2025年時点で竣工済みの世界の超高層ビルやタワー(自立式鉄塔)の高さランキングTOP10は、建築技術の進化と都市化の進行を象徴する驚異的な建物群が並んでいます。これらの超高層建築物は、単なる建築物としての機能にとどまらず、都市のランドマークや観光名所、そして経済・文化の中心地として重要な役割を担っています。特に、高さを競う超高層ビルやタワーは、建設にかかる費用や技術的な挑戦だけでなく、その土地の経済成長や国際的な影響力をも象徴する存在となっています。
現在、世界の最高層ビルやタワーの多くはアジアや中東、北米を中心に存在し、特にドバイや上海、ニューヨークなどの都市が注目されています。これらの都市は、高層ビル建設を通じて「未来の都市像」を提示しており、その設計や建築における革新性も大きな魅力です。また、高さだけでなく、ビルのデザインや用途、構造の革新性にも焦点を当てることで、超高層ビルの進化がどのように進んでいるのかを理解することができます。
2025年時点でのランキングには、最先端の技術や建設手法が駆使されており、これらのビルは単なる高さの競争を超えて、持続可能性や省エネルギー技術の導入、新しいライフスタイルの提案といった観点でも注目を集めています。今回は、そんな壮大な建築物群の中から、世界の高さトップ10にランクインした超高層ビルやタワーを詳しく紹介していきます。
10位 ワンワールドトレードセンター
- アメリカ合衆国 ニューヨーク
- 地上104階、高さ541.3m
ワン・ワールド・トレード・センター(1 WTC)は、アメリカ・ニューヨーク市にある高さ541m、104階建ての超高層ビルで、2014年に完成しました。これは、2001年9月11日のテロで破壊された旧ワールド・トレード・センターの跡地に建てられたもので、アメリカで最も高いビルです。元々はフリーダム・タワーと呼ばれていましたが、同一街区内の他のビル名との一貫性を保つために現在の名前に変更されました。
このビルの設計は、当初ダニエル・リベスキンドが担当しましたが、収益性などの理由からスキッドモア・オーウィングス・アンド・メリル(SOM)により再設計されました。最も特徴的な部分は、米国独立宣言の年である1776フィート(約541m)の高さであり、デザインにはモニュメント性が意図されています。ビルはテロ攻撃を受けた土地の再生を象徴しており、その形状や構造はニューヨークのスカイラインを新たに定義しました。
ワン・ワールド・トレード・センターは、世界的にも高層ビルとして注目されており、その建設には多くの困難が伴いました。工事は2004年に始まり、途中で発見された遺骨や景気後退などによって何度も遅延しましたが、2012年には高さでニューヨーク市最強となり、最終的に2014年に竣工しました。
9位 CNタワー
- カナダ トロント
- 高さ553.3m
CNタワー(シーエヌタワー)は、カナダ・オンタリオ州トロントに位置する高さ553.33メートルの通信および観光用の塔です。1976年に完成し、当時は世界で最も高い自立型構造物でした。タワーはカナディアン・ナショナル鉄道(CN)が建設し、1995年に政府に譲渡されました。タワーには4つの展望台があり、最も高い展望台「スカイポッド」は447メートルの高さに位置しており、2008年まで世界で最も高い展望台でした。また、タワーはトロントのスカイラインを象徴するアイコンであり、年間200万人以上の観光客を引き寄せています。
タワーの構造は、6つのエレベーターと3つの大きな支持脚を備え、頂上には放送用のアンテナがあり、テレビやラジオの信号を送信しています。最も高い展望台は346メートルにあり、ホライゾンズ・カフェや屋内展望台が設置されています。さらに、352メートルには回転レストラン「360」や、356メートルには世界最上級の遊歩道「エッジウォーク」があります。
CNタワーは、今でも西半球で最も高い自立型構造物として存在しています。
8位 ロッテワールドタワー
- 韓国 ソウル
- 地上123階、高さ555m
ロッテワールドタワー(Lotte World Tower)は、韓国ソウル特別市松坡区に位置する多目的超高層ビルで、地上123階、地下6階、総高さ555メートルを誇ります。これは韓国で最も高いビルであり、超高層ビルとしては世界でも7番目に高いビルです。完成当初、ビルの屋上には「ソウルスカイ」と名付けられた展望台が設けられ、これにより世界で3番目に高い展望台を持つ建物となりました。
