熊本県は、阿蘇くまもと空港アクセス鉄道に関する最新の調査・検討結果を公表しました。今回の公表では、概算事業費が約610億円に達する見込みであることが示され、物価や人件費の高騰を受けて、前回公表時の想定からおよそ200億円の増加となりました。一方で、鉄道運行の具体化にあたり快速列車を新設し、熊本駅から空港までの所要時間を大幅に短縮できる見通しとなったことから、需要予測は前回の4,900人/日から6,500人/日に増加しました。
これにより、費用便益比(B/C)は30年で1.21、50年で1.43と改善し、国の整備基準を上回る水準に到達しています。運行形態についてはJR九州と協議を重ねた結果、上下分離方式を採用し、鉄道施設を県の第三セクターが整備・保有、JR九州が運行を担う仕組みが決定しました。加えて、豊肥本線の輸送力強化工事を実施し、効率的なダイヤ編成を行うことで、空港アクセスの利便性を最大限に高める方針です。開業は2034年度末を目指し、国の補助制度やJR九州の負担金を組み合わせた財政スキームの検討が進められます。
→熊本県 空港アクセス鉄道に係る調査・検討結果について(概算事業費、需要予測、B/C等)
→熊本県 新大空港構想を策定しました
阿蘇くまもと空港アクセス鉄道の概要
- 事業費の増加
概算事業費約610億円への上昇、物価・人件費高騰や設計精度向上による増額 - 需要予測の上方修正
快速列車導入による利便性向上と、1日6,500人への利用者数増加見込み - 費用便益比の改善
需要増加を反映したB/Cの30年1.21、50年1.43への改善 - 運行方式の決定
第三セクター保有とJR九州運行による上下分離方式の採用 - 豊肥本線の輸送力強化
行違い設備整備や同時進入化工事によるダイヤ効率化 - 所要時間の短縮
快速運行による熊本駅―空港間最短39分への短縮 - 開業時期と財政スキーム
2034年度末開業目標と、国補助制度・JR九州負担金を組み合わせた財源確保

阿蘇くまもと空港へのアクセスは、従来からバスやタクシーといった道路交通に依存してきました。しかし、熊本都市圏では朝夕のラッシュ時に慢性的な渋滞が発生し、空港到着の定時性が十分に確保できない課題が浮き彫りとなっています。国際線の拡大や、台湾の半導体大手TSMCをはじめとする半導体関連産業の集積が進むなかで、今後の空港利用者数は大幅に増加すると見込まれています。
こうした環境変化を受け、熊本市中心部と空港を直結する鉄道の整備は、熊本都市圏全体の利便性を飛躍的に高める施策と位置づけられています。さらに、空港アクセス鉄道は「シリコンアイランド九州」の実現を掲げる国家プロジェクトにとっても不可欠な基盤整備であり、企業活動や国際競争力の強化に直結する重要インフラとされています。

運行方式については、これまで「上下一体型の委託方式」と「上下分離方式」が比較検討されてきました。今回の協議を経て、最終的に上下分離方式が採用されることになり、鉄道施設は熊本県が設立する第三セクターが保有し、運行はJR九州が豊肥本線と一体的に担う体制が整えられます。この方式により、施設管理と運行を分担しつつ、効率的で安定的な鉄道運営を可能にすることが期待されています。
また、空港アクセス鉄道の整備と並行して、豊肥本線のダイヤ改正や行違い設備の強化を実施することで、快速列車の設定が可能となります。これにより熊本駅から空港まで最短39分で結ばれ、定時性・速達性の向上が実現する見通しです。熊本都市圏の通勤・通学需要や観光需要の取り込みにもつながり、鉄道全体の利便性が高まると見込まれます。


最新の調査では、空港アクセス鉄道の整備に約610億円、豊肥本線の輸送力強化に約60億円が必要と見込まれ、総額は670億円規模となります。前回公表時からの事業費増加要因としては、物価や人件費の上昇(約160億円増)、設計精度の向上による構造物の精査(約30億円増)、さらには車両費や運行システム改修費(約10億円増)が挙げられています。
また、豊肥本線側でも、快速運行を実現するために行違い設備の整備や同時進入化工事が必要となり、これに約60億円が計上されています。財源確保については、国の空港アクセス鉄道整備補助制度を最大限に活用する方針であり、さらにJR九州からも既存路線の増収分を反映させた負担金が総事業費の3分の1を上限として計上される予定です。こうした多層的な財政スキームを構築することで、県の財政負担を軽減しながら事業を着実に進める方針です。

需要予測の結果、2035年時点での利用者は一日あたり約6,500人と算定され、前回調査時の約4,900人を大きく上回りました。この増加は、TSMCをはじめとする企業の新規立地や、沿線自治体の住宅開発計画に基づく人口増加を反映したことに加え、県独自のアンケート調査により「渋滞に左右されず定時に到着できる鉄道の価値(時間信頼性)」が需要モデルに盛り込まれたことが大きな要因です。
また、豊肥本線の輸送力強化を踏まえた快速運行の導入により、熊本駅から空港までの所要時間が約9分短縮される点も、需要増加に寄与しています。これらを踏まえた費用便益比(B/C)は30年間で1.21、50年間で1.43となり、前回の1.03から大幅に改善しました。国が予算化の目安とする「1.0」を上回ったことで、事業の実現可能性と経済合理性がより強固に裏付けられたといえます。
最終更新日:2025年10月2日

