横浜市は令和7年度予算において、都市の成長と利便性向上を支える次世代鉄道ネットワークの構築に向けた検討を本格化させます。重点項目として、高速鉄道3号線の延伸、横浜環状鉄道の新設、東海道貨物支線の貨客併用化といった、国の交通政策審議会答申にも位置付けられた重要路線の調査・検討に着手。これにより、交通利便性の向上とともに、沿線地域の活性化や災害時の代替ルート確保、環境負荷の軽減といった多角的な都市課題への対応が図られます。また、既存駅におけるバリアフリー整備など、利用者目線での安全性・快適性の向上にも力を注ぎます。
横浜市次世代鉄道ネットワークの構築に向けた検討の概要
1. 鉄道ネットワークの構築に向けた全体的な方針
横浜市は、国の交通政策審議会答申に基づき鉄道網整備の本格検討を開始。利便性向上と都市機能強化を目指す全市的な取り組みである。
2. 高速鉄道3号線の延伸(あざみ野~新百合ヶ丘)
令和12年開業を目指し、市営地下鉄ブルーラインの延伸を推進。交通結節機能と沿線地域の活性化が狙い。
3. 横浜環状鉄道の新設(長期構想)
市内拠点を結ぶ環状路線の構想。長期的視野での整備と段階的検討が進む。
4. 東海道貨物支線の貨客併用化(品川~桜木町)
既存貨物線の活用による新たな旅客ルートの整備構想。羽田アクセスや混雑緩和への効果に期待。
5. 駅のバリアフリー化による利便性・安全性の向上
高齢化を見据え、駅施設のユニバーサルデザイン化を推進。地域要望を反映した整備計画である。
6. 地域公共交通ネットワークの形成
駅を起点としたバスや新交通システムの連携強化。まちづくりと一体化した移動環境の整備。
7. 国・関係機関との連携による早期事業化の推進
各種手続と調整を通じて事業化を加速。協定締結などにより具体化が進行中。


高速鉄道3号線の延伸(あざみ野~新百合ヶ丘)

高速鉄道3号線(横浜市営地下鉄ブルーライン)の延伸計画は、あざみ野駅(横浜市青葉区)から新百合ヶ丘駅(川崎市麻生区)までの約6.5kmを新たに整備するもので、2025年度も早期事業化に向けた具体的な検討が進められます。令和2年にはルートと新駅の位置について横浜市・川崎市が合意し、全線で4つの新駅設置を予定。概算事業費は約1,720億円で、令和12(2030)年の開業を目指しています。

この延伸により、横浜北西部と川崎市北部、多摩地域がダイレクトに結ばれ、地域間移動の効率が大幅に改善されます。例えば、新百合ヶ丘~あざみ野間の所要時間は約30分から約10分へと短縮。また、新幹線駅である新横浜駅へのアクセス強化や、災害時の代替ルート確保、沿線のまちづくりの推進など、広範な効果が見込まれています。今後は、環境影響評価や都市計画手続き、国や関係自治体との調整を経て、円滑な事業着手を図る方針です。
横浜環状鉄道の新設(市内主要拠点を結ぶ環状路線)

横浜市が構想する「横浜環状鉄道」は、日吉~鶴見、中山~二俣川~東戸塚~上大岡~根岸~元町・中華街といった、市内の主要な生活・業務拠点を環状につなぐ新路線です。横浜駅を経由せずに拠点間を直接移動できるこの路線は、市域の一体化や交通利便性の大幅な向上を目指す長期プロジェクトとして位置付けられています。

全線整備時の延長は約34.4km、総事業費は概算で約7,700億円と見込まれており、財政的負担や採算性の課題があるため、まずは需要が見込まれる隣接区間(例:日吉~鶴見、中山~二俣川、元町・中華街~根岸)から段階的に検討が進められています。鉄道整備とまちづくりを連携させる方策や、沿線の交通需要の創出策も併せて検討されており、バスでは不便だった区間の移動利便性の大幅な改善も期待されています。
現時点の試算によれば、各区間の日利用者数は最大で49千人/日、事業費はそれぞれ1,300~1,600億円規模。今後の検討では、事業性確保に向けた追加の需要予測や収支採算性分析など、より実現性を高めるための取り組みが求められます。
東海道貨物支線の貨客併用化(東京~横浜間の新たな旅客ルート)

東海道貨物支線の貨客併用化構想は、現在貨物専用で使われている路線を、旅客輸送にも活用することで、東京~横浜間に新たな鉄道ネットワークを形成する計画です。対象区間は総延長約33kmで、そのうち約18kmは既存線、約15kmは新たに路線を新設。想定ルートは、品川・東京テレポートから天空橋、浜川崎を経由し、桜木町へと至ります。

この整備により、京浜臨海部と都心、羽田空港、横浜が直結され、アクセス性が飛躍的に向上。たとえば、桜木町〜東京テレポート間は乗換なしで移動でき、所要時間も約14分短縮される見込みです。また、リニア中央新幹線(品川駅)や羽田空港への接続も可能となり、都市間の結節点としての機能強化が図られます。
さらに、混雑が慢性化する京浜東北線や東海道線などの混雑緩和、災害時の代替ルート確保、CO₂排出削減などの環境効果も期待されます。実現に向けては、神奈川県・東京都・横浜市・川崎市などが参加する「東海道貨物支線貨客併用化整備検討協議会」による連携のもと、事業性や沿線開発、貨物輸送への影響等について慎重に検討が進められています。
最終更新日:2025年7月11日

