鹿島建設は、仙台市青葉区にある東北支店ビルを、同社の木造中高層建築のフラッグシップビルとして新たに建て替える計画を発表しました。新ビルは、地域の風土と共鳴する「杜の都」仙台にふさわしい純木質耐火構造を採用し、日本の伝統建築に着想を得た新開発の「欄間制震システム™」を初めて導入します。三度の大地震に耐えてきた既存ビルの災害拠点としての役割も継承しつつ、環境への配慮と高い耐震性を両立した次世代型オフィスとして建設されます。
新東北支店ビルは、敷地面積1,606.02平方メートル、延床面積8,871.98平方メートル、地上9階、地下1階建てで構成され、主要構造は木造(制震構造)と一部鉄骨造となる予定です。設計・施工は鹿島建設自身が担当し、2028年度内の竣工を目指して工事が進められます。
→鹿島建設株式会社 鹿島が「東北支店ビル」を新たな木造フラッグシップビルに建替え
鹿島建設東北支店ビル建て替えの概要
- 木造フラッグシップビルへの建替え
仙台市青葉区の東北支店ビルを、鹿島建設の木造中高層建築のフラッグシップビルとして建替える計画である。杜の都・仙台にふさわしい本格的な木造建築を目指す。 - 新開発「欄間制震システム™」の初採用
日本の伝統建築に着想を得た新技術「欄間制震システム™」を初めて導入し、高い耐震性能を実現する木造制震構造である。 - 災害拠点機能の継承
既存社屋が担ってきた災害時の地域拠点としての機能を、新ビルでも継承し、地域の安全・安心に貢献する構えである。 - 木の多柱空間による快適な職場環境
木材をふんだんに使用した多柱構造の執務空間を設け、木の温もりに包まれた快適で健やかなワークプレイスの創出。 - 自然エネルギーとデジタル制御の融合
井水を活用した輻射空調や最先端のデジタル技術を組み合わせ、環境配慮型かつ持続可能なビル設備の構築。 - 社有林を基盤とした持続可能な木材調達
鹿島グループが保有する社有林からの産出材を含む約1,810立方メートルの木材を使用し、持続可能なサプライチェーンを構築。 - 計画概要と竣工予定
地下1階・地上9階建て、延床面積8,871.98㎡の木造・一部鉄骨造で、2026年秋に着工、2028年度内の竣工を予定。

新たに建設される東北支店ビルの最大の特徴は、鹿島が開発した木造制震構造「欄間制震システム™」の初採用にあります。この構造は、日本の伝統的な建築意匠である「欄間」にヒントを得て開発されたもので、柱と梁の接合部に設けられた欄間状のスペースに制震ダンパーを組み込み、木材本来の剛性と耐力を最大限に引き出しながら、地震エネルギーを効果的に吸収します。これにより、従来の中高層木造建築が抱えていた耐震性の課題を克服し、超高層ビルと同等の耐震基準をクリアする構造性能を実現しています。

新支店ビルの執務スペースは、すべて木造で構成された柱と梁による多柱空間を特徴とし、木の温もりに包まれた快適で人に優しいワークプレイスが形成されます。空調には、仙台の豊かな地下水を活用した輻射パネルを採用し、自然エネルギーを活かした設備計画を導入。これらの設備は最先端のデジタル技術により制御され、働く人々のウェルビーイングを重視した木造の「ウェルネスビルディング」として、新しいオフィスのあり方を提案します。長い歴史の中で培われてきた木造建築の感性と、現代の技術が融合した空間づくりが進められます。

本計画では、約1,810立方メートルの構造用木材が使用される予定であり、これは一般的な木造住宅の80棟分を超える規模に相当します。この木材の一部には、岩手県や福島県に所在する鹿島グループの社有林から産出されたカラマツ材が活用されるほか、地域の山林関係者や木材生産者と密接に連携しながら調達が進められます。
鹿島は、100年以上にわたって維持してきた自社の森林資源を活用し、伐採から活用、再生に至るまでの「みどりのバリューチェーン」を構築することで、森林資源の循環利用と建設業の連携を推進。環境と経済の両面に配慮した持続可能なサプライチェーンの確立を目指しています。鹿島は本計画を通じて、地域社会への安全安心の提供に加え、脱炭素社会の実現にも貢献していく方針です。
最終更新日:2025年5月29日