登戸土地区画整理事業が進められている登戸・向ヶ丘遊園駅周辺地区は、川崎市の総合計画において地域生活拠点として位置付けられており、多摩区の中心市街地として商業、業務、住宅、文化施設などの都市機能が集積する重要な地区です。これまで急速な市街化が進む中で、公共施設や都市基盤の整備が十分でなく、住環境や防災、商業機能の面で課題を抱えていました。
そこで川崎市は、登戸土地区画整理事業を通じて道路や公園、下水道などの公共施設を整備するとともに、駅前の土地利用誘導や建物の共同化を進め、都市機能の集積と魅力的なまちづくりを推進しています。また、多摩川や生田緑地、文化施設など地域資源を活かし、歴史的なまちの特色を継承しながら、地域住民や企業、行政が連携して安心で快適な市街地の形成を目指しています。さらに、民間活力を活用した駅前再開発や商業施設整備を通じて、多様な都市機能が集まる賑わい拠点としての形成も進められています。2025年時点では建築物移転棟数や道路築造延長などの進捗率が100%となり、ほぼ完了といった状態になりました。
登戸土地区画整理事業の概要
1. 事業の目的
登戸・向ヶ丘遊園駅周辺地区の中心市街地形成。
都市機能の集積と魅力的なまちづくりの推進。
住環境改善と防災性向上の確保。
2. 土地区画整理事業
約37.2ヘクタール規模の施行事業。
都市計画道路や公園、交通広場の整備。
権利者との調整による土地利用更新。
3. 土地利用計画
商業・業務・住宅の複合配置による中心市街地形成。
駅前の民間主導共同化と沿道型都市機能集積。
利便性と賑わいの両立した街区整備。
4. 公共施設整備
都市計画道路や特殊街路の整備。
街区公園や駅前広場の新設。
下水道・雨水排水施設による生活環境改善。
5. 歴史・文化資源の活用
宿場町としての歴史と文化の継承。
生田緑地や向ヶ丘遊園の自然・文化資源。
地域住民と連携した魅力ある都市空間。
6. 将来像とまちの魅力
自然・文化に包まれた活気あるまち。
安心・快適な生活環境と賑わい拠点の形成。
住み続けたい、訪れたい街の実現。
7. 再開発と今後の展開
駅前再開発による商業・住宅複合施設の整備。
地域住民・行政・民間事業者の連携。
核と軸の形成による戦略的まちづくりの推進。

登戸土地区画整理事業は、川崎市が施行する約37.2ヘクタール規模の事業で、総事業費は約994億円にのぼります。昭和63年9月に事業計画が決定され、都市計画決定を経て事業が開始されました。当初、地区内人口は5,368人で人口密度は約144人/ha、権利者は758人でした。土地区画整理事業の目的は、都市計画道路や公園、交通広場などの基盤整備を通じて、多摩区の商業・業務の中心地区としての都市機能強化と安全で快適な市街地環境の形成にあります。事業は令和19年3月までの長期にわたり、段階的に進められています。

本地区は、商業、業務、住宅の機能を複合的に配置することで、健全で魅力的な市街地の形成を目指しています。特に駅周辺では民間主導の共同化を促進し、登戸駅前では街区の統合により都市機能が集積する空間を創出しています。また、両駅を結ぶ都市計画道路登戸2号線沿線では、多様な都市機能が集まる沿道型の中心市街地形成を推進しています。これにより、利便性と賑わいを兼ね備えたまちの実現を図っています。


事業では、都市計画道路(登戸1号線~3号線、登戸野川線、登戸駅線)や区画道路、特殊街路、街区公園、駅前交通広場など、多岐にわたる公共施設を整備しています。また、道路と併せて雨水排水施設や下水道管の整備も進められ、生活環境の改善や降雨時の浸水被害軽減に寄与しています。これにより、住民が安心して暮らせる都市基盤の整備が進行しています。


新設された登戸2号街区公園は、市と地域住民が協働して公園レイアウトや管理運営計画を検討し、株式会社井出コーポレーションとの基本協定に基づきPark-PFI制度で整備が進められています。公園の名称は「登戸つくりと公園」とされ、地域の歴史や文化を反映した造語です。園内の芝生養生エリアは順次開放されており、カフェ等の施設設置については建設市場の状況を踏まえて調整中です。

登戸地区は江戸時代、津久井道沿いの宿場町として発展し、交通や物資の要衝として栄えました。向ヶ丘遊園駅周辺は、遊園地や生田緑地などの自然・文化施設により賑わいを形成してきました。両地区は、南武線・小田急線の交通利便性と、自然や文化資源を活かした交流の豊かさを持つ地域です。現在は土地区画整理事業により、老朽建物の建替えや土地利用更新が進み、まちの歴史を継承しつつ新たな価値を創出する段階にあります。

向ヶ丘遊園は、かつて「花と緑の遊園地」として多くの人々に親しまれました。開園後はモノレールや桜並木、山頂展望台などの魅力が地域の賑わいを支えました。遊園地閉園後も、藤子・F・不二雄ミュージアム、日本民家園、岡本太郎美術館などの文化施設が整備され、新たな観光資源として活用されています。これらのポテンシャルを生かし、地域全体の魅力向上が図られています。


将来像は「豊かな自然や文化に包まれた、活気とつながりのある心が弾むまち」です。登戸・向ヶ丘遊園の歴史や自然、文化を融合させ、人と人、人とまち、まちと自然の調和を図ります。水や緑に触れながら、誰もが訪れたい、住み続けたいまちの実現を目指すものとされています。駅周辺の賑わい拠点や沿道の魅力的な空間形成、災害時に安心できる公共空間の確保も重視されています。

まちづくりの基本軸として、「自然・文化・観光軸」「賑わいの核」「賑わい交流軸」を設定しています。自然・文化・観光軸は生田緑地や多摩川をつなぐ景観的な軸、賑わいの核は駅前の都市活動拠点、賑わい交流軸は両駅間を結ぶ通りを中心とした人の流れの創出を目指します。これにより、住民や来街者が楽しみながら交流できるまちの骨格を形成しています。

都市計画道路登戸2号線は、登戸駅と向ヶ丘遊園駅を結ぶ幹線道路で、単なる交通路ではなく、「多彩な人々を引き寄せ、人々が楽しみ、憩う通り」を目指したまちづくりの軸として整備されています。沿道権利者や地域住民、商業者が協働し、「まちづくりコンセプトブック」に基づく活動を進めており、通りの利活用や快適性の向上を重点課題としています。


様々な取組を通じて、登戸2号線沿道は、日常的に歩きたくなるウォーカブルな通りとして、賑わいや交流を創出する場として育てられました。また、沿道の権利者だけでなく、この地区に関わる多様な「仲間」と協働して道路空間を育むことで、まち全体の魅力向上と持続可能な都市環境形成を目指しています。今後も、商業者、居住者、来街者といった地域の人々が一体となり、魅力的な都市空間を創造する活動が継続される予定です。

登戸駅前地区では、令和6年11月に市街地再開発組合の設立が認可され、地上38階・地下2階の住商複合タワーマンション(延べ面積約63,500㎡、住戸約450戸)が計画されています。土地区画整理事業と合わせて、駅前の魅力的な空間形成や商業機能強化が進行中です。今後も地域住民、行政、民間事業者が連携し、まちの将来像実現に向けた「核」と「軸」の形成を戦略的に推進していく計画とされています。
過去の記事→2020年8月15日投稿 川崎都市計画事業 登戸土地区画整理事業
最終更新日:2025年10月24日

