東京都が事業主体となって進める「西武新宿線(中井駅~野方駅間)連続立体交差事業」は、中井駅付近から野方駅付近まで約2.4kmの鉄道を地下化し、道路と鉄道を立体交差化する大規模都市基盤整備事業です。中野区や西武鉄道と連携して進められており、開かずの踏切として長年地域課題となってきた7か所の踏切を解消するほか、交通渋滞の緩和、安全性の向上、地域分断の解消を目指しているものとされています。
地下化の対象となるのは新井薬師前駅と沼袋駅で、両駅はバリアフリー設備を備えた新しい地下駅へと生まれ変わります。また、鉄道地下化に合わせて駅前広場や都市計画道路整備のほか、駅前再開発などが一体的に進められ、駅周辺では新たな都市空間の形成も計画されています。
2026年7月時点の現地では、各工区で地下構造物の構築やシールドマシン発進準備などが進められている一方、用地取得の遅れやシールド工法の計画見直しにより、事業期間は2033年度末まで延長されています。完成後は交通・防災・都市機能の向上に加え、中野区北部のまちづくりを大きく前進させるプロジェクトとして期待されています。
西武新宿線(中井駅~野方駅間)連続立体交差事業の概要
1.約2.4kmの西武新宿線地下化事業
中井駅付近から野方駅付近まで約2.4kmを地下化し、道路と鉄道を連続立体交差化する大規模都市基盤整備事業。
東京都を事業主体とし、中野区と西武鉄道が連携して進める長期プロジェクト。
2.7か所の踏切除却による交通環境改善
中野通りを含む7か所の踏切を除却し、慢性的な交通渋滞や踏切待ちの解消を目指す計画。
道路交通の円滑化と踏切事故防止、地域分断の解消を実現する都市基盤整備。
3.新井薬師前駅・沼袋駅の地下駅整備
新井薬師前駅と沼袋駅を地下駅へ更新し、エレベーターやエスカレーターを備えた駅へ再整備。
安全性や利便性、バリアフリー性能を大幅に向上させる駅施設更新。
4.5工区に分けた段階的な工事推進
事業区間を5工区に分割し、開削工法やシールド工法などを組み合わせながら工事を進行。
2026年時点では地下躯体構築やシールドマシン発進準備などが進展。
5.事業期間延長と2033年度末完成予定
用地取得の遅れやシールド掘進計画の見直しを受け、事業期間を2033年度末まで延長。
早期地下化を目指しながら工事を継続する東京都と西武鉄道。
6.地下化と一体で進む沿線まちづくり
駅前広場や都市計画道路、市街地再開発などを地下化と一体的に推進する沿線整備。
新井薬師前駅や沼袋駅周辺の新たなにぎわいと交通結節機能の創出。
7.中野区北部の都市構造を変える重要プロジェクト
交通・防災・都市機能を総合的に向上させ、鉄道で分断された地域の一体化を実現する事業。
線路跡地活用を含め、中野区北部の将来像を大きく変える都市再生プロジェクト。

西武新宿線(中井駅~野方駅間)連続立体交差事業では、中井駅付近から野方駅付近まで約2.4kmの西武新宿線を地下化します。都市計画変更は2011年、事業認可は2013年に取得され、東京都が主体となり、西武鉄道・中野区と連携して工事が進められています。
地下化により除却される踏切は7か所に及び、中野通りを横断する踏切をはじめ、交通量の多い生活道路との平面交差が解消されます。これまで朝夕には長時間遮断されていた「開かずの踏切」がなくなり、自動車だけでなく歩行者や自転車も安全に通行できる道路ネットワークが形成されます。
また、鉄道で分断されていた地域が一体化することで、都市計画道路や駅前広場などの整備も進み、防災性や都市機能の向上にも大きく寄与するものとされています。


事業では新井薬師前駅と沼袋駅が全面的に地下化されます。両駅ともホーム長は約170mとなり、エレベーター・エスカレーターを備えたバリアフリー駅へ生まれ変わります。
新井薬師前駅は現在より北側に移設される地下駅となり、地下約15~16mに整備される計画です。一方、沼袋駅は現在の駅直下付近に地下駅が整備され、地下約18~19mの位置へ移転します。駅構造も更新されることで、ホームの安全性や利用環境が向上し、将来的には駅前広場や交通結節点との一体利用も可能となります。


中井駅から野方駅までの約2.4kmに及ぶ工事は、施工内容や周辺環境に応じて5つの工区に分けて進められています。地下鉄道の建設は営業中の鉄道を運行しながら行われるため、工区ごとに異なる工法を採用し、安全性を最優先に施工が進められています。
2026年4月時点では、新井薬師前駅前部に位置する第1工区で土留支保工と掘削工事が完了し、地下構造物の整備が本格化しています。沼袋駅部にあたる第2工区では、地上交通への影響を抑えながら地下躯体を構築する「逆巻き工法」により、箱型トンネルの建設が進められています。


また、第3工区では沼袋駅西側でパイプルーフ工法による施工が行われており、営業線への影響を最小限に抑えながら地下空間の構築が進められています。野方方面の第4工区では駅付近の地下躯体工事が進展し、中井方面となる第5工区ではシールドマシン発進基地の整備が進められています。現地の工事案内板によると、発進基地では後続台車などの設備設置も進んでおり、今後はシールドマシンによる本格的なトンネル掘削へ移行する予定です。

現地に掲示されている工事進捗のお知らせ板によると、2026年3月に事業認可が変更され、事業期間は令和15年度(2033年度末)まで延長されました。延長理由としては用地取得の遅れとシールドマシン掘進計画の見直しが挙げられています。
当初は2021年度、その後2026年度、さらに変更が行われ、現在では鉄道地下化は2032年度、2033年度末事業完了を目標としています。東京都、西武鉄道ともに早期地下化を目指し工事を継続するとしています。


鉄道地下化は単なる鉄道改良ではなく、中野区北部全体のまちづくりと一体で進められています。
新井薬師前駅では南側街区で市街地再開発事業が検討され、生活利便施設や住宅整備による新たな駅前空間の形成が計画されています。北側でも商店街や住宅地を含めたまちづくり方針が策定され、歴史や文化を生かしたにぎわい創出を目指しています。


沼袋駅周辺でも駅前北側地区の建物の共同化や再開発構想が進められており、駅前広場や区画街路第4号線、商業施設の充実などを通じて「新しい沼袋駅前の顔」を形成する構想が示されています。
さらに補助第220号線や区画街路第3号線など都市計画道路の整備も同時に進み、交通結節機能や防災機能の強化が図られます。

西武新宿線中井~野方間連続立体交差事業は、単なる踏切除却事業ではなく、中野区北部の都市構造そのものを大きく変える国家的規模の都市基盤整備といえます。
約2.4kmにわたる鉄道地下化によって交通渋滞が大幅に改善されるだけでなく、安全性や防災性が向上し、鉄道によって分断されていた地域が一体化します。また、地下化後には線路跡地の有効活用も期待されており、歩行者空間や広場、緑地など新たな公共空間の創出も視野に入れられています。
2033年度末の完成までにはなお時間を要しますが、本事業は西武新宿線沿線の利便性向上だけでなく、中野区全体の都市再生を牽引する重要プロジェクトとして、今後も着実な進展が期待されています。
出典
・西武鉄道株式会社 新宿線中井~野方駅間連続立体交差事業
・東京都 西武新宿線(中井駅~野方駅間)連続立体交差事業
最終更新日:2026年7月4日