駅構内の歩行者動線は複雑で分かりにくく、混雑やバリアフリー対応の不十分さが課題とされています。さらに、災害時の避難環境や安全確保の面でも課題が多く、来街者や住民にとって安心して利用できる空間づくりが求められてきました。
こうした中で東京都は、関係自治体や交通事業者と連携し、長期的・広域的な視点から駅周辺の都市基盤の整備方針を検討してきました。今回の基盤整備計画(案)は、2023年5月に設置された「飯田橋駅周辺基盤整備推進会議」での議論を踏まえ、より具体的かつ段階的な整備の方向性を示すものとなっています。

今回の計画案では、従来の整備方針との整合を保ちつつ、都市基盤施設の必要性や配置、構造、規模、整備方法、関係者間の役割分担、さらには事業スケジュールなどが具体的に整理されています。
整備対象としては、「JR飯田橋駅東口周辺の整備」「A2出入口付近の駅前立体広場の整備」「第1期区間(文京区側~JR飯田橋駅周辺)における歩行者デッキの整備」の3つの都市基盤施設が挙げられています。
これらの施設整備は、周辺で進行中または予定されている複数の都市再開発事業と連携しながら進められる予定です。まちづくりと一体となった基盤整備が、地域全体の価値向上につながることが期待されています。

本計画では、「飯田橋駅周辺基盤整備方針」で掲げられた4つの柱を具体化するとともに、地域価値の向上という新たな視点を加え、5つの目標が設定されています。まず、快適で分かりやすい動線の確保や複層的な歩行空間の利便性向上を図ることで、道路・歩行者ネットワークの改善と強化を目指します。
次に、駅前広場や交通結節点の整備を通じて、まちの顔としての魅力を高めるなど、まちの機能の強化が図られます。また、避難経路や滞留空間の確保などによって災害に強い都市基盤を整備し、災害への対応力を高めることも重要な目標です。
さらに、神田川や外濠といった自然資源と調和した空間の創出を通じて、魅力的な景観や環境づくりを推進します。そして、地域のにぎわいや交流を生み出す都市空間の形成を促進することで、地域の価値の持続的な向上を図ります。これらの目標の実現に向けて、段階的に整備計画を深めながら、長期的な視点で事業を進めていくことが示されています。


飯田橋駅周辺には、多様な交通機関が集中しているがゆえの課題が多く存在します。東口周辺では、改札付近の歩行空間が狭く、混雑が常態化しています。地下通路やA2・A4出入口なども同様に混雑しており、バリアフリー動線の確保が課題です。
また、地上・地下・歩道橋といった多層的な歩行空間の縦の連携が弱く、利用者にとって分かりにくい構造となっており、動線の改善が求められています。歩道橋は老朽化や周辺構造物の影響により改修が困難な状況であり、根本的な再編が必要とされています。
さらに、バス乗降場やタクシー乗り場の分散配置、自動車の渋滞、放置自転車、魅力的な滞留空間の不足など、総合的な交通環境・景観面での改善が必要とされています。

飯田橋周辺には、神田川や外濠、飯田濠跡などの水辺空間や歴史的資源が存在しています。これらの地域資源を活かし、都市の魅力を高める景観づくりが求められています。
たとえば、神田川沿いには、眺望や親水性の確保を目的とした歩行空間の整備が計画されています。こうした整備により、地域住民や訪問者が川の魅力を感じられる空間が生まれ、地域の魅力向上やにぎわいの創出につながることが期待されています。
また、駅前の立体広場や歩行者デッキ、サンクンガーデンなどの整備により、駅とまちが一体となった開放的で創造的な空間を形成し、東京の都市空間の質的向上を図っていく方針です。

東京都は、今後も「飯田橋駅周辺基盤整備推進会議」を中心に、関係機関と連携しながら合意形成や調整を進めていく予定とされています。また、現在実施中の意見募集を通じて、都民からの多様な声を反映させ、計画の精緻化を図っていくものとされています。駅とまちを一体的に再構築する今回の取り組みは、飯田橋のみならず、東京全体の都市再生のモデルともなり得る重要な事業です。
最終更新日:2025年5月22日