名古屋北東部のターミナル駅・大曽根駅前で、東横インによる新たなビジネスホテル計画「(仮称)大曽根駅前ビル新築工事」が浮上しました。計画地は大曽根駅の南西側約150mの「三井のリパーク 大曽根駅前 駐車場」跡地に位置しており、2026年5月初旬着工、2027年10月竣工予定とされ、大曽根駅前では初の本格的ビジネスホテルとなります。
一方、大曽根駅周辺では、1960年代から長期にわたり「大曽根地区総合整備事業」が進められ、土地区画整理、駅前広場整備、商店街再開発、防災対策などが段階的に実施されてきました。近年もJR中央本線や名鉄瀬戸線大曽根駅の高架下商業施設刷新や、地下鉄名城線大曽根駅へ至る大階段の吹き抜け空間整備などが続いており、今回のホテル計画は、こうした再整備の流れの中で、駅前機能の補完と滞在拠点の形成という新たな役割を担う動きとして注目されています。
大曽根東横イン計画と大曽根エリアの概要
1.大曽根駅前における新規ホテル計画の浮上
駅南側約100mの商業地域に東横イン14階建て高層ホテルを新築する計画。
駅前では初の本格的ビジネスホテルとなる宿泊機能の新規立地。
2.交通結節点としての大曽根駅の高い拠点性
JR・名鉄・地下鉄・ガイドウェイバスが集まる名古屋北東部の主要ターミナル。
通勤通学に加えイベント来訪や乗換需要を抱える広域交通拠点。
3.長期継続してきた大曽根地区総合整備事業の背景
1960年代から続く土地区画整理と市街地再開発を組み合わせた面的整備。
防災性向上と副都心形成を目的とした段階的都市更新の歴史。
4.駅前広場・地下施設一体整備による防災機能強化
バスターミナル、地下駐車場、地下街、雨水調整池を統合した基盤整備。
集中豪雨対策を含む都市インフラ高度化の象徴的事例。
5.商店街再編と回遊性低下という再開発の課題
オープンモール型再整備による街路景観の刷新と建替促進。
大規模一体開発不成立による動線分断と商業集積力の低下。
6.近年進む駅施設更新と交通利便性の向上
高架下商業施設刷新や改札増設、バリアフリー動線の改善。
安全性向上設備整備を含む継続的な駅機能アップデート。
7.通過型ターミナルから滞在拠点への機能転換の兆し
宿泊機能導入による来訪者滞留時間の増加と夜間人口の創出。
将来再開発や商業再生への波及効果が期待される拠点形成。

計画名は「(仮称)大曽根駅前ビル新築工事」で、東横インが名古屋市北区大曽根三丁目に地上14階建てのビジネスホテルを新築します。建物は鉄骨造・延床面積4,217.25㎡、高さ43.90m(看板含め47.40m)で、敷地面積676.62㎡のうち335.87㎡が建築面積となる計画です。
建設地は現在コインパーキングの三井のリパーク 大曽根駅前 駐車場として利用されており、大曽根駅から徒歩約2分の立地となります。名古屋市内に8店舗を展開する同社にとって中区・中村区以外の区では初出店であり、大曽根駅前では初のビジネスホテルとなる点が特徴です。鉄道・地下鉄・ガイドウェイバスが集まる交通結節点であり、バンテリンドーム ナゴヤなどの大規模集客施設がありながら宿泊施設が不足していたエリアに、明確な需要を見込んだ立地戦略といえます。

大曽根地区総合整備事業は、木造住宅密集地の防災性向上、国道19号など幹線道路の拡幅による交通渋滞の緩和、商業・業務機能の集積を目的として進められた大規模都市再開発です。対象面積は約130haに及び、土地区画整理を基盤としつつ、市街地再開発事業、優良建築物等整備事業、商店街再開発など複数の手法が組み合わされました。
1960年代に都市計画決定され、仮換地指定、商業施設整備、駅前広場整備などを経て、2000年代にかけて段階的に完成。総事業費は民間事業も含むため全体像は不明確ですが、土地区画整理事業だけでも約436億円規模とされています。

総合整備事業の象徴的施設が、大曽根西駅前広場と地下施設群です。地上にはバスターミナル機能を備えたロータリーが整備され、地下には地下街「オズガーデン」、公共駐車場、そして大規模雨水調整池が一体的に配置されました。
雨水調整池は最大約34,000㎥の貯水能力を持ち、2006年の集中豪雨時にも周辺で浸水被害が発生しなかったことから、防災インフラとして高く評価されています。単なる交通結節点整備にとどまらず、都市型水害への対策を組み込んだ点は、大曽根再整備の大きな成果といえます。


大曽根商店街と大曽根本通商店街は、かつて名古屋有数のアーケード商店街として賑わいましたが、区画整理とともにオープンモール型へ再編され、「オゾンアベニュー」として再整備されました。歩行者専用道路の拡幅や景観デザインの統一が図られ、複数の地権者共同ビルも優良建築物等整備事業により建設されています。
しかし、街区一体型の大規模再開発や駅ビル構想が合意形成の難しさから実現せず、OZモールとの動線分断や駅前広場との距離感が生じたことで、結果として人通りが減少し、商業集積の形成という当初目標は十分に達成されたとは言い難い状況が続いています。防災・交通面の改善と引き換えに、回遊性と商業連続性、そして多くの人々が行き交う賑わいが損なわれた点は、再開発評価における大きな論点となっています。


近年の動きとしては、名鉄瀬戸線大曽根駅高架下商業施設が「μPLAT大曽根」として2020年に刷新され、改札機増設やバリアフリー動線の改善も進められています。地下鉄名城線では可動式ホーム柵の設置など安全性向上が図られ、交通結節点としての機能更新は継続中です。
こうした中での東横イン進出は、「通過型ターミナル」から「滞在拠点を持つ駅前」への性格転換を促す動きとも捉えられます。バンテリンドーム ナゴヤでのイベント利用、志段味方面からの乗換需要、周辺オフィス・医療機関利用など、多様な宿泊ニーズを吸収する拠点が駅前に立地することで、今後の再開発や商業再生に波及効果をもたらす可能性があります。長年続く再整備の延長線上で、ようやく「駅前に人が滞留する機能」が加わる点が、今回の計画の最大の意義といえるでしょう。
最終更新日:2026年1月11日