静岡市は2025年6月、JR「東静岡」駅周辺に広がる「東静岡地区」の未来を見据えた新たな都市像を描く「東静岡地区まちづくり基本構想(案)」を発表しました。少子高齢化や人口減少、気候変動といった社会課題に対応しつつ、文化・スポーツ・教育といった多様な都市機能を統合するこの構想は、行政、市民、民間が一体となって推進する「共創」によるまちづくりを掲げています。新アリーナや新県立中央図書館といった大型プロジェクトを起点に、交通や住環境も含めた総合的な都市整備が進められる予定です。
→静岡市 「東静岡地区まちづくり基本構想(案)」に関する意見募集(パブリックコメント)
東静岡地区まちづくり基本構想(案)の概要
1. 構想の目的
東静岡地区を静岡市全体の交流・滞在の拠点と位置づけ、文化・スポーツ・教育が融合した持続可能で魅力ある都市空間を共創により形成する。
2. 社会的背景
少子高齢化・人口減少・気候変動などの社会課題を背景に、将来のまちの担い手不足や都市の活力低下への対策が求められている。
3. 現在のまちの特徴
東静岡地区は、鉄道アクセスが良好で大型施設(グランシップ、マークイズ)も集積。今後、新アリーナや県立中央図書館の整備が進む予定。
4. めざす将来像
「人が集い、学び、楽しむまち」として、文化・スポーツ・教育を核に、多様な世代・人々が交流・滞在できる都市へ進化。
5. 5つの基本方針
都市機能の融合、魅力ある住環境の創出、交通の利便性向上、環境配慮、地域と連携した安心なまちづくりを柱とする。
6. 主なプロジェクト
新アリーナ・中央図書館の整備を中心に、既存施設との連携やソフト施策の導入も含め、面的かつ多段階的に開発を進める。
7. 推進体制と展開方法
行政、市民、民間など多様な主体が連携し、段階的かつ柔軟に役割分担しながら構想を具体化していく官民連携モデルを採用。

この構想は、静岡市の南北・東西を結ぶ結節点であり、葵・駿河・清水の3区の連携拠点でもある東静岡地区を、未来につながる魅力あるまちとして再構築することを目指しています。まちづくりは単なる施設整備にとどまらず、市民の生活や地域文化の質を高める取り組みであり、社会全体の知恵と力を結集する「共創」の精神に基づいて推進されます。鉄道利便性の高い立地に加え、アリーナや図書館など多機能施設を備えることで、東静岡を市内外から人々が訪れる交流・滞在の拠点へと育てる計画です。

東静岡地区は、1990年代以降の都市開発により、住宅・商業・文化施設が集積した新興都市エリアとして発展してきました。現在ではグランシップやマークイズ静岡などの大型施設を中心に賑わいを見せており、さらに新アリーナと県立中央図書館の建設も控えています。
一方で、静岡市全体では人口減少と少子高齢化が進行しており、特に2050年には総人口が約49万人にまで減少するという見通しもあります。こうした状況を打開し、地域の持続可能性を確保するために、今後のまちづくりには定住人口と交流人口の両面からの戦略が求められています。


基本構想が描く将来像は、「人が集い、学び、楽しむ都市空間の創出」です。文化・スポーツ・音楽・教育など多彩な分野が連携し、単なる住む場所としてではなく、滞在し、体験し、交流する場所へと進化することが目指されています。北口はアリーナを中心にしたスポーツ・音楽の発信拠点、南口は図書館や既存のグランシップを活用した文化・教育の中核として位置づけられます。この2つの軸が有機的に連携することで、市内外から多様な人々を引きつける魅力ある都市機能を実現しようとしています。

この構想では、将来像の実現に向けて5つの方針が示されています。まず、アリーナや図書館を中核とした文化・スポーツの拠点形成が挙げられます。これらの施設を軸に、イベントやコンテンツを充実させることで地域全体の活性化を図ります。次に、静岡駅と清水駅を結ぶ交通ネットワークを活用し、広域から人々を呼び込む交流と賑わいを創出していく方針です。
さらに、子育て支援施設の整備や教育機関との連携を通じて、若者や子育て世代が定住しやすい魅力あるまちづくりを推進します。加えて、緑地空間の確保や災害に強い都市インフラの整備を通じて、安心・安全なまちを構築することにも注力します。そして最後に、行政主導ではなく、市民、企業、大学など多様な主体が連携して運営する共創型の仕組みが重視されています。

まちづくりの中心となるプロジェクトとして、いくつかの重点的な整備計画が進められています。最も象徴的なのが、2030年頃の完成を目指す新アリーナの整備です。このアリーナは最大1万人を収容できる多目的施設として設計され、プロスポーツの試合や音楽ライブ、大規模イベントの開催を通じて地域経済の活性化にも貢献します。
また、2029年頃の完成を目指す新県立中央図書館も重要な柱であり、地域の知的資源を活用する拠点として教育・学習・文化交流の核となることが期待されています。並行して、交通インフラの改善や渋滞緩和策、モビリティの多様化も図られ、自転車やバスなどを利用しやすい環境づくりが進められます。さらに、観光客や住民が快適に回遊できるよう、歩行者空間や案内サインなどの整備も進みます。加えて、商業施設や業務機能の導入を促進し、イベントによる経済効果が地域全体に波及するよう民間投資の呼び込みも行われる予定です。

構想の推進にあたっては、行政主導ではなく、市民・大学・事業者など多様な主体がパートナーとして参画する体制が重視されています。すでに複数回にわたり「まちづくり協議会」が開催されており、住民意見や若者の視点を取り入れた計画立案が進められてきました。今後は、各プロジェクトの実行段階に応じて適切な役割分担を行い、段階的にまちの機能と価値を高めていくスキームが整備されます。また、土地利用の見直しや都市機能の誘導など、法制度との連携も図りながら、長期的かつ柔軟に構想を実現していく方針です。
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最終更新日:2025年6月11日