空調設備の入れ替えや建物メンテナンスのため、2023年4月10日から休館していた丸の内に建つ「三菱一号館美術館」が2024年11月23日に再開館します。
三菱一号館は、1894年にイギリスのクイーン・アン様式で建設された日本初の本格的な洋風貸事務所建築です。その後、高度経済成長期に老朽化やオフィス需要逼迫などによって1968年に解体されましたが、2010年に明治期の設計図や資料を基に忠実に復元され、美術館として生まれ変わりました。現在も、歴史と現代が交差する文化的なスポットとして、多くの人々に愛されています。
三菱一号館美術館の概要
- 建物の特徴
三菱一号館は、1894年(明治27年)に建設され、丸の内エリアで初のオフィスビルとして知られています。設計はジョサイア・コンドルによるもので、当時の西洋建築技術を取り入れた先駆的な建物です。 - 建築様式
イギリスのクイーンアン様式を基調とし、煉瓦造の外壁が特徴です。屋根はゴシック様式を取り入れた尖塔デザインで、窓枠外側には安山岩、腰壁部分には花崗岩が用いられています。 - 再建の歴史
一度解体されましたが、2009年に当時の設計図や資料を基に忠実に復元されました。その後、2010年に三菱一号館美術館として生まれ変わり、文化施設としての役割を果たしています。 - 美術館としての活動
2010年4月の開館以降、国内外の美術作品をテーマにした約40本の企画展を開催。中でも、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックを中心としたコレクションが有名です。 - 設備メンテナンスと再開館
2023年4月から設備入替・建物メンテナンスのため長期休館していましたが、2024年11月23日に再開館予定。これを機に、さらなる展覧会の充実を目指しています。 - 再開館後の記念展覧会
再開館記念展「不在―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」では、当館の核となるロートレック作品に加え、現代アーティストのソフィ・カルと協働した新たな視点を提示します。 - 丸の内エリアのランドマーク
丸の内エリアの歴史と現代性を象徴する建物として、多くの人々が集う文化と交流の場となっています。建物自体がエリアのアイデンティティの一部となっています。 - 観光・文化拠点としての価値
美術館の活動を通じて、丸の内の街づくりと観光振興にも貢献。歴史的建築と現代アートが融合したユニークな空間として高い評価を受けています。
この建物を設計したのは、明治政府の建築顧問であったジョサイア・コンドル、施工は「曽禰達蔵(そね たつぞう)」が現場主任として直営工事で行われました。耐震性を考慮した煉瓦壁や杭基礎とコンクリート布基礎の併用など、当時としては最先端の建築技術が使用されました。復元時にもその技術が再現されており、歴史的価値と現代の建築技術が融合した建物として注目を集めています。
三菱一号館は、明治期に「一丁倫敦」と呼ばれた丸の内エリアの街並みを象徴する建築物の一つでもあります。再建後は美術館やカフェを併設し、文化や歴史を感じられるランドマークとして、地元の人々や観光客に親しまれています。丸の内の洗練された景観の中で、ひと際目を引く存在です。
外観はイギリス・クイーンアン様式を基調とした煉瓦造で、屋根は尖ったゴシック様式、窓枠の外側は安山岩、腰壁は花崗岩を用いたエリザベサン様式の折衷デザインです。施工当時、屋根は日本産の石板を使ったスレート葺でした。
館内の三菱一号館美術館では、2010年の開館以来、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックを中心とした展覧会や現代アートの企画展を数多く開催。多彩な作品を通じて、新しい視点や発見を提供し続けています。また、美術館併設の「Café 1894」では、当時の銀行営業室をイメージしたクラシカルな空間で、くつろぎの時間を楽しむことができます。
歴史的建築と現代的な美術館、そしてくつろぎのカフェが一体となった三菱一号館は、丸の内の文化と歴史を象徴するスポットです。明治時代の趣を感じながら、アートや美味しいコーヒーを楽しみ、過去と現在を結ぶ特別なひとときを体験してみてはいかがでしょうか?
下記、リンク先には、当ブログ管理人「きりぼうくん」が三菱一号館の歴史や魅力を詳細にまとめた記事が掲載されています。ぜひ、ご一読ください。
→丸の内LOVE Walker 歴史的建造物と高層ビルが融合! 都市開発マニアが案内する「丸の内建築ツアー」第2回最新鋭の超高層オフィスと丸の内ビジネス街の黎明期のオフィスが共存!
三菱一号館美術館は、いよいよ2024年11月23日に再開館を迎えます。再開館を記念して行われる展覧会「再開館記念『不在』―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」では、美術館の核となるコレクションであるトゥールーズ=ロートレック(1864-1901)の作品を展示するとともに、現代フランスを代表するアーティスト、ソフィ・カル(1953-)氏との協働プロジェクトを実現します。このプロジェクトは、2020年の10周年記念展で企画されていたものの、新型コロナウイルスの影響で延期されていました。
ソフィ・カル氏は「喪失」や「不在」をテーマに作品を作り続けてきたアーティストで、今回の展覧会では「不在」という主題を提案しました。一方、トゥールーズ=ロートレックは「存在」に深い関心を寄せ、人間の心理や存在そのものを描き続けました。再開館記念展では、カル氏が提示する「不在」を通じて、美術館活動や展覧会の「存在」のあり方を改めて問い直します。
最終更新日:2024年11月18日