大阪府枚方市中東部、JR学研都市線「長尾」駅周辺で進められている大規模な土地区画整理事業「長尾駅周辺まちづくり」は、長尾駅東地区(約6.2ha)、長尾播磨谷地区(約29.8ha)、長尾荒阪地区(約40.7ha)の3地区から構成されます。
第二京阪道路および2027年開通予定の新名神高速道路に近接する交通利便性の高い立地ながら、無秩序な土地利用や耕作放棄地の増加といった課題を抱えていたため、地権者主導のまちづくり検討会が設立され、計画的で持続可能なまちづくりが本格化しています。
現在、各地区の検討会では事業協力者との覚書を交わし、都市機能の集積と自然環境への配慮を両立したゾーニングや土地利用計画を進めており、2025年度中には土地区画整理準備組合の設立が予定されています。
→枚方市 長尾駅周辺まちづくり
→日刊建設工業新聞 長尾駅東側3地区区画整理、事業協力者に鴻池組JVら/まちづくり検討会
長尾駅周辺まちづくりの概要
1. 長尾駅周辺地区の位置と交通利便性
長尾駅周辺は、大阪府枚方市の中東部に位置し、JR学研都市線の長尾駅、第二京阪道路、新名神高速道路(2027年度開通予定)に近接する交通利便性の高いエリア。都市計画道路の整備も進み、今後さらなる利便性向上が期待されている。
2. 3地区での土地区画整理事業に向けた取り組み
長尾駅東側の3地区(長尾荒阪・長尾駅東・長尾播磨谷)では、令和5年末から令和6年初頭にかけて地権者によるまちづくり検討会が設立。2025年度中の土地区画整理準備組合設立を目指し、事業化への準備が進められている。
3. 事業協力者の選定と役割
各地区では以下の事業協力者が選定され、覚書を締結:
長尾荒阪地区(約40.7ha):鴻池組・シーアールイーJV
長尾駅東地区(約6.2ha):竹中土木・高松建設JV
長尾播磨谷地区(約29.8ha):大和ハウス工業・戸田建設JV
4. まちづくり構想の策定と対象区域
枚方市は2022年9月、「長尾駅周辺地区まちづくり構想」を策定。市街化調整区域約95ヘクタールを対象に、交通結節点機能を活かした広域拠点の形成を図る。商業・住居・福祉・産業など多様な都市機能の集積を目指している。
5. 都市計画マスタープランにおける位置付け
本地区は「環境共生ゾーン」に指定されており、将来的な市街化区域への編入も視野に入れた計画的発展が期待されている。都市機能の集積と良好な居住環境の形成、産業の集積、交通ネットワーク強化などが重点方針に掲げられている。
6. ゾーニングとまちづくり方針
長尾駅の立地特性を活かし、商業・産業系施設の誘導による広域拠点形成を目指す。加えて、脱炭素社会や自然環境との共生に配慮した緑化空間づくり、安全で快適な歩行・自転車空間の整備、既存施設との調和が図られる。
7. 今後の行政対応と都市計画の方向性
土地区画整理の進展に合わせて、大阪府と枚方市は用途地域の見直しや地区計画の設定を検討中。地権者主体の取り組みに対して、行政は技術的支援を行い、持続可能で秩序ある都市形成の実現を後押しする。

長尾駅周辺は、京阪沿線の中でも特に交通アクセスに優れた地域です。JR長尾駅から京橋駅まで30分でアクセス可能な鉄道利便性に加え、第二京阪道路や新名神高速道路に接続する八幡京田辺ICが至近にあり、広域的な移動においても優位性を持っています。
こうした立地条件を活かし、地域全体で約95ヘクタールにわたる市街化調整区域を対象に、将来的な都市機能の集積と良好な居住環境の整備を見据えたまちづくりが進行しています。

ゾーニングでは、長尾駅への近接性を活かし、商業・業務・医療などの都市機能を集積する「広域拠点ゾーン」、住宅と共存する「良好な住環境ゾーン」、さらにはため池や農地を活用した「環境共生ゾーン」がバランスよく配置される予定です。
また、新名神や第二京阪の沿道には産業系施設の立地を促し、広域交通ネットワークを活かした経済活動の活性化を図ります。地域資源や景観との調和にも配慮した持続可能なまちづくりがめざされています。
長尾駅東地区

長尾駅東地区は、駅に隣接する約6.2ヘクタールのエリアで、2023年12月にまちづくり検討会が設立されました。竹中土木・高松建設JVが事業協力者として選定され、駅前にふさわしい都市機能や住宅の導入が検討されています。
都市計画道路の整備が進む中、公共施設や歩行者空間の充実を図ることで、交通結節点としての機能強化と快適な生活環境の両立が目指されています。また、ゾーニング計画では、商業住居ゾーン・自然環境ゾーンが配置されています。
長尾播磨谷地区

長尾播磨谷地区は、約29.8ヘクタールの広さを持ち、2024年2月にまちづくり検討会が発足しました。大和ハウス工業・戸田建設JVが事業協力者に決まり、商業や福祉施設の導入とともに、自然と調和した都市空間づくりが進められています。
内里高野道線や牧野長尾線の整備によりアクセス性の向上が見込まれており、地域の生活インフラとして重要な役割を担うことが期待されています。また、ゾーニング計画では、医療・商業ゾーンやにぎわい創出ゾーン、やすらぎゾーンなどが配置されています。
長尾荒阪地区

長尾荒阪地区は、3地区の中でも最大規模となる約40.7ヘクタールを擁し、2024年1月に検討会が設立されました。鴻池組・シーアールイーJVが事業協力者として参画し、主に産業系施設の立地を中心に、周辺の自然や農地を生かしたまちづくりが計画されています。
新名神高速道路の整備効果を受けた物流・産業の拠点化が見込まれる一方で、ため池や緑地の活用による景観・環境面での配慮も図られています。また、ゾーニング計画では、生活福祉ゾーンや産業集積ゾーン、文教ゾーンが配置されています。
最終更新日:2025年6月5日