渋谷駅とその周辺で進行中の「100年に一度」とも言われる再開発プロジェクトが、いよいよ終盤に差しかかっています。この大規模プロジェクトは、駅・広場・ビル・歩行者ネットワークを一体的に整備することで、従来の複雑でわかりにくかった駅構造や高低差のある地形といった都市課題を根本から解決するものです。再開発の完了によって、誰もが快適かつ安全に回遊できる都市空間が誕生し、渋谷は「歩いて楽しい街」「国際都市・東京の玄関口」として、新たな都市像を体現する拠点へと生まれ変わります。
渋谷駅中心地区・歩行者ネットワークの概要
1.渋谷駅の全面再編と快適な歩行空間の創出
渋谷駅を中心に、駅構造・改札・コンコースなどの再編が進行しています。これにより、鉄道や道路で分断されていたエリアが立体的に再構成され、回遊性の高い快適な歩行ネットワークが整備されます。駅自体が都市の一部として統合され、移動しやすい環境が生まれています。
2.駅と街が融合する一体的な都市づくり
「渋谷駅街区計画」において、JR東日本、東京メトロ、東急電鉄の3社と行政・民間が連携し、駅・交通・商業・公共空間が一体化した都市開発が進められています。これは、駅単体でなく“駅を核とした都市”をつくる試みであり、未来の都市モデルとして期待されています。
3.歩行者ネットワークの立体化と東西自由通路の整備
「東口スカイウェイ」や「アーバン・コア」など、複層的で立体的な歩行者動線が計画されています。これにより高低差や線路による分断が克服され、街の東西をスムーズに移動可能になります。加えて、地上に設けられる23m幅の東西自由通路は、駅周辺の回遊性をさらに高めます。
4.渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期による都市機能の拡張
2031年度に完成予定の中央棟と西棟は、2019年に開業した東棟と連携し、渋谷の新たなランドマークとなる複合施設を形成します。商業、ビジネス、文化、国際交流など多彩な都市機能が統合され、渋谷の経済と文化の拠点としてさらなる発展を目指します。
5.国際発信拠点となるパビリオンと都市文化施設
10階には「国際パビリオン(仮称)」が設けられ、海外との文化・ビジネス交流を担う空間が整備されます。さらに、4階には開放的な屋外テラスと交流スペースが設けられ、渋谷から世界へ情報を発信する新たな拠点が誕生します。
6.公共空間の再整備とにぎわいの創出
ハチ公広場や東口駅前広場、地下広場などの公共空間が再整備され、多様な人々が滞在・交流しやすい場所へと進化します。また災害対応やバリアフリー設計も強化され、日常利用と緊急時の両面に対応した公共性の高い都市空間が形成されます。
7.2034年度に全体完成、渋谷が“立体都市”として進化
再開発全体の完成は2034年度を予定しており、駅と街、地上と地下が一体となった「立体都市・渋谷」が実現します。谷地形を活かした高低差のある都市構造は“歩いて楽しい街”を実現し、世界に先駆けた次世代型都市モデルとして注目されています。

「渋谷駅街区土地区画整理事業(渋谷駅中心地区)」は、渋谷駅を核とし、その周辺エリアを対象とした都市再編のフラッグシッププロジェクトです。鉄道事業者である東急・JR東日本・東京メトロの3社が協力し、交通ターミナル機能と都市機能が高度に融合した新しい都市構造を創出します。これまで個別に整備されてきた施設を、都市基盤の再構築と同時に進行させる手法により、渋谷のまち全体を「一体化された都市空間」へと導きます。これは他都市にも応用可能なモデルケースとされており、東京の都市再生の象徴的な事例となっています。


令和12(2030)年度には、渋谷駅の改良工事と主要な歩行者動線の整備がほぼ完了する見通しです。これにより、駅の南北・東西を隔てていた鉄道や道路による分断が解消され、駅周辺が立体的かつ連続した空間へと生まれ変わります。従来は地上と地下で複雑に入り組んでいた動線が、明快で快適な歩行ネットワークに再編されることで、誰もが迷わず移動できる都市の新しい基盤が整います。エリア全体のアクセシビリティが向上し、回遊性に富んだ都市構造が完成することで、渋谷のまちは新たな段階へと移行します。

JR渋谷駅では、現在進められている駅改良工事により、駅構内の機能性と快適性がこれまでにない規模で向上します。特に注目されているのが、中央改札エリアのリニューアルと、3階フロアを活用した新たな自由通路の整備です。これにより、駅構内の回遊性が飛躍的に高まり、来訪者や通勤者にとってより直感的で使いやすい構造が実現されつつあります。新たに設けられるコンコースは、最大で20メートルを超える広さを誇り、日常的な移動の利便性だけでなく、大規模災害時の防災面や安全性にも配慮して設計されています。視認性や照明、安全性にも配慮が行き届いており、駅そのものが公共性の高い都市インフラとして生まれ変わろうとしています。
また、2024年7月21日には、これまで駅南側に位置していた新南改札が、新たに建設された新駅舎内へと移転し、供用を開始しています。新駅舎は国道246号の南側、線路上空に建設された鉄骨造6階建ての構造で、駅としての機能と都市開発の中核的な拠点が融合した先進的な施設です。3階には改札、券売機、トイレ、店舗、エスカレーター、エレベーターなどが設けられ、山手線・埼京線の両ホームへ直接アクセスが可能となる導線が整備されました。なお、従来の新南改札は同日深夜に閉鎖されており、駅の動線は新駅舎を中心に再構成されていきます。


