世界一の乗降客数を誇る新宿駅において、京王線新宿駅の利便性や安全性を大幅に向上させるための「京王線新宿駅総合改善事業」が始まります。
京王電鉄株式会社を事業主体とし、国や東京都、新宿区が連携して進めるこの大規模な整備事業では、地下2階に位置するホームを東京メトロ丸ノ内線側へ約25メートル延伸し、新たに改札口を新設するほか、バリアフリー対応や観光案内所の設置など、駅全体の質の向上が図られます。整備期間は2024年度から2031年度までの8年間で2025年度には既存躯体の解体工事に着手されます。新宿駅周辺における歩行者の安全確保と移動円滑化、さらには観光拠点としての魅力向上が期待されています。
→新宿区 京王線新宿駅総合改善事業
→新宿区 政策経営会議情報提供書 令和5年11月2日(2)
→京王電鉄株式会社 新宿駅西南口地区開発計画および京王線新宿駅改良工事について
→京王電鉄株式会社 2025年度の鉄道事業設備投資に総額434億円
京王線新宿駅総合改善事業の概要
1. 事業の目的
新宿駅西口周辺の混雑緩和と安全性・利便性の向上を図り、円滑な乗換え動線や快適な駅環境を整備する。
2. 主な整備内容
京王線地下2階ホームの25メートル延伸、新たな改札口の新設、乗換通路の新設、ホームドア設置、バリアフリー設備の導入、トイレ・観光案内所整備など。
3. 解決される課題
ホーム中央や連絡通路の混雑、乗換動線の交錯、ホーム端部の狭さ、非バリアフリー構造、利用者動線の非効率性などを改善。
4. 整備の効果
移動時間短縮、安全性向上、バリアフリー強化、多様な利用者への対応、新宿駅全体の機能性・快適性の向上。
5. 整備期間と進捗予定
2024年度から2031年度までの8年間。2025年度に既存躯体の解体着手、2030年度中には新改札口の供用開始を予定。
6. 事業スキームと費用
事業費は約62.3億円。国が1/3、東京都・新宿区・京王電鉄が2/3を負担。新宿区は区内利用者割合(約30%)に基づき約5.4億円を負担。
7. 広域再整備との連携
本事業は東京都の「新宿グランドターミナル構想」と連携し、新宿駅周辺全体の再編成・都市機能強化の一環として位置づけられている。

新宿駅西口の地下広場周辺では、京王線から丸ノ内線への乗換え動線と、東西自由通路を利用する歩行者の流れが交錯し、日常的に大きな混雑が発生しています。特に、京王線ホーム中央やJR新宿駅との連絡通路などでは、ピーク時に旅客が極度に集中し、歩行者の安全やスムーズな移動が妨げられる状況が続いてきました。
また、ホーム終端部分の狭隘(きょうあい)なスペースや、バリアフリー基準に適合しない設備、案内の不備なども課題として指摘されており、多様な利用者ニーズに応えきれていない現状があります。これらの課題に対応するため、今回の整備は「鉄道駅総合改善事業」の一環として実施されるもので、駅機能の高度化と利用者満足度の向上を目的としています。


整備の中心となるのは、京王線新宿駅の地下2階ホームを丸ノ内線方面に約25メートル延伸する工事です。これにより、新設される改札口から丸ノ内線方面へのアクセスがスムーズとなり、乗換時の歩行距離の短縮と負担の軽減が見込まれます。
また、新たな乗換通路の整備により、地下1階の西口駅前広場での歩行者交錯の緩和にもつながります。あわせて、バリアフリー設備としてホームドアの設置やトイレのリニューアルも行われ、高齢者や障害のある方を含むすべての利用者に優しい駅空間が実現されます。さらに、観光案内所などの機能性の高い施設も整備され、観光やビジネスで新宿を訪れる国内外の人々にとって利便性が一層高まる計画です。

整備前の京王線新宿駅では、JR連絡口や地下連絡通路における混雑、ホーム中央での利用者集中、丸ノ内線への乗換え時の歩行者同士の交錯と身体的負担、旅客トイレ前の動線の非効率性、ホーム端部の狭さといった問題が山積していました。

今回の改善事業によって、これらの課題に一つひとつ具体的な対応がなされます。新設される改札口によりホーム中央の混雑が緩和され、西口駅前広場での交錯も軽減されます。ホーム延伸と車両停止位置の調整により、より安全な乗降環境が整備され、ホームドアの設置も進められます。また、バリアフリー基準に対応した設備や観光案内所の設置により、国内外からの来訪者の利用もより快適になります。これにより、単なる物理的な拡張にとどまらず、新宿駅全体の機能と快適性の底上げが実現します。


本事業は「鉄道駅総合改善事業」として、国土交通省の補助制度を活用して進められます。事業主体である京王電鉄のほか、東京都および新宿区が連携し、三者で費用を分担します。総事業費は約62.3億円と見込まれており、そのうち補助対象となる事業費は約54億円。この補助対象額の1/3を国が、残る2/3を地方自治体(東京都・新宿区)と京王電鉄が負担します。
地方自治体分については、新宿区内を出発地または目的地とする利用者が約30%を占めることから、区が約5.4億円(地方自治体負担分の30%)を、都が約12.6億円(同70%)を負担する形となっています。このような明確な財政スキームのもと、事業の円滑な遂行が見込まれています。

本事業は2025年度(令和7年度)に既存躯体解体工事に着手し、2031年度(令和13年度)の工事完了を目指します。2030年度(令和12年度)には新設改札口の供用開始も予定されており、順次利便性の向上が実感できる段階的な整備が行われます。この京王線新宿駅総合改善事業は、東京都が主導する「新宿グランドターミナル」構想とも連携しており、新宿駅周辺全体の再整備の一環として重要な位置づけにあります。複雑な構造と慢性的な混雑に悩まされてきた新宿駅を、より快適で安全、そして訪れる人々にやさしい都市ターミナルへと変貌させる大きな一歩となる本事業に、今後も大きな期待が寄せられています。
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最終更新日:2025年6月15日