東京都は、多摩地域の将来像を示す「多摩のまちづくり戦略」(案)を公表しました。本戦略では、多摩地域の発展を促進するためのさまざまな取り組みが示されており、目標年次を2050年代と定めています。戦略の基本コンセプトとして、「個性がいかされ活発な交流により、活力とゆとりある持続可能な多摩 ~緑のTAMA手箱~」を掲げています。これに基づき、多摩地域における都市機能の集積と既存ストックの活用を組み合わせた新たなまちづくりを推進し、より魅力的な地域の形成を目指します。
この戦略の柱となるのは、「TAMA拠点形成プロジェクト(多摩地域の58拠点)」「TAMAまちづくり推進プロジェクト(モノレール延伸や立川周辺整備)」「TAMAニュータウンプロジェクト(仮称)」の3つのプロジェクトです。これらのプロジェクトを通じて、多摩地域全体の活性化を図ることが目的となっています。特に、多摩都市モノレールの延伸計画や、自然と都市が融合する持続可能なまちづくりの推進に重点が置かれています。今後は、東京都が各自治体や関係機関と協力しながら、より具体的な取り組みを進めていく予定です。
「多摩のまちづくり戦略」(案)の概要
- 将来像の目標
2050年代に向け、多摩地域のまちづくりは「個性が活かされ活発な交流によって活力とゆとりを持つ持続可能な多摩」を目指し、緑豊かな環境を活用した発展を進める。 - まちづくりの方向性
都市機能の集積とストック活用型のアプローチを選択し、集約型地域構造への再編を進め、地元自治体との連携でソフト面の支援も強化。 - 具体的なプロジェクト
多摩地域の58箇所で拠点を形成し、都市モノレールの延伸や立川周辺の開発を含む「TAMAまちづくり推進プロジェクト」、ニュータウンの再開発を推進。 - 地域の特色と魅力
多摩地域には、農業、森林、観光資源など多様な自然環境があり、これらを活用して新しいライフスタイルや働き方を提案。教育施設や国際人材の育成も視野に。 - インフラ整備と技術革新
リニア中央新幹線や次世代型モビリティ(自動運転車、ドローン配送)を活用した、地域間交流の活性化と新しいエネルギー政策の導入(例:水素エネルギー)。 - 社会変化への対応
コロナ後のライフスタイルの多様化や新たな働き方を受けて、地域の活性化とともに、子育て世帯や高齢者の生活支援に焦点を当てたまちづくり。 - 地域資源の活用と観光振興
高尾山や歴史的資源を生かした観光地としての魅力向上を目指し、地域資源を活用した観光ルート発信や、スポーツ、農業関連施設の整備を推進。

多摩のまちづくり戦略では、都市機能の集約とストック活用を組み合わせることで、多摩の特性を活かしたまちづくりを進めていく方針です。具体的には、住環境の整備、交通ネットワークの強化、地域経済の発展、自然環境の保全など、多岐にわたる施策が盛り込まれています。これにより、多摩地域の持続的な発展と、より魅力的な都市空間の形成を目指します。
この戦略では、多摩地域が持つ豊かな自然環境と都市機能のバランスを最適化し、住みやすさと利便性を両立させることを目標としています。また、地域ごとの特性を活かしつつ、広域的な視点からの発展を促すために、多摩地域全体のネットワーク強化にも取り組みます。

多摩地域には、企業や大学が集積し、高度な知識や技術が蓄積されているほか、豊かな自然環境や、地域が育んできた歴史や文化など、多様な魅力が存在しています。これらの特色は、多摩地域ならではの個性として、地域の発展に大きく貢献する可能性を秘めています。
そのため、今後のまちづくりにおいては、これらの地域資源を最大限に活かし、多摩ならではの魅力を高めることが重要です。さらに、地域の強みを活かした産業の振興や、文化資源を活用した観光振興など、多摩の特色を活かした取り組みを進めることで、地域の発展を持続可能なものとすることが求められます。また、地域の魅力を広く発信し、多摩地域への関心を高めることも、活力あるまちづくりにとって欠かせない要素となります。

少子高齢化や人口減少が進行する中で、多摩地域が持続的に発展していくためには、都市経営のコストを効率的に管理しながら、誰もが快適に暮らせる環境を整備することが不可欠です。特に、生活に必要な機能を身近な地域に集約し、移動の負担を軽減するとともに、公共施設や商業施設、医療・福祉サービスなどを適切に配置することが求められます。
このような「集約型地域構造」への移行を進めることで、住民が日常生活を便利に過ごしながら、安心して暮らせる都市を実現することができます。加えて、各拠点の役割を明確にし、拠点間の交流や連携を強化することも重要です。例えば、鉄道やバスなどの公共交通機関を活用しながら、地域間のアクセスを向上させることで、広域的な交流が活発になり、経済や文化の発展にもつながります。これにより、多摩地域全体の魅力をさらに向上させることが可能になります。

