島根県松江市では、JR松江駅周辺を「日常的に人々が憩い集う松江の顔・玄関」と位置付け、駅前空間の再編に向けた検討が進められています。2023年12月に松江市と松江商工会議所が「松江駅前デザイン会議」を設置し、2024年には市民から幅広く意見を募りながら「松江駅前デザイン案」を取りまとめました。2026年夏時点では、既存の駅前広場や松江テルサが供用される一方、2024年1月に閉店した一畑百貨店は既存建築物が残された状態で、駅前空間の将来像を具体化する段階となっています。
計画では、駅北側への横断歩道の設置、バスターミナルの拡充、南側へのタクシー乗降場の集約、人々が憩い集う駅前広場の整備を主要な柱として、駅前の交通機能と歩行者空間を再編する方向です。また、一畑百貨店跡地については現時点で具体的な施設計画は定まっていないものの、所有者側の新たな動きに合わせて並行して検討する方針が示されており、既存の松江テルサや駅前広場などとの機能再編も含め、駅前一帯を段階的に再構築していく大規模なまちづくりへ発展する可能性があります。
松江駅前再開発の概要
1.松江駅前デザイン会議から具体的な施設配置検討へ
2023年12月に松江市と松江商工会議所が「松江駅前デザイン会議」を設置
市民意見を踏まえた駅前空間の将来像検討から実務的な施設配置計画への移行
2.4つの主要施策による駅前公共空間の再編
駅北側への横断歩道設置、バスターミナル拡充、南側へのタクシー乗降場集約、駅前広場整備
交通結節機能の強化と歩行者の回遊性向上を図る駅前空間の再編
3.バスターミナル拡充とタクシー乗降場の南側集約
バス利用者の待合空間や乗降場を再編し、駅前の交通機能を効率化
タクシー乗降場を南側へ集約し、北口側の歩行者・滞留空間を創出
4.北側への歩行者動線と人が憩い集う駅前広場
駅北側に横断歩道などを整備し、松江城や大橋川方面への歩行者回遊を促進
緑や水辺を感じられる広場にベンチや屋根付き空間などを設ける交流拠点の形成
5.一畑百貨店跡地への商業・公益複合ビル構想
2024年1月に閉店した一畑百貨店跡地を活用した新たな賑わい拠点の整備
商業・公益機能などを備えた複合ビルによる駅前の新たなシンボル形成
6.松江テルサを含む周辺施設との機能再編
一畑百貨店跡地、松江テルサ、駅前広場、バスターミナルを一体的に捉えた機能再編
既存施設の活用や新施設への機能移転などを含む駅前全体の再構築
7.令和9年度以降の設計・整備を見据えた段階的な事業推進
令和8年度までに関係者協議や交通影響調査、施設配置計画の検討を進める段階
令和9年度以降のデザイン決定、基本設計・実施設計を経て進める新駅前広場整備

松江駅前の再整備は、2023年12月に松江市と松江商工会議所が共同で「松江駅前デザイン会議」を設置したことから本格的に始まりました。松江駅前を「日常的に人々が憩い集う松江の顔・玄関」とすることを基本理念に、交通、交流・防災、サービス、都市環境形成の4つの機能から将来像を検討しています。
2024年には「松江駅前デザイン(案)」について市民や団体から意見を募集し、各個人・団体から様々な意見が寄せられました。これらの意見を踏まえてデザイン案を修正し、現在は構想段階から具体的な施設配置や関係機関との調整へと検討段階が進んでいます。


「松江駅前デザイン案」では、公共空間について特に4つの取り組みが共通して想定されています。1つ目が駅北側への横断歩道の設置、2つ目がバスターミナルの拡充、3つ目が南側へのタクシー乗降場の集約、4つ目が人々が憩い集う駅前広場の設置です。
これらを一体的に整備することで、駅と周辺市街地の回遊性を高めるとともに、バス・タクシー・一般車・歩行者が利用しやすい交通結節点が形成されます。2026年9月に開催された第1回「松江駅前公共空間施設配置計画検討 連絡調整会議」では、この4項目について関係機関の実務者が一堂に会し、具体的な施設配置に向けた協議を進める体制が整えられました。


