2025年1月26日(日)にグランドオープンを迎えた「Ginza Sony Park(銀座ソニーパーク)」は、東京・銀座の中心、数寄屋橋交差点に面した象徴的な場所に誕生した、新しいタイプの都市空間です。「変わり続ける実験的な公園」というコンセプトのもと、ソニーが長年にわたり蓄積してきた創造性と技術、そして街に対するまなざしを融合させ、都市に“余白”と“自由”をもたらす存在を目指しています。単なる商業施設ではなく、人々が立ち寄り、偶然の出会いや発見を楽しみ、都市との関わりを再定義できるような場です。
この場所は、もともと1966年に建てられた初代ソニービルが立っていた場所であり、銀座におけるソニーのシンボルとも言える地。創業者・盛田昭夫が愛した「銀座の庭」という思想を原点に、現代的な設計手法とプログラムによって再構築されたGinza Sony Parkは、未来に向けて進化し続ける「都市の公園」のあり方を体現しています。
→ソニー株式会社 新しい「Ginza Sony Park」が竣工
→ソニー株式会社 「Ginza Sony Park」2025年1月26日(日)グランドオープン
Ginza Sony Park(銀座ソニーパーク)の概要
- 「変わり続ける実験的な公園」というコンセプト
銀座の一等地に誕生したGinza Sony Parkは、ソニー創業者・盛田昭夫の「銀座の庭」の思想を継承し、商業施設ではなく都市に“余白”をもたらす実験的な公園として設計されている。 - 歴史的背景と都市との関係性
1966年に完成した初代ソニービルの精神を受け継ぎ、「街と共にある開かれた建築」としての思想を次世代へ展開。場所の記憶と都市的価値が重視されている。 - 2段階に分かれた開発プロセス
2018年から2021年までは地上部を更地として仮設公園として運営し、2025年に本格的な施設としてグランドオープン。延べ854万人が訪れるなど、都市空間の実験場として注目を集めた。 - スケールを抑えた建築と柔軟な空間設計
地上部をあえて低層に抑え、街との一体感を重視。建築は未完成性を含む設計で、用途やプログラムに応じて柔軟に変化できる構造となっている。 - “ジャンクション建築”と縦の回遊性
地下鉄駅と直結し、地上から地下4階まで連続したスキップフロア構造を持つ。施設全体が都市の通路として機能し、自然な回遊性を促すデザインが特徴。 - 常設テナントを持たない“流動型”空間
空間は常に変化し続け、音楽、アート、フードなど多様なコンテンツが入れ替わりで展開される。訪れるたびに新しい体験ができる都市型のプラットフォームとなっている。 - 都市と企業、公共性の未来を見据えた挑戦
「完成させない建築」「売らない空間」を通じて、都市における創造的な公共性の在り方を提示。ソニーの思想と街の未来が交差する、革新的な都市プロジェクトとなっている。

Ginza Sony Park の構想は、ただの建て替えではなく、初代ソニービルが築いてきた“開かれた都市空間”というビジョンを、次世代へと進化させることにありました。1966年の開業当初、ソニービルはガラス張りの開かれたファサードや、誰でも自由に出入りできる1階空間など、当時としては斬新な都市設計思想を具現化していました。
盛田昭夫は、ソニーがただの企業活動にとどまらず、銀座という公共性の高いエリアの中で街と共に成長し、貢献することを望んでおり、その象徴が建物の角地に設けられた小さなパブリックスペース「銀座の庭」でした。この10坪ほどの空間は、日常の中で人々がふと立ち止まり、語り合い、季節を感じることができる場として長年親しまれてきました。
その思想をベースに、Ginza Sony Park は「都市の余白」を大胆に再解釈し、建物のあり方そのものを公園化するという試みに挑戦しています。ハードとしての建築だけでなく、日々変化するコンテンツや人の動きこそが、真の都市的価値を生むという考えに基づいています。


このプロジェクトは、初代ソニービル解体から始まり、2段階に分けて進められました。第一段階(2018年〜2021年)は、地下部分をそのまま活用しながら地上部分をあえて更地にして「実験的な公園」として開放するという大胆な試みでした。都心の一等地をイベントスペースとして開放することは極めて稀であり、多くの人々に驚きを与えました。
この期間中には、音楽ライブ、アート展示、屋台、ワークショップ、都市農園など多種多様なプログラムが展開され、都市空間における余白の価値とその使い方を実験的に模索しました。結果として、コロナ禍を含む約3年間で延べ854万人が訪れ、単なる商業開発とは異なる「体験としての場所」の可能性を社会に示しました。