東京都が掲げる「都市づくりのグランドデザイン」では、多摩地域の未来の姿として「活力とゆとりのある高度成熟都市」を目指しています。これは、多摩地域が持つ多様な魅力を活かしながら、快適で持続可能な都市を形成することを意味しています。また、「都市計画区域マスタープラン」では、成長と成熟が両立した都市を実現することが目標とされており、都市の発展と環境の保全、住民の暮らしやすさの向上を同時に進めていく方針が示されています。
これらの方針に基づき、多摩地域のまちづくりは、経済や産業の活性化だけでなく、住環境の整備や公共インフラの充実、自然環境の保全など、多面的な視点から進めていくことが求められます。また、これらの目標を実現するためには、行政だけでなく、地域住民や企業、大学など、多様な主体が協力し、まちづくりに取り組むことが不可欠です。こうした共創型のまちづくりを進めることで、多摩地域全体の発展と、住民の豊かな暮らしが実現されることが期待されます。

近年、気候変動の影響により、台風や豪雨などの自然災害が頻発し、その被害も激甚化しています。多摩地域においても、大規模な水害や土砂災害のリスクが高まっており、こうした自然災害に対する防災・減災対策を強化することが急務となっています。そのため、河川や排水設備の整備、雨水貯留施設の設置など、ハード面での対策を進めるとともに、地域住民の防災意識を高めるための啓発活動や、避難計画の充実など、ソフト面での取り組みも重要となります。
また、社会の変化に適応できる強靭な都市を実現するためには、エネルギーの自立性を高め、持続可能な都市づくりを推進することも不可欠です。再生可能エネルギーの活用や、環境に配慮した建築物の整備、省エネルギー技術の導入などを進めることで、環境負荷の低減と都市の持続性を両立することが可能となります。さらに、これらの取り組みを地域全体で推進し、住民や企業、行政が一体となって強靭なまちづくりを進めることで、多摩地域が安全・安心で持続可能な都市へと発展していくことが期待されます。

この図は、多摩地域に点在する58の拠点を活用し、それぞれの地域の特性に応じた発展を目指す「TAMA拠点形成プロジェクト」の対象エリアを示しています。これらの拠点では、大学や企業、行政機関との連携を強化し、地域ごとに特色あるまちづくりを推進することが計画されています。これにより、多摩地域の各地で、多様なライフスタイルや産業が共存する魅力的な都市空間が創出されることが期待されます。
さらに、このプロジェクトでは、各拠点を相互につなぎ、連携を深めることで、多摩地域全体の発展を促進することも目指しています。具体的には、交通インフラの整備、商業施設の充実、産業の誘致、文化・教育機関の活用など、多方面からのアプローチを行い、それぞれの地域の強みを最大限に活かした成長を促すことが重要視されています。

多摩都市モノレールの延伸計画を示した路線図です。現在の多摩都市モノレールは、立川を中心に南北へ運行していますが、この計画により、さらに北へ延びることで、多摩地域のアクセス性が大幅に向上します。具体的には、箱根ケ崎方面への延伸が予定されており、沿線地域の活性化にもつながることが期待されています。
この延伸により、交通の利便性が向上するだけでなく、新たな住宅開発や商業施設の誘致も進み、地域全体の魅力が向上します。特に、これまで公共交通機関が十分に整備されていなかった地域にとっては、通勤・通学の利便性が格段に高まることになります。また、新しい駅の開業によって、人の流れが変わり、地域経済の活性化にも寄与することが見込まれています。

このイメージパースは、モノレール延伸によって都市がどのように変化するかを描いたものです。新たな駅が設置されることで、その周辺には商業施設や住宅地が整備され、利便性の高い街が形成されることが期待されています。特に、新駅周辺では、歩行者のための空間整備やバリアフリー化が進められ、より快適な都市環境が実現することが見込まれています。
また、モノレールの延伸により、沿線地域の発展が促進され、これまで交通の便が悪かった地域でも、新たなまちづくりが進められるようになります。これにより、多摩地域の広範囲にわたって、住みやすさと利便性を兼ね備えた都市空間が生まれ、将来的にはさらに多くの人々がこの地域に魅力を感じ、定住することが期待されます。新たなモノレールの延伸は、多摩地域全体の発展を支える大きな要素となるでしょう。
最終更新日:2025年2月4日