新空港線(蒲蒲線)は、東急多摩川線矢口渡駅付近から地下化し、JR・東急蒲田駅の地下、京急蒲田駅付近の地下を経由して、将来的には京急空港線大鳥居駅方面への接続を視野に入れた新たな鉄道路線構想です。この新空港線について、鉄道施設を整備する羽田エアポートライン株式会社と、営業主体となる東急電鉄株式会社が申請していた「速達性向上計画」が、令和7年10月3日に国土交通省から認定され、第一期整備事業(矢口渡駅・蒲田駅間から京浜急行電鉄本線・空港線京急蒲田駅付近)の事業化が正式に決定しました。
新空港線は、JR蒲田駅・東急蒲田駅と京急蒲田駅という、約800m離れた二つの主要ターミナルを鉄道で直接結ぶ「ミッシングリンク」を解消する役割を担います。これにより、蒲田地区における東西の分断構造が是正され、羽田空港と都心・副都心、さらには埼玉県方面を結ぶ新たな広域鉄道ネットワークが形成されることになります。
また、本路線は単なる交通インフラ整備にとどまらず、「蒲田駅周辺再編プロジェクト」と一体的に進められる点が大きな特徴です。自由通路・駅前広場・周辺街区を含めた「駅まち空間」の再構築により、交通結節機能の強化と都市のにぎわい創出を同時に図る方針が示されています。新空港線の事業化決定は、蒲田が地域拠点から広域拠点へと進化するための重要な転換点となります。
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→羽田エアポートライン株式会社/東急電鉄株式会社 新空港線整備に向けた速達性向上計画の認定を受けました
→羽田エアポートライン株式会社/東急電鉄株式会社 新空港線整備に向けた速達性向上計画の認定を申請
新空港線整備・蒲田駅周辺再編プロジェクトの概要
1.新空港線(蒲蒲線)の事業化決定
国土交通省による速達性向上計画の認定を受けた第一期整備事業の正式決定。
構想段階から実行段階へ移行した都市鉄道プロジェクトの本格始動。
2.蒲田駅と京急蒲田駅を結ぶミッシングリンク解消
約800m離れた二大ターミナルを地下鉄道で直結する新たな交通軸の形成。
蒲田地区における東西分断構造の解消と移動利便性の向上。
3.羽田空港と都心・副都心を結ぶ広域ネットワーク
東急東横線・東京メトロ副都心線との直通を見据えた空港アクセス強化。
都心・副都心から羽田空港への速達性と利便性の向上。
4.鉄道整備と一体となった蒲田駅周辺再編
新空港線を契機とした蒲田駅周辺再編プロジェクトの本格化。
自由通路・駅前広場・周辺街区を含めた「駅まち空間」の再構築。
5.にぎわい創出と地域経済の活性化
新たな人の流れによる商業・業務・交流機能の集積促進。
蒲田を通過点から滞在型都市拠点へ転換するまちづくり。
6.環境負荷低減と防災機能の向上
公共交通利用促進によるCO₂排出量削減への貢献。
災害時の代替ルート確保による都市の輸送冗長性強化。
7.地域拠点から広域拠点へ進化する蒲田
鉄道と都市再編が連動する持続可能な都市構造の形成。
国内外をつなぐ玄関口としての蒲田の新たな都市像。

新空港線は、交通政策審議会答申第198号において、「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークを構成するプロジェクト」として位置付けられてきました。構想自体は以前から存在していましたが、事業採算性や技術的課題、整備主体の整理などが課題となり、長らく具体化には至っていませんでした。
2025年10月に都市鉄道等利便増進法に基づく「速達性向上計画」として国の認定を受けたことで、国・自治体・鉄道事業者が役割分担を明確にした事業スキームが確立しました。鉄道施設を第三セクターが整備し、鉄道事業者が営業を担う上下分離方式の採用は、近年の都市鉄道整備における現実的かつ持続可能な手法といえます。
第一期整備では、矢口渡駅付近からJR・東急蒲田駅を経由し、京急蒲田駅付近までの約0.8km区間が対象となります。東急多摩川線と新空港線が直通運転を行うことで、蒲田地区における鉄道ネットワークの断絶が解消され、都市構造そのものを更新する効果が期待されています。