このタワーの設計には多くの先端技術が使われ、最大80メートルの風速やマグニチュード9の地震にも耐える耐久性を備えているといわれています。外装は韓国の伝統的な陶磁器にインスパイアされた淡い色のガラスで覆われ、金属のフィリグリーアクセントが特徴です。内部は、オフィス、ショッピングモール、ホテル、レストラン、そして「ロッテコンサートホール」など、さまざまな施設が入っています。
タワーの建設は1998年に始まりましたが、複数回の計画変更や工事中断を経て、最終的に2017年にグランドオープンしました。その高さ555メートルは、韓国初の100階を超える建物として注目されました。また、ビル内には非常階段が広く確保され、火災時には19基のエレベーターが避難用として使われるなど、最先端の安全技術が導入されています。さらに、24時間体制でテロ対策を行う「L-SWAT」チームが常駐しています。
「ソウルスカイ」展望台では、ガラス床を備えたスカイショーが楽しめ、最上階にはプレミアムラウンジバーも完備されています。タワーのデザインと機能性は、韓国の現代的な象徴として、世界的にも高く評価されています。
7位 平安国際金融センター
- 中国 深セン
- 地上115階、高さ599.1m
平安国際金融中心(Ping An Finance Center)は、中国広東省深圳市福田区に位置する超高層ビルで、地上115階、地下5階建て、高さ599.1メートルを誇ります。2017年に竣工し、竣工時、深圳市で最も高い建物、中国国内では2番目、世界では5番目に高いビルとなりました。設計はアメリカのKohn Pedersen Fox Associatesが手掛け、Ping An Insuranceの本社ビルとして建設されました。
この建物は、オフィス、ホテル、小売スペース、会議センター、高級ショッピングモールを備えています。116階には「フリースカイ」と呼ばれる展望台があり、562.5メートルの高さで360度の景観が楽しめます。また、最新技術を駆使したインタラクティブな展示や深セン文化を紹介するエリアも設けられています。
建設中には、資材問題で工事が一時中断されるトラブルもありましたが、最終的には計画を修正し完成しました。当初の計画では660メートルの高さが予定されていましたが、航空路を妨げないために高さを600メートルに変更。その結果、599.1メートルで完成し、深圳市内でのランドマークとしての地位を確立しました。
6位 アブラージュ・アル・ベイト
- サウジアラビア メッカ
- 地上120階、高さ601m
アブラージュ・アル・ベイト・タワーズは、サウジアラビア・メッカにある複合施設で、7棟の超高層ビルから構成されています。中核となるホテルタワー「メッカ・ロイヤル・クロック・タワー・ホテル」は地上120階、高さ601mで、世界で3番目に高い超高層ビルであり、世界最大の時計が設置されています。この時計は直径43m、25km先から視認可能で、塔全体は純金で装飾された尖塔を含む壮大なデザインです。施設全体の延べ床面積は約150万㎡と世界屈指の広さを誇り、総工費は150億ドルにのぼります。
このタワー群はメッカ大モスクに隣接し、巡礼者向けの宿泊施設や商業施設を備えています。特にホテル部分は約10万人を同時収容可能で、部屋からカアバ神殿を望むことができます。祈祷所や巨大ショッピングモール、駐車場、ヘリポートなども完備され、近代的な設備が巡礼者の利便性を高めています。
建設にはオスマン帝国時代のアジャド要塞が取り壊されるなどの論争も伴いましたが、このプロジェクトは都市の近代化と巡礼者受け入れ能力の強化を目的とし、メッカの新たなランドマークとなっています。
5位 広州塔
- 中国 広州
- 地上37階、高さ602m
広州塔(Canton Tower)は、中国広州市海珠区に位置する地上37階、地下2階、高さ602メートルの多目的展望塔です。2005年に着工し、2010年9月29日に運用を開始、同年のアジア競技大会に合わせて一般公開されました。一時は世界一の高さを誇るタワーでしたが、現在では東京スカイツリーに次いで世界で2番目、中国国内では最も高いタワーです。
この塔は、独特の「スリムウエスト」と呼ばれるねじれた形状が特徴で、オランダの建築事務所とイギリスのアラップが共同設計しました。内部にはテレビ・ラジオの送信施設、展望台、回転レストラン、4Dシネマ、屋外スカイウォークなどが配置され、屋上展望台は地上488メートルに位置します。また、最上部には世界最高水準の屋外展望台があり、広州の街並みや珠江の景観を楽しむことができます。
夜間にはLEDを活用した照明が塔全体を彩り、都市の象徴的な存在として知られています。建設当時の最新技術とデザインが融合した広州塔は、観光やビジネスの拠点として多くの人々に親しまれています。