現在の松江駅前には、バスターミナル、北口タクシー乗降場、駐車場、地下通路入口、観光案内所などが配置されています。一方で、バス利用者の待合空間と歩行者動線が重なり混雑するほか、高速バスの乗降場が駅から離れた場所に分散するなど、交通結節点として改善の余地があります。
デザイン案では、バスターミナルを再編・拡充するとともに、タクシー乗降場を駅南側へ集約する方向が示されています。北口側に生まれる空間を駅前広場や歩行者空間として活用することで、駅を出た際に周辺の街並みを見通しやすくし、松江駅を起点として東西南北へ歩いて回遊できる駅前空間を目指すものとしています。


駅北側では、横断歩道などを整備して、駅前から北方向へ歩いて行きやすい歩行者導線を形成する構想です。松江城や大橋川など北側の観光・水辺エリアへつながる「歩きたくなる空間」を整備し、駅と中心市街地の回遊性を高めることが狙いです。
駅前広場についても、単なる交通処理のための空間ではなく、水辺や緑を感じられる開放的な広場として整備する方向が示されています。マルシェやイベント、地域コミュニティ活動、子どもや若者の滞留など、幅広い用途に対応できる空間が求められており、屋根付き空間やベンチ、植栽などを組み合わせた「人が集まる駅前」への転換が期待されます。


2024年1月14日に閉店した一畑百貨店松江店の跡地は、今回の駅前再整備における重要な拠点の一つです。現店舗は1998年に開業し、延床面積約1万8,846㎡、商業施設面積約1万3,617㎡を有していましたが、閉店後の2026年夏時点では既存建築物が残された状態となっています。
「松江駅前デザイン案」では、一畑百貨店跡地に商業機能や公益機能など多様な機能を備えた複合ビルを建設し、新たな松江駅前のシンボルとなる賑わい拠点を創出する考えが示されています。市は民間主導による整備を期待しており、複合ビルの具体的な規模や施設構成、事業主体などについては今後の民間事業者との協議が重要となります。

一畑百貨店跡地だけでなく、駅西側に位置する松江テルサを含めた周辺施設の機能再編も、駅前まちづくりの重要な論点となっています。市民から寄せられた意見では、テルサの存続・改修を求める声がある一方、必要な機能を新たな複合ビルへ移転させる案など、さまざまな意見が出ています。
また、テルサについてはバスの待合空間として活用し、発着時間を表示する電光掲示板や土産物などの買い物機能を設けるといった提案もありました。今後は一畑百貨店跡地、松江テルサ、駅前広場、バスターミナルなどを個別に整備するのではなく、それぞれの役割を整理しながら駅前全体を一体的に再編していくことが重要になります。

松江駅前再開発のロードマップでは、令和7年度から令和8年度にかけて関係者との協議・調整、自動車交通影響調査、施設配置計画の立案などを進め、駅北側への横断歩道、バスターミナルの拡充、南側へのタクシー乗降場の集約、人々が憩い集う駅前広場の設置について具体的な検討を進める計画となっています。
その後、令和9年度以降にデザインを決定し、基本設計、実施設計を経て新駅前広場の完成を目指します。ロードマップ上では全体として「数~10年程度」の時間軸が示されており、段階的な整備が想定されています。今後は第1回連絡調整会議を起点として、JR西日本や交通事業者、地権者、関係行政機関などとの調整が進み、一畑百貨店跡地の活用と駅前広場・交通結節機能の再編がどのように一体化されるのかが注目されます。
出典・引用元:松江市 JR松江駅前整備検討事業
最終更新日:2026年10月6日