新松田駅北口地区の駅周辺整備事業は、交通環境の改善と市街地の活性化を目指し、駅前広場の拡充や歩行者動線の整備、周辺道路網の再構築などを進めるものです。現在の駅前広場はバス、タクシー、一般車両、歩行者の利用に対して十分な規模や配置が確保されておらず、交通渋滞や歩行者の安全面に課題があります。
さらに、商業機能の衰退や空き地・空き店舗の増加、魅力ある街並みの不足など、市街地としての課題も存在します。このため、地域の玄関口としての役割を強化し、交流や観光、情報発信の機能を高めることが求められています。こうした課題に対応し、安全で快適な都市環境の創造とともに、地域経済の活性化や住民サービスの充実を図ることが事業の大きな目的です。
駅周辺整備事業により建設される施設の規模は、「北街区」が地上13階、高さ約45m、総戸数110戸の高層住宅・商業・業務・公益施設となります。「南街区」は地上5階、高さ約22mの商業・業務・公益施設で、屋上広場も設けられます。施行地区面積は約1.2ヘクタール、敷地面積は南北街区合計で約6,600㎡、延床面積は同じく約20,300㎡です。
→松田町 新松田駅北口地区駅周辺整備事業説明会 令和7年6月21日
新松田駅北口地区駅周辺整備事業の概要
- 事業の目的
交通環境の改善と市街地活性化を目指し、安全で快適な駅前広場の整備や魅力的な街並みづくりを推進。 - 交通環境の課題
駅前広場の狭さや混雑、歩行者の安全確保が不十分で、県道711号や踏切周辺の渋滞も深刻な問題。 - 市街地環境の課題
老朽化した商業施設や空き店舗の増加、公共スペース不足による魅力低下と街並みの未整備が課題。 - 町民の声と期待
買い物利便性向上や子育て支援充実を望む声が多く、地域の活性化と人口増加に期待が寄せられている。 - 整備手法の検討
道路事業や土地区画整理事業の課題を踏まえ、市街地再開発事業を最適な手法として採用。 - 再開発事業の内容
駅前広場や道路の拡充、再開発ビル建設による商業・公益施設の一体的整備を計画。 - 今後の展望
準備組合の設立や事業協力者の選定が進み、都市計画決定・権利変換計画の認可を経て事業実施へ。

新松田駅北口の駅前広場は、バスやタクシー、一般車両、歩行者など多様な交通手段の混在に対して対応しきれていません。現在の広場は規模が不足しているため、乗降場の配置が非効率であり、動線の確保も不十分な状況です。これにより交通の円滑な流れが妨げられ、朝夕のラッシュ時や利用者の増加時には混雑が激しくなっています。さらに、県道711号の御殿場線高架下や小田急線踏切の周辺では交通渋滞が頻発しており、鉄道の南北を分断する形で道路網が未整備のため、交通の錯綜が問題となっています。
加えて、駅周辺では歩行者の動線整備も十分でなく、安全かつスムーズな歩行環境の確保が急務です。歩行空間も未整備であり、特に雨天時には傘をさした歩行者や自転車、一般車両の送り迎えが重なり、危険な状況が生じています。こうした状況を改善し、交通結節点としての機能を強化するために、駅前広場の拡大と効率的な施設配置、周辺道路網の拡充整備、歩行者の安全な通行空間の整備が必要です。

新松田駅周辺の市街地は、商業施設や公共公益施設の老朽化や空き店舗の増加により、地域としてのポテンシャルが十分に活かされていません。現在の土地利用は、戸建て住宅や小規模店舗、駐車場、空き地が混在し、駅前としてのまとまりや魅力ある街並みが形成されていないのが実情です。駅周辺には広場や公的なオープンスペースが不足し、来訪者や住民にとって快適で安全な環境とは言い難い状況です。
また、バリアフリー対応が不十分な箇所も多く、誰もが利用しやすい環境整備も課題です。こうした点を踏まえ、駅周辺の市街地環境には交流機能や観光機能、情報発信機能の強化が求められています。さらに、地域経済の活性化に向けて土地の高度かつ有効な利用を進め、個性的で魅力的な「らしさ」を創出し、松田町や足柄上地域の玄関口としてふさわしい街並み景観を整備することが必要です。これにより、地域住民や駅利用者の利便性向上だけでなく、訪れる人々にとっても魅力的な地域づくりを実現します。


令和元年に実施された町民アンケート調査では、多くの住民が松田町を「住みよい町」と評価している一方で、日常の買い物環境の不便さや大型店舗の不足を課題として挙げています。また、今後の人口増加を希望する声が多く、そのためには買い物の利便性向上や働く場の確保、子育て支援や教育環境の充実が重要との意見が寄せられました。
こうした住民の期待は、町の総合計画や都市計画マスタープランに反映されており、新松田駅周辺の駅前環境整備や公共交通の活用促進、賑わい拠点の創出、都市のブランド力向上と定住促進を目指す政策に結びついています。さらに、駅周辺を地域の中心市街地として機能強化し、交流や活力を創出するまちづくりを進めることが重要視されています。これにより、地域全体の持続的な発展と住民の生活の質向上を図ることが期待されています。


新松田駅北口地区の整備には、道路事業、土地区画整理事業、市街地再開発事業の3つの手法が検討されました。道路事業は駅前の道路拡幅などが可能ですが、土地所有者との協議に時間がかかり、全体整備が滞るリスクがあります。また、道路整備のみでは市街地の総合的な活性化に繋がりにくい点が課題です。土地区画整理事業は土地の減歩により公共用地を確保しますが、市街地での実施は土地減歩の難しさから適用が限定的です。
一方、市街地再開発事業は都市再開発法に基づき、地権者の土地・建物の権利を新たな再開発ビルに変換し、駅前広場や道路の整備とともに商業施設や公益施設を一体的に整備できるため、まちづくり効果が非常に高いとされています。令和5年に準備組合が設立され、地権者との合意形成や事業計画の検討が進められており、株式会社マリモが事業協力者に選定されました。
今後は都市計画決定や権利変換計画の認可などの手続きを経て、事業の実施段階へと移行していきます。これにより、新松田駅北口地区は交通の結節点としての機能向上とともに、安全で快適な駅前環境の実現、地域の活性化が期待されています。
最終更新日:2025年6月24日