第二段階となる本施設は、2024年末に建物本体が竣工し、2025年1月にグランドオープンを迎えました。このフェーズでは、より恒常的な構造物を整備しつつも、“変わり続けること”を設計思想の中核に据えた空間づくりが行われています。

新しいGinza Sony Park の建築は、従来の商業施設のスケール感を見直し、街に「圧迫感を与えない」ことを意識して設計されました。建物は地上5階、地下4階の構造ですが、地上部は銀座周辺の平均的な高さの約半分に抑えられています。これにより、数寄屋橋交差点にゆとりを与え、周囲の建物や街路樹との調和を図るとともに、空の広がりや風の抜けを感じられる開放感を生み出しています。
外装には、打ち放しのコンクリートと鏡面ステンレスのグリッドフレームが用いられており、無機質ながらもどこか温かみのある存在感を放っています。内部空間は、柔軟なレイアウト変更が可能な構造を採用し、コンテンツに応じて形を変えられる“未完成性”がデザインに織り込まれています。また、光と影、水や緑といった自然要素を効果的に取り入れた設計が、都市の中で人々の感覚をリセットする空間をつくり出しています。

Ginza Sony Park は、三方を道路に囲まれ、さらに地下鉄「銀座」駅、「日比谷」駅と直結するという、東京でも特異な都市立地にあります。この立地特性を最大限に生かし、建物は“ジャンクション(接続点)としての建築”という考えのもとに設計されました。
内部はスキップフロア構造を採用しており、地上から地下4階までが立体的に連続する「縦のプロムナード」が空間の核となっています。エレベーターや階段ではなく、緩やかなスロープやステップで人の流れが自然に上下階へと誘導され、施設全体を回遊できる構成となっています。地下鉄の改札から地上の街へ、あるいは逆に地上から地下鉄へと“通り抜ける”こともでき、建物自体が都市の歩行動線の一部として機能しています。
このような構造により、商業的な目的だけでなく、通勤や散策など日常の中の「経路」としても活用されており、建築と都市が高いレベルで融合しています。


Ginza Sony Park の最大の特徴の一つは、「常設のテナントを持たない」ことです。代わりに、全フロアで入れ替わり立ち替わり行われる展示やイベント、ショップ、カフェなどが絶えず更新されていきます。この方針は、単にテナントの流動性を意味するのではなく、「場を固定化しない」ことによって生まれる余白と柔軟性を重視したものです。
訪れるたびにまったく違う体験ができることは、都市における“日常の中の非日常”を提供することに繋がっています。音楽ライブ、フードイベント、社会課題へのアプローチを促すインスタレーションなど、多彩なプログラムが展開されており、あらゆる世代・関心層の人々がそれぞれの関心に応じた時間を過ごすことができます。


2025年のグランドオープンに合わせて開催された「Sony Park展2025」は、ソニーグループの6つの事業領域(ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、エンタメ技術、金融、ソニーの社会活動)をテーマに、アーティストやクリエイターとコラボレーションしたインスタレーションが展開されました。
この展示では、「Play」「Listen」「Watch」「Create」などの体験要素を通じて、来訪者が自らの感性や価値観と向き合えるような空間が用意され、単なる製品紹介にとどまらない“体験型の対話”が促されました。今後も、ソニーのさまざまな技術や思想を起点に、都市・社会と交わる多様なプロジェクトが展開される予定です。

Ginza Sony Park は、銀座という日本有数の商業・文化エリアにおいて、あえて「売らない」「固定しない」「完成させない」ことを選んだ、極めて異質な都市空間です。それは、都市の中にあるべき“余白”がいかに人々の想像力や創造力を引き出すかを問いかける試みでもあります。
建築物であると同時にプラットフォームでもあるこの空間は、ソニーという企業の価値観を体現しつつも、常に街と人に対して開かれ、変化し続けることを選びました。訪れる人々の行動や関心によって場の表情が変わることは、現代の都市における新しい公共性のあり方を示唆しています。
銀座の未来を考えるうえで、Ginza Sony Park が果たす役割は今後ますます重要になるでしょう。都市の記憶と革新、企業と公共、人と空間。そうした交差点としての可能性を持つこの“公園”は、これからも都市に小さな変化を起こし続けていくことでしょう。
最終更新日:2025年5月26日