カナダの大手調査会社レゾナンス・コンサルタンシーが発表した「2025年版世界都市ランキング」において、東京は前年と同じ4位を維持しました。日本からは他に大阪、名古屋、札幌の3都市が100位圏内にランクインし、これら3都市は前年より順位を上げています。
ランキングの首位は英国のロンドンで、前年のトップを守りました。2位は米国ニューヨーク、3位はフランスのパリが続き、アジア最高位は東京が記録。シンガポール(5位)、韓国ソウル(16位)、タイのバンコク(32位)、中国北京(36位)などがランクインしています。
レゾナンスの「World’s Best Cities」ランキングでは、人口100万人以上の都市を対象に、住みやすさ、愛らしさ、繁栄の3つの要素を基に都市の評価が行われます。この方法論は、都市の主要な統計データとオンラインレビュー、ユーザー生成の評価を組み合わせて分析し、都市の「プレイスパワー」スコアを算出します。
住みやすさの評価では、都市の自然環境や建築環境、生活コスト、家賃の手ごろさ、空気質などが重視されます。愛らしさは文化、食事、ナイトライフ、ショッピングの活気を基に評価され、繁栄では教育、労働力参加、ビジネス環境、空港接続性などが測定されます。
調査は、22,000人以上の国際的な回答者から集めたデータを基に、どの都市が最も住みたい、訪れたい、働きたい場所として認識されているかを分析します。この方法論は、都市がどのように魅力的で繁栄しているかを示す指標を提供し、都市の相対的な強さを明確にするものです。
また、近年は持続可能性への取り組みも重視されており、ロンドンや東京では「都市再開発」により緑地を創出する大規模な都市開発も進行中です。このような包括的な分析によって、世界の「最も魅力的な都市」が選ばれています。
1.ロンドン
ロンドンは2025年版「World’s Best Cities」ランキングで10年連続の首位を獲得しました。人口約1,243万5,000人を抱えるこの大都市は、文化、経済、インフラ面での先進性と、持続可能性への取り組みが評価され、年間ランキングの頂点を守り続けています。
ロンドンは、ナイトライフや美術館、SNSでの人気度など、28の評価カテゴリーのうち7つでトップとなり、世界中の観光客や投資家、学生、ビジネスリーダーを惹きつける魅力を誇示しています。2023年には海外旅行者の支出額で世界第3位となり、ヒースロー空港が過去最高の旅客数を記録するなど、観光業でも大きな成果を上げました。また、エリザベス線の拡張やガトウィック空港の大規模改修など、交通インフラの改善が都市の接続性をさらに向上させています。
さらに、ニューヨークのハイラインを模したカムデン・ハイラインの建設など、都市再開発プロジェクトが進行中であり、2030年までに40,000の新しい議会住宅建設やカーボンニュートラル達成を目指す計画も発表されています。
ビジネス面では、AIやテクノロジー分野での世界的リーダーシップを確立しており、米国からの商業不動産投資も増加。ロンドンのオフィス空室率が9%強と低水準を維持していることが、その強さを裏付けています。加えて、急成長するホスピタリティ業界では、新しい高級ホテルのオープンが文化と豪華さを融合させた体験を提供し、観光客に新たな魅力を加えています。
歴史的遺産と現代的野心を併せ持つロンドンは、サステナビリティ、イノベーション、そして経済力で世界都市の基準を設定し続ける存在です。
2.ニューヨーク
ニューヨーク市は、メトロエリアで約1,991万人の人口を擁し、アメリカ最大の都市として世界的な魅力を誇っています。パンデミック後の復活は目覚ましく、不動産価格の上昇や観光業の回復が都市の活気を象徴しています。2023年には約6,220万人の観光客が訪れ、2024年には6,450万人に達すると予想されています。観光業は都市経済に740億ドルもの効果をもたらし、ブロードウェイや美術館、スポーツイベントが文化の多様性を象徴しています。
空港の改修や新しい鉄道施設の導入は、インフラの改善を支えています。一方で、短期賃貸規制の強化によりホテルの需要が増加し、ラグジュアリーホテルやブティックホテルの新設が進んでいます。文化施設も拡張され、メトロポリタン美術館や新しいブロードウェイ博物館などが観光名所として注目を集めています。
また、ハドソンヤードやロウアーマンハッタンの再開発など都市空間の革新が続き、ビジネスエコシステムや雇用市場の活性化に寄与しています。教育機関やグローバル企業が集まるニューヨークは、野心的な若者の集まる都市として、世界第2位の住みやすさとビジネス環境を誇っています。
3.パリ
パリは、人口210万人のフランスの首都であり、2024年夏季オリンピック・パラリンピックを控え、観光や都市開発で注目を集めています。パンデミック後の再構築を通じて、歩行者や自転車利用を重視した都市設計を推進し、空気の質や住民の健康が向上しています。自転車道の拡張や歩行者エリアの増設により、持続可能な都市として進化を遂げています。
