2025年1月29日、名古屋市と地域関係者によって「熱田神宮周辺エリアプラットフォーム」の発足会が開催され、官民連携によるまちづくりの新たな枠組みが正式に始動しました。熱田神宮周辺エリアプラットフォームは、熱田神宮を中心とした周辺地域において、歴史的・文化的価値を最大限に活かしながら、持続可能で魅力的なまちづくりを進めていくための協議・連携体制として設立されました。
地域住民、地元企業、行政、大学、観光関係者など多様な主体が一堂に会し、エリアの将来像を共有しながら具体的なアクションに取り組んでいくことが期待されています。今後は、策定された「熱田神宮周辺まちづくり未来ビジョン」に基づいて、各種のプロジェクトや施策を段階的に展開し、地域の個性と魅力を高めながら、住む人・訪れる人の双方にとって誇りあるまちの実現を目指します。
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熱田神宮周辺エリアプラットフォームの概要
1. プラットフォームの発足
2025年1月、名古屋市と地域関係者により「熱田神宮周辺エリアプラットフォーム」が設立され、官民連携による新たなまちづくり体制が始動。
2. 歴史文化を核とした地域活性
熱田神宮の歴史的・文化的価値を活かしながら、地域の魅力と活力を高めることがまちづくりの核となっている。
3. 多様な主体の参画
地域住民、行政、企業、大学、観光関係者など多様な立場の人々が連携し、共通の将来像のもとで協働。
4. 持続可能な都市づくりの推進
歴史や文化の継承と調和した、持続可能かつ包摂的な都市空間の形成を目指す。
5. 未来ビジョンの策定
地域の方向性を定める「未来ビジョン」が策定され、具体的な施策や取り組みの指針となる。
6. 官民の役割分担と連携
行政が基盤整備を担い、民間や地域が創造的な活動を展開することで、相乗効果のあるまちづくりを推進。
7. 誇りと魅力のあるまちの実現へ
住む人・訪れる人双方にとって誇りを持てる、魅力的な熱田エリアの実現を目指して段階的にプロジェクトを展開予定。

熱田神宮周辺エリアは、1900年以上の歴史を誇る熱田神宮を核とし、長年にわたり名古屋の精神的支柱として地域社会と深く結びついてきました。伊勢の神宮に次ぐ格式をもつこの神社は、国内外から多くの参拝者・観光客を迎える一方で、地元の暮らしの中に根づいた信仰や文化としての役割も果たしています。
こうした背景を持つエリアを対象に、今後の時代の変化や社会的課題に対応しながら、その価値を次世代に継承していくことが求められています。本ビジョンの策定は、単なる観光振興や都市整備にとどまらず、地域の風土・歴史・人々の暮らしといった多層的な要素を踏まえた包括的なまちづくりの方針を共有することを目的としています。また、名古屋市全体の都市魅力の底上げにも資する取り組みとして、市域を超えた波及効果も見込まれています。

本ビジョンは、熱田神宮周辺エリアにおける将来的なまちの姿と、それを実現するための基本的な方針を定めたもので、産学官民による連携の成果として策定されました。背景には、令和5年度から始まった国土交通省の「官民連携まちなか再生推進事業」に名古屋市が選定されたことがあり、これを契機に本格的な議論がスタートしました。
勉強会には、地域住民やNPO、企業、大学、行政関係者などが参加し、多様な立場から地域の魅力と課題について意見が交わされました。その結果として取りまとめられたビジョンでは、「歴史と文化を体感する熱田神宮を中心とした観光まちづくりの推進」「人々をもてなし多様な交流を促進する現代の門前町・宿場町の形成」「過去から未来へと人の営みをつなげ育むエリアマネジメントの展開」といった方針が掲げられており、地域全体の一体的な発展を目指しています。また、このビジョンは名古屋市の総合計画や都市計画マスタープランと連携しており、行政施策との整合性が図られていることも特徴の一つです。


この未来ビジョンでは、まちづくりの象徴的なメッセージとして「共に紡ごう、熱田の想いを」という合言葉が掲げられました。この言葉には、地域の歴史や文化を大切にしながら、多様な立場の人々が手を取り合い、新しいまちの物語を共に築いていこうという意思が込められています。
「熱田の想い」とは、長く地域に住み続けている人々の誇り、地元で働く人々の愛着、観光や参拝に訪れる人々の敬意、そして未来の世代に対する願いといった、多様な視点から生まれる熱田に対する感情の総称です。それぞれの想いが交差し、調和することで、地域に根ざした持続的なまちづくりが可能になると考えられています。この合言葉は今後の取り組みを通じて、各プロジェクトのキーメッセージとしても活用され、地域内外に対する発信の核となっていきます。

熱田神宮を中心に広がるこのエリアは、古墳や社寺、門前町の面影を残す通り、伝統的な行事などが点在し、名古屋市の中でも特に歴史的な色合いが濃い地域といえます。また、名鉄・地下鉄・JRといった複数の公共交通が交差する交通の要衝でもあり、名古屋都心からのアクセスの良さや、名古屋港・金山といった周辺拠点との連携のしやすさも大きな特長です。
一方で、都市化の進展とともに、かつて存在した町並みや歴史的建造物の一部は失われ、無電柱化や景観形成など都市の質的向上を求める声も高まっています。また、訪問者のニーズが多様化する中で、観光資源の磨き上げや回遊性の向上、滞在促進といった観点からの整備が求められています。このように、地域の魅力と課題が共存する現状を踏まえ、バランスの取れた再生が今後の鍵となります。