新空港線整備の最大の効果は、移動利便性の大幅な向上です。これまで徒歩やバスに頼らざるを得なかった東急蒲田駅と京急蒲田駅間の移動が、地下鉄道によって短時間かつ安定的に行えるようになります。
駅間移動は、段差のない完全なバリアフリー動線で構成される予定です。高齢者や障がいのある方、ベビーカーや大型荷物を持つ利用者にとっても、安心して利用できる移動環境が整います。天候の影響を受けにくい点も、日常利用だけでなく、空港アクセス路線としての価値を大きく高めます。
さらに、東急東横線および東京メトロ副都心線との相互直通運転を通じて、渋谷・新宿三丁目・池袋といった都心・副都心エリアから、乗り換え回数を抑えて蒲田・羽田空港方面へアクセスできるようになります。中目黒や自由が丘、武蔵小杉といった主要拠点と蒲田が直結することで、蒲田の都市的な位置付けは大きく変化します。

新空港線の開業は、人の流れそのものを変える契機となります。鉄道ネットワークの強化によって、蒲田を経由する移動が増加し、駅周辺の商業・業務・交流機能への需要が高まることが見込まれています。
大田区は「鉄道と魅力的なまちづくり宣言」を掲げ、鉄道整備を起点とした都市活性化を重要な政策テーマとしています。新空港線はその象徴的なプロジェクトであり、沿線や駅周辺では、新たな商業施設、オフィス、宿泊施設、交流拠点などの立地が促進される可能性があります。
特に、羽田空港に近い立地特性を生かしたビジネス交流や観光需要の取り込みは、蒲田の新たな成長分野となります。鉄道整備によって「通過点」から「滞在するまち」へと転換することで、地域経済への波及効果は中長期的に拡大していくと考えられます。


公共交通の利便性向上は、自動車交通から鉄道への転換を促し、CO2排出量の削減に寄与します。新空港線は、大田区が掲げる「ゼロカーボンシティ」の実現に向けた、実効性のあるインフラ施策の一つとして位置付けられています。
また、複数路線が交差・接続する蒲田エリアにおいて、新たな鉄道路線が加わることは、災害時の輸送冗長性を高める効果を持ちます。いずれかの路線が被災した場合でも、代替ルートを確保しやすくなり、帰宅困難者対策や緊急輸送の面でも重要な役割を果たします。
地下構造物の整備にあたっては、浸水対策や耐震性能の確保が前提となるため、都市の防災力そのものを底上げする効果も期待されています。

新空港線は、一度に構想区間の全線を整備するのではなく、段階的に整備を進める計画となっています。第一期整備では、矢口渡駅付近から京急蒲田駅付近までを対象とし、将来的に第二期整備として大鳥居方面への延伸が検討されます。
第一期整備の総事業費は約1,248億円とされており、開業目標は令和20年代前半(残工事含めて2042年3月整備終了予定)です。上下分離方式の採用により、自治体と鉄道事業者の負担バランスを取りながら、事業リスクを抑えた進め方が可能となっています。
一方、第二期整備では、東急線と京急線の軌間の違いという技術的課題が残されています。フリーゲージトレインや三線軌条、対面乗換方式など、複数の選択肢を比較検討しながら、実現可能性を慎重に探っていく必要があるとの課題が挙げられています。


新空港線の整備と並行して進められるのが、「蒲田駅周辺再編プロジェクト」です。対象区域は蒲田駅を中心とする概ね半径200m圏で、駅舎、駅前広場、周辺街区を含めた「駅まち空間」を一体的に再構築する方針が示されています。
東西自由通路や北側連絡通路、駅前広場デッキの整備により、これまで分断されがちだった駅東西の回遊性が大きく改善されます。歩行者動線を重視した空間構成は、ウォーカブルなまちづくりを象徴する取り組みといえます。
さらに、みどりや滞留空間を取り入れた駅前空間の創出により、蒲田駅周辺は単なる通過点ではなく、人が集い、滞在し、交流する都市拠点としての機能を強化していくものとされています。


新空港線と蒲田駅周辺再編プロジェクトは、交通インフラと都市空間を同時に更新する取り組みです。「つながる」「あつまる」「ひろがる」という基盤整備の考え方に、「駅まち一体」「ウォーカブル」「公民連携」という視点を重ねることで、蒲田は次のステージへ進もうとしています。
日常生活を支える地域拠点でありながら、国内外と人を結ぶ広域拠点としての役割を担うことが、今後の蒲田に求められる姿です。新空港線の事業化決定は、その未来像を現実へと近づける大きな一歩であり、鉄道とまちづくりが相互に作用しながら成長していく「未来の蒲田」を象徴するプロジェクトといえます。
最終更新日:2025年12月16日

