岐阜県は2025年9月19日、岐阜圏域のまちづくりに関する新たな方針を公表しました。県都岐阜市を核とした地域の活性化を目指し、かつての賑わいを取り戻す取り組みとして、新しい交通システムとして次世代型路面電車(LRT)の導入を本格的に検討する方針です。LRTは、既存道路を活用して低床式車両によるバリアフリー対応や定時性・安全性の向上を図る次世代型の公共交通手段であり、中心市街地の回遊性向上や地域全体の賑わい創出を狙っています。県は運行開始を10年後を目標に、地元商店街や住民との協議を進めながら、現実的で持続可能な計画を段階的に構築していく構想です。
岐阜県次世代型路面電車(LRT)導入の概要
1. 岐阜圏域のまちづくりの目的
「安心」と「ワクワク」にあふれ、人やモノが集まる地域の創出を将来像とする岐阜県のまちづくり。県都岐阜市を核とした地域全体の活性化の推進。中心市街地の回遊性向上と地域の賑わい創出の重点課題。
2. 10の具体的目標
若者や女性の活躍の場の整備。子育て支援環境の充実。高齢者や障がい者の活動支援体制の構築。災害に強いインフラ・医療・防災システムの整備。持続可能な農林業とクリーンエネルギー供給。地域産業の価値向上と新ビジネス創出。教育・文化・スポーツの充実。福祉・教育・商工・環境・まちづくり施策の総合的な連携。
3. 岐阜市の現状と課題
かつての商業・文化の拠点としての岐阜市。郊外大型モールへの客流出による中心市街地の集客力低下。百貨店や大型商業施設の閉店による空洞化の進行。柳ケ瀬や岐阜城周辺、長良川鵜飼など歴史・文化拠点の整備。拠点を有機的に結ぶ線としてのまちづくりの必要性。
4. LRT導入の意義
低床式車両によるバリアフリー対応と定時性・安全性に優れた次世代型交通システム。車中心の交通からの脱却。中心市街地への人の流れ創出。周辺地域とのアクセス向上。持続可能なまちづくりの重要ツールとしての位置付け。
5. 想定ルートと対象エリア
岐阜羽島駅・岐阜羽島ICを起点とする広域地域。岐阜ICや岐阜大学周辺を終点とするエリア。岐阜駅や市中心部を結ぶ複数ルートの想定。中心市街地の環状線を含む周遊型ルート計画。
6. 整備方針と財政面
土地買収を極力避け、既存の県道や道路インフラを活用する整備方針。運行開始を10年後に設定した長期計画。財政負担の軽減策。県庁内プロジェクトチームによる計画推進。地元商店街や住民との連携体制。
7. 導入効果と今後の課題
幅広い世代の移動手段確保。中心市街地の活性化。地域経済や商業振興の促進。環境負荷低減と景観整備。名鉄高架化や市街地再開発との調整課題。費用面・交通体系との整合性の検討課題。地元理解の醸成と段階的計画具体化。

岐阜県は将来像として、「安心」と「ワクワク」にあふれ、人やモノが集まる地域の創出を掲げています。この将来像を実現するため、県は10の具体的な目標を設定しています。
若者や女性が能力を発揮できる働き方や職場環境の整備、子どもを産み育てやすい社会環境の整備、高齢者や障がい者が活躍できる場の確保、災害に強いインフラや医療・防災システムの充実、持続可能な農林業やクリーンエネルギーの供給、地域産業の価値向上や新たなビジネスの創出、教育の質向上、文化・芸術・スポーツなどの生活の質向上といった多岐にわたる施策が含まれます。これらの目標は福祉、教育、商工、環境、まちづくりなど、複数の分野の施策を組み合わせることで相互に作用し、岐阜圏域全体の持続的な発展を促進する狙いがあります。


岐阜市は明治期から昭和期にかけて鉄道や自動車の普及により買物客や劇場への来訪者で賑わい、「商いのまち」として発展しました。戦後は問屋街を中心に繊維産業が栄え、地域経済の核として機能しました。しかし近年では、郊外に大型ショッピングモールが次々に建設され、中心市街地の集客力は急速に低下。令和6年7月には県内最後の百貨店「高島屋」が閉店し、かつての賑わいは失われつつあります。
一方で、柳ケ瀬の「金公園」や「グラッスル35」、岐阜城周辺の「岐阜城楽市」などの新たな拠点整備が進み、長良川鵜飼や金華山など歴史的・文化的資源も大切に保存されています。こうした「拠点」を有機的に「線」で結び、「面」として岐阜圏域全体に賑わいを広げることが、中心市街地の再生や地域活性化に欠かせない課題となっています。


岐阜県は地域の交通利便性向上と中心市街地の回遊性向上を目的に、次世代型路面電車(LRT)の導入を本格的に検討しています。LRTは低床式車両(LRV)を用い、停留所での乗降が容易でバリアフリーに優れ、輸送効率や定時性、安全性に優れた次世代型の公共交通システムです。

既存道路を活用して新たな用地買収を抑えることで、財政負担を軽減しつつ10年後の運行開始を目標に長期的な整備計画を構想しています。また、県庁内にプロジェクトチームを設置し、地元商店街や住民、関係団体との協議を通じて実現可能性を探り、中心市街地の回遊性向上や周辺地域とのアクセス強化に向けた具体策を検討しています。
LRTの検討ルートは以下の3ルートが挙げられています。
・岐阜羽島駅および岐阜羽島インターチェンジ~岐阜県庁および西岐阜駅付近~岐阜市中心部
・岐阜インターチェンジおよび岐阜大学周辺~岐阜市中心部
・岐阜市中心部の環状線(岐阜駅~長良川・岐阜城周辺)

LRTの導入により、岐阜市を中心とした地域では幅広い世代の移動手段が確保され、公共交通の利用促進が期待されます。沿線では歩行者中心の回遊性の高い「歩くまち」づくりが進み、中心市街地への人の流れが増加するとともに、地域経済や商業の活性化が見込まれます。さらに、環境負荷の低減や騒音・振動の抑制、都市景観との調和など、持続可能なまちづくりにも資する計画です。


一方で、名鉄高架化や市街地再開発など既存プロジェクトとの費用・交通調整が課題であり、岐阜市は慎重な姿勢を示しています。県は、財政面や既存交通との整合性など多方面の課題を整理するとともに、地元との理解醸成や協力を重視しながら、段階的に計画を具体化していく方針です。過去に廃止された路面電車の経験や海外のLRT導入事例を参考に、持続可能で利便性の高い交通システムを岐阜県内に定着させる狙いがあります。
最終更新日:2025年9月19日

