JR東日本は、「羽田空港アクセス線(仮称)の整備事業」に伴い、2025年4月19日(土)から20日(日)にかけて、山手線および京浜東北線の田町駅付近で線路切換工事が実施されました。
この工事は、新設される羽田空港アクセス線のルートと既存の東海道線との接続を可能とするための基盤整備の一環であり、山手線外回りと京浜東北線南行の線路を西側に大きく移設する大規模な工事となりました。工事の影響により、山手線(外回り・上野〜大崎間)と京浜東北線(南行・東十条〜品川間)が約1日半にわたって運休となり、大規模な振替輸送や臨時列車の運行が実施されました。
今回の線路切換では、京浜東北線南行が最大2.6m移動、山手線外回りは最大2.3m移動するなど、広範囲かつ精密な線路移設が行われ、同時に田町駅ホームの拡幅・縮小、雑魚場架道橋の橋梁移設、分岐器の新設・撤去など、複数の工程が並行して実施されました。
この工事により、将来的に新橋・東京方面から羽田空港へ直通するアクセスルートのためのスペースが確保され、今後は東海道線上下線間にアクセス線を敷設する構造物の構築が本格化する予定です。羽田空港アクセス線の開業は2031年度が目標とされており、今後も各所で線路移設や駅設備の改良が進められる見込みです。
→東日本旅客鉄道株式会社 羽田空港アクセス線(仮称)の本格的な工事に着手します
→東日本旅客鉄道株式会社 羽田空港アクセス線(仮称)整備における田町駅付近線路切換工事に伴う列車の運休について
羽田空港アクセス線(仮称)整備における田町駅付近線路切換工事の概要
- 工事の目的
羽田空港アクセス線(仮称)の整備に向けて、東海道線と接続するためのルートを確保する基盤工事として、田町駅付近で山手線外回り・京浜東北線南行の線路を移設する工事 - 工事の実施日程
2025年4月19日(土)〜20日(日)にかけて実施された大規模な線路切換工事 - 主な工事内容
京浜東北線南行で約290mの線路移設(最大移動量2.6m)を実施
山手線外回りで約230mの線路移設(最大移動量2.3m)を実施
約90mの新設線路と分岐器2組の敷設
雑魚場架道橋の橋桁横移動(約1.3m)
田町駅ホームの一部拡幅(約70m)および縮小(約20m) - 工事の背景
東海道線の上下線間に羽田空港アクセス線を通すスペース(幅約30m)を確保する必要性 - 工事中の影響
線路閉鎖による広範囲の列車運休と振替輸送・臨時列車の運行対応 - 今後の予定
確保されたスペースを活用した羽田空港アクセス線の構造物建設と2031年度の開業目標 - 地域への影響と期待
都心から羽田空港へのアクセス向上と田町・品川エリアの交通結節機能や再開発の推進

線路切換工事が実施された田町駅構内の様子。山手線外回りと京浜東北線南行は、羽田空港アクセス線の敷設スペースを確保するため、最大でそれぞれ約2.3m・2.6m移設され、雑魚場架道橋も橋桁を横移動して移設されました。


図面に示されるように、今回の工事では田町駅周辺で計約490mにわたる線路移設が行われました。京浜東北線南行は約290m、山手線外回りは約230mの線路が移設され、さらに約90mの新設線路と2基の分岐器が敷設されました。また、京浜東北線ホームの北端側では最大1.3mの拡幅工事、南端側では最大0.6mの縮小工事が同時に実施され、今後の構造物構築に必要な用地が確保されました。


今回の切換工事は、約30時間にわたって昼夜を通じて実施され、線路移設・分岐器の設置・橋桁の移動・ホームの構造改修といった多岐にわたる作業が一挙に進行しました。工事に伴う線路閉鎖により、一時的に運休や運転区間の変更が行われましたが、作業は順調に進み、20日(日)正午には予定通り運転が再開されました。

田町駅北側の東海道線区間では、山手線の引上線撤去後、山手線外回り・京浜東北線南行・東海道線上り線の順に線路を西側へ移設。これにより、東海道線の上下線の間に約30m幅のスペースが生まれ、羽田空港アクセス線(大汐線ルート)の新設ルートが構築されます。
最終的には、旧海岸通り下を開削トンネルで、さらにその先でシールドトンネルに切り替えながら、東海道貨物支線や東京貨物ターミナル駅方面へと接続する構造となります。
羽田空港アクセス線(仮称)整備

JR東日本は、既存の鉄道ネットワークを活用し、羽田空港へのダイレクトアクセスを実現する「羽田空港アクセス線(仮称)」の整備を進めています。2023年に「東山手ルート」の鉄道施設変更認可と「アクセス新線」の工事施行認可を受け、2023年6月から本格的な工事に着手し、2031年度の開業を目指します。このアクセス線により、東京駅から羽田空港までの所要時間が18分に短縮され、宇都宮線・高崎線・常磐線方面からも直通でアクセス可能となります。

「東山手ルート」および「アクセス新線」
本線は、東海道線田町駅付近から羽田空港新駅(仮称)までの約12.4kmを結ぶ路線で、既存の大汐線の一部を改修し、新たに「アクセス新線」を敷設します。これにより、現在30分程度かかる東京駅から羽田空港への移動時間を約18分に短縮し、乗り換えなしでアクセスできるようになります。新線では、東京貨物ターミナルから羽田空港新駅に至る約5.0kmのシールドトンネルが建設されます。
「東山手ルート」および「アクセス新線」
工事は、東海道線接続区間、大汐線改修区間、東京貨物ターミナル内改良区間、アクセス新線区間の4つの部分に分けて行われます。東海道線接続区間では、山手線外回りの移設を行い、計画線をトンネル構造で敷設します。大汐線改修区間では、休止中の大汐線の再開に向けて既存の高架橋や橋梁を改修します。また、東京貨物ターミナル内には車両留置線や保守基地線が整備されます。アクセス新線区間では、最大50mの深さでシールドトンネルが構築され、羽田空港新駅へ接続されます。

羽田空港新駅(仮称)は、第1旅客ターミナルと第2旅客ターミナルの間に設置され、最大幅員約12m、延長約310mの島式1面2線のホームを持つ地下駅です。ホームは地下1階に位置し、第2旅客ターミナルへは高低差なく移動できるように設計されています。このアクセス線は、羽田空港の機能強化やインバウンド需要の拡大に貢献し、東京圏の鉄道網の中でも重要な位置を占めることになります。
最終更新日:2025年4月20日