新南改札の位置する新駅舎の延床面積は約5,300㎡におよび、上層階には約3,000㎡規模の賃貸オフィスも整備され、2026年度の全面開業に向けて、コンコースやオフィスフロアの整備が段階的に進められています。この新駅舎は、東日本旅客鉄道(JR東日本)、渋谷駅桜丘口地区市街地再開発組合、東急株式会社、そして渋谷区が連携して推進している大規模再開発の一環であり、駅とまちを高度に融合させる先進的な取り組みです。
さらに、中央改札からハチ公口や宮益坂方面、さらには渋谷スクランブルスクエア、渋谷ストリーム、渋谷サクラステージといった周辺施設との立体的な接続も強化されました。これにより、駅を起点とした人の流れが一層スムーズになり、渋谷駅が名実ともに「都市の中心」としての役割を担うことになります。今後も段階的に新機能が追加されることで、渋谷駅はより使いやすく、より安全で、より多機能な都市の拠点へと進化していくのです。

従来、渋谷駅は周囲の高低差や交通インフラによって、東西・南北間の移動が制限されていましたが、新たに整備される「東口スカイウェイ(仮称)」や「西口3階上空施設(仮称)」により、駅を中心にした立体的な回遊動線が実現されます。これらの施設は、2階・3階・4階を活用した多層構造を形成し、デッキ上で駅や周辺施設と直接接続されることで、階段や信号を使わずスムーズに移動できる都市空間が誕生します。渋谷の地形的特徴を活かした設計により、都市の立体的な魅力が一層引き立てられます。


駅の1階地上部には、南北方向に走る線路や道路により遮られていた東西方向の歩行者動線が、大幅に改善されます。JRハチ公改札前と南改札前の2か所に、地上レベルでの幅広の東西自由通路が整備されることで、行き交う人々が直感的に動けるようになります。この通路は最大で23mもの幅を持ち、日常の混雑緩和に加えて、大規模イベント時にも柔軟に対応できるよう設計されています。また、視認性と照明にも配慮されたデザインとなっており、夜間でも安全に利用できる都市空間が形成されます。

現在建設が進む「渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期」は、中央棟および西棟で構成され、2031年度の完成を予定しています。すでに開業済みの東棟と接続されることで、駅直結の大規模複合商業施設が誕生します。各棟のフロアごとにテーマ性のある空間が展開され、1フロアあたり最大6,000㎡という広大な売場面積が確保されます。これにより、買い物や食事、イベントなど、様々な都市機能がワンストップで享受できる場所として、多くの人々を惹きつけるランドマークとなることが期待されています。

中央棟の10階部分には、世界との文化的・経済的な接点を創出する「パビリオン(仮称)」が整備される予定です。この空間では、各国の大使館や文化機関と連携し、展示・イベント・交流会などが行われる予定で、グローバル都市・東京の文化的な厚みを象徴する場となります。建築デザインは世界的建築家ユニット・SANAA(妹島和世氏+西沢立衛氏)が担当し、都市景観と調和した透明感ある構造が特徴です。渋谷の新たな展望台・情報発信拠点として、国内外の来訪者を迎え入れます。

渋谷の歩行者動線は、今後もさらに高度化していきます。2033年度には中央棟4階とハチ公広場とを縦に結ぶ「アーバン・コア」が完成し、複数階を一気に接続する移動拠点として機能します。さらに、屋外テラスを兼ね備えた「4階パビリオン(仮称)」も整備され、渋谷のまちを俯瞰しながら休憩や観賞ができる空間が加わります。これにより、渋谷駅を中心に、地上から上層階まで自由自在に移動できる“立体都市”としての姿が具現化されます。


宮益坂口に位置する東口広場と、地下の駅直結広場も、現在の機能から大幅にアップグレードされます。東口広場は都市の顔として、広々としたオープンスペースと植栽・ベンチなどの滞留空間を備えた設計となり、人々が安心して集える「まちの玄関口」として整備されます。一方で地下広場は、地下鉄各路線との結節点として利便性を高めながら、避難経路としての役割も果たすことを想定し、広さ・明るさ・耐震性を兼ね備えた安心・安全な空間となります。


渋谷のシンボルであるハチ公広場も、今回の再整備により大きく生まれ変わります。駅と直結した立体的なアクセスが確保され、より多くの人がスムーズに行き交えるようになります。また、観光客にも人気のハチ公像の位置についても、広場のデザインと共に再検討されており、今後はより多様なイベントやパフォーマンスが可能な広場空間として展開される予定です。都市における“公共空間の価値”を再定義する先進事例として、注目を集めるエリアになるでしょう。


渋谷の都市構造の特徴は、鉄道・高速道路・渋谷川といった要素が複雑に絡み合う「谷構造」にあります。これまで地形による分断が課題とされてきましたが、新たに整備される立体歩行者ネットワークによって、谷をむしろ“都市的な個性”として活用する戦略がとられています。空中通路やエレベーター、エスカレーター、多層式デッキなどを活かし、地形の起伏に合わせて移動が楽しめる都市体験を提供します。谷を活かした“歩いて面白い都市”としての新たな価値が渋谷に加わります。

最終的なプロジェクトの完成は令和16(2034)年度を予定しており、駅・広場・商業施設・歩行者ネットワークといった各種インフラがすべて結びつくことで、渋谷駅周辺は一体化した都市空間として完成を迎えます。この間も工事は段階的に進行し、駅機能を止めることなく運用を継続。完成後は、居住者・通勤者・観光客・外国人が安全で快適に利用できる国際的な都市拠点となり、「多様性と融合の象徴」として、次世代の東京をけん引するエリアとなることが期待されています。
最終更新日:2025年6月22日