4位 上海タワー
- 中国 上海
- 地上128階、高さ632m
上海タワー(Shanghai Tower)は、中国・上海市浦東新区に位置する地上128階、地下5階建て、高さ632メートルの超高層ビルで、中国で最も高く、世界でも3番目に高い建物です。建設は2008年に開始され、2016年に完工しました。この建物は、隣接するジンマオタワーや上海環球金融中心と並ぶ「陸家嘴トリオ」を形成しています。
タワーのデザインは、米国の建築事務所ゲンスラーが担当し、螺旋状にねじれた二重のガラス外壁が特徴です。この構造により風圧を抑えつつ、9つの異なる高さのアトリウムが設けられ、公共空間として利用されています。また、最上部には高さ562メートルの展望台があり、世界で最も高い展望台として知られています。建物内にはオフィス、商業施設、ホテル、イベントスペースが配置され、特に120階に位置する「Jホテル上海タワー」は世界最高地点のホテルです。
持続可能性にも注力しており、雨水の利用や風力発電を導入。二重壁構造は熱効率を高めています。完成以降、LEEDプラチナ認定を取得し、現代都市の高層ビルの新たな基準を提示しています。
3位 東京スカイツリー
- 日本 東京
- 地上29階、高さ634m
東京スカイツリーは東京都墨田区押上に位置する地上634mの電波塔で、世界で最も高いタワーとして知られています。地上29階、地下1階建てで、2012年2月に完成し、同年5月に開業しました。この施設は東武鉄道が中心となり建設され、総事業費は約650億円です。
建設地は旧貨物駅跡地で、航空法の高さ制限を改正して実現しました。スカイツリーは、都市部での電波障害を解消するために建設され、350mと450mの高さに展望台があります。展望台は飲食施設やガラス張りの回廊を備え、多くの観光客を引きつけています。
この建物は日本の伝統美と現代技術を融合させたデザインで、正三角形から円形へと変化する独特の外観を持ちます。ライトアップも「粋」や「雅」などのテーマで行われ、東京の夜景を彩っています。スカイツリーは地域活性化に寄与し、年間3000万人以上の来場者が見込まれています。
2位 ムルデカ PNB118
- マレーシア クアラルンプール
- 地上118階、高さ680.5m
ムルデカ118は、マレーシア・クアラルンプールに建つ地上118階、地下5階、高さ680.5mの超高層ビルで、2023年に完成しました。世界で2番目に高いビルであり、東南アジアでは最も高い建物です。このビルは、マレーシアの投資会社Permodalan Nasional Berhad(PNB)の本社として設計され、建設費は約50億リンギット。批判もある中、経済的な利益創出が期待されています。
ビルの用途は多岐にわたり、118階のうち100階が賃貸スペースで、オフィス、ホテル、住宅、商業施設が含まれます。最上階には展望デッキや美術館が設置され、地下には8,500台収容の駐車場を完備。環境デザインに優れ、LEEDなどの国際認証でプラチナ評価を取得しています。
デザインはマレーシアの独立を象徴する意匠が施され、ダイアグリッド構造を採用。夜間にはLEDライトが輝きます。また、1957年の独立宣言の舞台であるムルデカ・スタジアムに近接し、象徴的な存在として機能しています。
1位 ブルジュ・ハリファ
- アラブ首長国連邦 ドバイ
- 地上163階、高さ829.8m
ブルジュ・ハリファは、アラブ首長国連邦・ドバイにある高さ829.8m(アンテナ含む)で地上163階建ての超高層ビルです。2004年に建設が始まり、2009年に外観が完成、2010年に正式オープンしました。尖塔を含む高さ828mは、台北101を超え世界一の高さを誇ります。このビルは、石油依存から脱却し観光やサービス業の発展を目指すドバイ政府の政策の象徴として設計されました。
デザインは、イスラム建築やサマラの大モスクにインスパイアされています。Y字型の床配置により構造安定性を高め、住居やホテル空間を効率的に利用可能です。さらに、3つの切り欠き部分は、ヒメノカリスという花から着想を得ており、独特の美しさを演出します。尖塔部分を含む外装には、反射ガラスやステンレス鋼が用いられ、砂漠の過酷な環境に対応した設計です。
ビル内には57台のエレベーター、8台のエスカレーター、304室のアルマーニホテルや900戸の住宅、企業オフィス、屋外プール、展望台などが備わり、多目的開発の中心として機能しています。この構造はスキッドモア・オーウィングス・メリル(SOM)により設計され、建築の歴史に新たな記録を刻む建造物となっています。
最終更新日:2025年1月4日