観光面では、ノートルダム大聖堂の再開やセーヌ川を活用したオリンピック競技が話題で、2023年には約4,750万人の観光客を迎えました。パリはまた、ミシュラン星付きレストラン122軒を擁する美食の都市で、2022年には観光収入が368億ドルに達しました。
一方で、経済格差や社会的不安も抱えており、郊外での抗議や貧困問題が顕在化しています。しかし、メトロの拡張や「France 2030」計画によるテクノロジー分野への投資が進み、パリは未来志向の都市として成長を続けています。
4.東京
東京は、人口3,778万人を誇る世界最大級の都市圏であり、地震や台風といった自然災害があるにもかかわらず、住みやすい大都市として評価され続けています。近年は公共空間や文化、観光分野への投資を通じて、都市体験の革新に注力しています。東京は日本のGDPの20%を占める経済の中心地であり、グローバル・フォーチュン500社の本社数では世界第2位を記録しています。
交通インフラの再構築と都市再開発による緑地拡充により、持続可能で人間中心の都市を目指す取り組みが進行中です。例として、東京高速道路を歩行者専用道路として再整備するプロジェクトでは、緑地や小売店、レクリエーションスペースが計画されており、2030年までに部分的な完成を目指しています。また、高速道路を地下化し、歩行者空間を拡大する計画も進められています。
観光面では、数千室のホテルが増設され、2030年までに6,000万人の観光客を迎える目標が掲げられています。羽田空港の拡張や高速鉄道によるアクセス向上も進行中で、東京の観光収入は1,360億ドルを見込んでいます。
さらに、東京はショッピングの分野で世界トップに立ち、銀座や渋谷の宮下公園などが魅力的な買い物やレジャースポットとして注目されています。新しい開発プロジェクトでは、超高層ビルによる複合機能を有する「垂直都市」としてビジネス、生活、レジャーを融合させた複合施設が増加しており、パブリックアートも都市の文化的な魅力を高めています。
5.シンガポール
シンガポールは、人口592万6,000人の都市国家として、アジアで最も近代的で整然とした都市の一つに成長しました。自由貿易港から発展を遂げ、経済、観光、テクノロジーで世界的な注目を集めています。
この都市は、ショッピングと食事が住民や観光客に愛される主要な娯楽となっており、オーチャードロードの豪華なショッピングモールから、多様なストリートフードが楽しめるホーカーセンターまで、多彩な体験を提供しています。また、観光の象徴であるマリーナベイ・サンズは、ホテルやエンターテイメント施設を拡張し、さらなる魅力を増しています。
経済面では、一人当たりGDPで世界第5位にランクインし、東南アジアの主要なテクノロジーハブとしても注目されています。Googleやマイクロソフトなどのグローバル企業が大規模な投資を行い、シンガポールのデジタル経済の中心地としての地位を強化しています。さらに、チャンギ空港の拡張や世界最大の自動化港湾であるトゥアス・メガポートの開発など、インフラ整備も進行中です。
都市計画にも力を入れており、南部の海岸を再開発するグレート・サザン・ウォーターフロント計画では、約9,000戸の住宅やコミュニティスペースが新たに整備される予定です。また、島全体を結ぶ緑地ネットワークや歩行者天国の拡充により、持続可能な生活環境を提供し、仕事やレジャーの利便性を向上させています。
6.ローマ
ローマは、人口430万4,000人を誇る「永遠の都」として、豊かな歴史と現代の魅力が交錯する都市です。西洋文明の象徴であり、訪れる人々をその壮大な遺産へと誘います。近年、新たに発掘された古代遺物や歴史的遺跡が注目を集め、ローマの長い歴史が今もなお展開し続けていることを実感させます。
コロッセオやパンテオンといった有名なランドマークだけでなく、ジュリアス・シーザー暗殺の地「ラルゴ・ディ・トッレ・アルゼンチナ」など、多くの史跡が公開され、観光ランキングでは世界第4位に位置づけられています。また、美術館や歴史的建造物を通じて、多くの訪問者が西洋文化の原点に触れる機会を提供しています。
ローマの魅力は観光だけにとどまらず、地元の人々の日常にも反映されています。「Pulejo」や「Don Pasquale」などの新しいレストランや、トレビの泉近くの高級ホテルの屋上レストランなど、美食文化も進化を遂げています。特に伝統料理と2000本のワインを揃えたトラットリア「ダ・エッタ」は、ローマ料理の魅力を味わえる名所です。
さらに、シックスセンシズやブルガリローマといった高級ホテルのオープンにより、ラグジュアリーなホスピタリティも充実しています。これらの施設は、ユネスコ世界遺産の中に位置し、歴史的な美しさと現代的な快適さを融合させています。
ローマは、その歴史の重みと現代的な進化を併せ持つ都市として、住む人にも訪れる人にも特別な体験を提供し続けています。
7.マドリード