未来ビジョンにおいては、熱田神宮を取り巻く地域資源を最大限に活かしながら、歴史・文化・自然・生活の各側面において一体的に発展させていくための視点が整理されています。具体的には、「歴史と文化を守り活かす視点」「水辺と緑の魅力を高める視点」「交通とまちの利便性を向上させる視点」「暮らしやすく、訪れやすいまちをつくる視点」などが挙げられています。
とくに注目されるのが、地域住民や市民団体、学生、地元事業者などの多様な担い手が、自らの意思でまちづくりに関わる体制づくりです。単なる行政主導ではなく、地域主体の取り組みとして進めることで、施策の継続性や地域への愛着が高まり、長期的な視野に立ったまちづくりが実現しやすくなります。こうした視点は、今後策定されるアクションプログラムにも反映されていく予定です。

本ビジョンでは、「歴史と文化が誇れるまち」「誰もが訪れたくなるまち」「住んで心地よいまち」という3つの将来像が提示され、それぞれの実現に向けた具体的なまちづくりの方針が定められています。たとえば、歴史文化を誇れるまちの実現に向けては、史跡や伝統行事の保全・活用、地域史の可視化といった取り組みが重視されています。
誰もが訪れたくなるまちのためには、観光資源の磨き上げ、街なかの回遊性の向上、魅力的なイベントの開催などが計画されています。さらに、住んで心地よいまちを目指すには、公共空間の質向上、交通結節機能の整備、防災・防犯対策の強化などが求められています。こうした多角的な方針により、地域住民・関係者・訪問者それぞれが熱田エリアの魅力を実感できる持続的な地域づくりが目指されています。

今後は、策定された未来ビジョンを基礎として、ビジョンを実現するための個別プロジェクトや施策を盛り込んだ「アクションプログラム」の策定が進められます。このプログラムでは、取り組みの優先順位や実施時期、関係主体の役割分担、必要な支援策などが明記される予定で、実行性の高いロードマップとして機能します。
今後のまちづくりの鍵を握るのは、プラットフォームを中心とした関係者間の継続的な対話と協働であり、計画の策定と同時に、地域内外への情報発信や参加機会の創出も重要な役割を果たします。行政が担うべき基盤整備と、民間や地域主体による創造的な取り組みを組み合わせることで、熱田らしい、温かみと格式を兼ね備えたまちづくりが進展していくことが期待されています。

名古屋鉄道が開発を進めていた観光商業施設「あつたnagAya(ながや)」が、2024年9月6日に1期開業、2024年12月に全面開業をしました。熱田神宮の玄関口にふさわしい新たなにぎわい拠点として、地元の魅力を再発見・発信することを目的としたこの施設は、木造平屋建て3棟に16の店舗が出店。老舗の名店から新業態の挑戦まで、食や文化、土産を通じて“あつた”の新たな名物を創出しています。


第1期には、元祖手羽先の「風来坊」や味噌串カツの「串かつ くった」、八丁味噌だれの牛たん定食を提供する「めぐろ」など、地元食材や伝統にこだわる飲食店が多数登場。また、名古屋たこ焼き「さく蛸」や100年を超える老舗茶舗「妙香園」、グルテンフリーのバウムクーヘンを扱う「ココトモファーム」など、多様な店が地域文化を体験できる場を提供します。加えて、ワゴンやキッチンカーの出店も予定されており、来訪者にとって日常と非日常が交差する“新しい熱田”の顔として期待されています。このような地域密着型の取り組みにより、熱田エリアの観光・交流拠点としての魅力がさらに高まりそうです。


「μ PLAT(ミュープラット)神宮前/meLiV(メリヴ)神宮前」は、名鉄・神宮前駅直結の商住複合施設として2021年7月に開業しています。
「μ PLAT神宮前」は、食品スーパーや飲食店、日用品販売店、サービス店舗など全21店舗が入居する4階建ての商業施設で、「おとなの住みたい/行きたいまち」をコンセプトに、地域住民や駅利用者の生活拠点としての賑わい創出を目指したものとなっています。施設内には、大きな吹抜空間やフードホール「μ’s Kitchen」、屋上庭園「μ’s Garden」など、ゆったりと過ごせる共用スペースも充実しており、イベントなども行われています。
また、上層階(5〜12階)には賃貸住宅「meLiV神宮前」を併設し、住まいと商業が一体となった都市型の利便性を提供。駅改札前店舗もリニューアルされ、コンビニや書店などが展開されるほか、順次クリニックなども開業しています。


熱田神宮駅前地区は、神宮前駅北西側から熱田区役所や図書館、熱田駅にかけての一帯に位置しており、年間700万人以上が訪れる熱田神宮にふさわしい門前町の再生と発展を目指しています。構想では、歴史的観光資源を活かしたにぎわい創出と、安全・快適な住環境の整備が柱となっています。観光面では、増加するインバウンド需要やイベント効果を受け、宿泊・飲食・土産物といった観光インフラの不足が課題となっており、これに対応するため新たな事業者の誘致や、大型観光バス駐車場の整備が検討されています。
特に、市有地を活用した駐車場は、観光客の滞在時間延長と地域資源への回遊性向上、さらには災害時のバックヤード機能としても期待されています。また、個性的な飲食店街「神宮小路」の保全と活用、空きビルや木造建築のリノベーションも重要なテーマです。レトロな街並みの魅力を生かしながら、耐震性・防火性に配慮した再生が図られます。

老朽化が著しい建物については、思い切った再開発も視野に入れています。さらに、交通利便性の高い立地を活かし、まちなか居住のニーズに応えるため、住宅や商業施設を含む複合開発も計画。商店街北側には、熱田駅から熱田神宮までのゆとりある歩行者空間を整備し、イベント開催や簡易店舗設置など、訪れたくなる街づくりを目指しています。本構想は、名鉄神宮前駅西側の再開発とも連携しながら、次世代に誇れるまちづくりの実現に向けて、地域一丸となって取り組まれます。
最終更新日:2025年5月21日