1973年に開業し、長年にわたって地域交通の要所を担ってきた新札幌高架橋において、このたび耐震補強工事が本格的に着手されました。本高架橋は、1983年以前の旧耐震設計基準に基づいて建設された構造物であり、国の定める通達により耐震補強の必要があるとされています。補強工事においては、国による補助制度も活用可能であることから、国、北海道、札幌市が連携し、調整と準備が進められてきました。こうした取り組みの成果として、ついに現地での工事がスタートします。
さらに今回の工事では、単なる耐震補強にとどまらず、駅全体を新札幌の新たな顔にふさわしいデザインへと刷新する大規模なリニューアルも同時に実施されます。高架橋下にあった既存の商業施設も再開発の対象となっており、交通と商業が融合する新たな都市拠点の形成が期待されています。
→北海道旅客鉄道株式会社 新札幌高架橋耐震補強工事の着手について
新札幌高架橋耐震補強工事の概要
- 耐震補強工事の背景
1973年に開業した旧設計基準による高架橋に対する国の通達。国・北海道・札幌市の連携による補助制度の活用と工事着手。 - 耐震補強の内容
高架橋柱158本と橋脚1基への鋼板巻き補強。商業施設1〜4号館の撤去による工事空間の確保。 - 駅施設のリニューアル
駅出入口の移設や通行幅の拡張、コンコースや待合スペースの機能向上、トイレの更新・移設による利便性の向上。 - 駅デザインの刷新
木やレンガ調の素材を活かした温もりある外観。新札幌地区との一体感を意識した新たな玄関口の演出。 - 高架下商業施設の再開発
飲食・物販を中心とした新施設の整備計画。交通結節点としての機能強化とにぎわいの創出。 - 工事スケジュール
駅リニューアルの2028年度第3四半期完成予定。商業施設の段階的な開業(3号館:2027年度第1四半期、1・2号館:2028年度第2四半期)。 - 地域再整備としての意義
耐震性の向上と都市機能の再構築。新札幌エリアの魅力強化と地域活性化への寄与。

新札幌高架橋の耐震補強では、構造物の柱158本および橋脚1基に対して、鋼板を巻きつける工法を用いて強度を向上させます。これは地震発生時の揺れに対する構造耐性を高め、利用者の安全性を確保するための重要な措置です。
また、工事の円滑な進行と補強効果の最大化のため、既存の高架下にある商業施設(1〜4号館)は解体・撤去されます。これにより、作業スペースが確保されるだけでなく、将来的な土地利用の自由度も高まります。


駅のリニューアルでは、施設の機能向上と快適性の両立を目指した複数の改修が行われます。具体的には、混雑緩和を目的として駅出入口の扉を改札側に移設し、通行スペースを広げるほか、改札外コンコースの通路幅や面積も拡張。利用者がスムーズに移動できる動線設計が施されます。
待合スペースについては、現在の形式を見直し、新たに扉付きの「待合室」へと変更することで、季節や天候に左右されにくい快適な環境を提供します。さらに、老朽化が進んでいたトイレも全面的に改修。全洋式・ウォシュレット付きの最新設備を導入し、改札内に移設されることで利便性も向上します。

外観デザインについても、単なる機能的な改修にとどまらず、地域との調和を重視したコンセプトを採用。新札幌エリアの新しい玄関口にふさわしいイメージを表現するために、木材やレンガ調の素材を取り入れ、ぬくもりを感じられる空間づくりが進められます。これにより、まちと駅が一体となった心地よい都市景観が生まれることが期待されています。

耐震補強後の高架下スペースには、新たな商業施設の整備が計画されています。これまで営業していた施設の跡地は、単なる建て替えではなく、街の将来像を見据えた再開発の舞台となります。現在、設計業務が進行中で、今後の新札幌エリアの発展に寄与する施設として構想されています。
新たな商業施設は、駅利用者だけでなく、地域住民や訪問者が日常的に立ち寄れるよう、飲食店や物販店などの利便性の高いテナントを中心に構成される予定です。さらに、新札幌駅が多方面へのアクセス拠点であるという立地の強みを生かし、交通結節点としてふさわしい利便性とにぎわいを提供する空間としての整備が進められます。
現時点では詳細な店舗構成などは明らかになっていませんが、計画の進捗に応じて、今後正式に発表される予定です。新しい商業施設は、地域活性化と駅前エリアの魅力向上に直結する重要なプロジェクトとなります。

新札幌駅のリニューアル工事は、段階的に進められ、最終的には2028年度第3四半期の完成を目指しています。耐震補強や施設更新に伴う一部制限や工事中の影響はあるものの、長期的には安全性・利便性・快適性を兼ね備えた駅へと生まれ変わることになります。
高架下の新商業施設についても、順次オープンが予定されています。まず、3号館跡地に整備される施設が2027年度第1四半期に開業予定。続いて、1・2号館跡地の施設は2028年度第2四半期のオープンを予定しています。段階的な開業により、新札幌駅周辺では継続的に新たなにぎわいが創出されることが期待されます。
札幌市の副都心として発展を続ける新札幌エリアにおいて、この耐震補強と再整備事業は、安全性の向上に加えて、地域のさらなる魅力づくりにもつながる重要な取り組みです。今後の動向に注目が集まります。
最終更新日:2025年5月21日