マドリードは、人口700万5,000人を抱えるスペインの首都で、持続可能性と都市再生に積極的に取り組む都市です。市内の新しいプロジェクトや取り組みが、環境や文化的価値を高めています。
都市の緑化プロジェクトとして注目されるのが、新しいサンタンデール公園と、約50万本の樹木を植えた「都市型森林ネットワーク」です。この「緑の壁」は、市内の異なる森林をつなぎ、都市熱の軽減や年間17万5,000トンの二酸化炭素吸収を目指しています。このような環境投資は、大気質や都市の安全性を改善し、住みやすさを向上させています。
さらに、ヨーロッパ最大規模の都市再生プロジェクト「マドリッド・ヌエボ・ノルテ」が進行中です。このプロジェクトでは、北部鉄道地区を再開発し、公共交通のハブを中心に住宅やビジネスエリアを整備する計画です。また、市内には電気バス網や新しい自転車レーンが整備され、環境に優しい都市交通の推進が進められています。
文化面では、新たに開館した「ロイヤルコレクションギャラリー」が話題となっており、博物館ランキングの向上にも寄与する見込みです。この施設は、マドリード王宮の隣に位置し、スペインの歴史的、文化的遺産を保存・展示する中心的な役割を果たしています。
これらの取り組みに加え、アドルフォ・スアレス・マドリード・バラハス空港の拡張計画も進行しており、2031年にはEU最大級の空港となる予定です。環境、文化、交通の分野での大胆な投資が、マドリードの未来をさらに明るくしています。
8.バルセロナ
バルセロナは、人口511万2,000人を擁するカタルーニャの首都で、文化、建築、環境への取り組みが世界中の注目を集めています。ガウディの代表作サグラダ・ファミリアはついに完成間近となり、2026年にキリストの塔が公開される予定です。
市は環境改善にも力を入れており、旧市街の車道を歩行者専用に転換した「グリーンアクシス都市公園」プロジェクトが進行中です。この21ブロックにわたるエリアは、地元住民や観光客に憩いの場を提供し、市民のメンタルヘルス向上にも貢献しています。
観光客が年間1,200万人に達したパンデミック前の水準に戻る中、バルセロナは厳格な短期レンタル規制を導入しています。新たなライセンス発行を停止し、2029年には短期レンタルの全面禁止を計画するなど、住居問題への取り組みが進められています。
また、バルセロナはビジネスエコシステムランキングでランクインし、ルフトハンザのデジタルハブや、パナトーニによる3億ドル規模のデータセンター建設など、大規模な外国投資を呼び込んでいます。さらに、バルセロナ・スーパーコンピューティング・センターなどの先進的なイニシアチブが、都市のイノベーション力を高めています。
観光、環境、ビジネスの全てにおいて、バルセロナは魅力的な進化を遂げています。
9.ベルリン
ベルリンは、人口498万人を抱えるドイツの首都で、歴史と現代が融合した多面的な都市です。ベルリンの博物館は、ミュージアムアイランドや新しいフンボルトフォーラムなど、多彩な文化施設が世界中の訪問者を魅了しています。また、LGBTQ+文化の象徴であるシェーネベルクや「ピンクピローベルリンコレクション」など、インクルーシブな社会を支える取り組みが進められています。
夜遊びでもランキング入りしており、フェスティバルやライブイベントが街の活気を象徴しています。2024年にはEURO 2024が開催され、オリンピアシュタディオンが主要な会場となり、世界中のスポーツファンを迎えました。
経済面でも、ベルリンはドイツのスタートアップの中心地として注目されています。約4,400のスタートアップが拠点を置き、手頃な生活コスト、有名大学、熟練した労働力がベンチャーキャピタル投資を後押ししています。ドイツテレコムやドイツ鉄道といった大企業も存在感を示しており、グローバル企業が集まる経済の拠点としての地位を確立しています。
ベルリンはその壊れやすい歴史を記録しつつ、未来志向の都市づくりを進めており、文化、経済、社会的多様性を融合した魅力的な都市です。
10.シドニー
シドニーは、人口4,836万人のオーストラリアの都市で、象徴的なオペラハウスやハーバーブリッジ、美しいビーチなどが魅力です。世界で7番目に優れた空気の質を誇り、古い建物と現代的なアイコンが調和した都市です。シドニーは、活気あるセントラルビジネスディストリクト(CBD)を中心に発展し、緑地やウォーターフロントの遊歩道が新たに整備されました。また、文化面でも進化しており、ニューサウスウェールズ州立美術館が新しいガラス構造を追加し、アボリジニや女性アーティストの作品に焦点を当てています。
経済的にも、シドニーは繁栄しており、国際的な金融センターとして機能しています。Tech Centralなどの都市再開発プロジェクトにより、テクノロジーとイノベーションの中心地として成長しています。さらに、ナイトライフやダイニング、文化的なシーンの活性化に向けた取り組みが進んでおり、シドニーはグローバルなビジネスと文化のハブとしての地位を強化しています。
最終更新日:2024年11月30日