新たな帝国劇場の設計者及び建築計画が発表され、日本全国から大きな注目を集めています。初代劇場が1911年に誕生して以来、帝国劇場は100年以上の長い歴史を持ち、日本の舞台芸術の中心的存在としてその名を刻んできました。初代劇場は、日本初の本格的な西洋劇場として当時の最先端技術と豪華な内装を誇り、国内外から高い評価を受けました。その後、1966年に現在の2代目劇場が建設され、多くの名作ミュージカルや演劇が上演される場として愛されてきましたが、半世紀以上の時を経て施設の老朽化が進んでいます。
このような背景から、劇場としての機能を大幅に向上させることを目的に、新たな劇場の建設が決定しました。再開発に伴い、2代目劇場は2025年2月をもって閉館し、3代目劇場が2030年度に新たに開業する予定です。新劇場は「日本を代表する劇場」として、観客だけでなく出演者、スタッフ、地域住民の全てにとって特別な場所となることを目指しています。建築家・法政大学教授の小堀哲夫により設計されたその建築コンセプトは「THE VEIL」。皇居の緑豊かな景観を取り込みつつ、次世代の舞台芸術を支える機能性と美しさを兼ね備えた劇場が誕生します。
計画の概要
- 建設の背景
初代帝国劇場は1911年に誕生し、日本初の本格的な西洋劇場として歴史を築いてきたが、2代目劇場(1966年建設)の老朽化が進んだため再建が決定。 - 新劇場の目的
観客、出演者、スタッフ、地域住民にとって快適で特別な空間を提供し、日本を代表する次世代型劇場を目指す。 - 閉館と再建のスケジュール
現劇場は2025年2月に閉館し、新劇場は2030年度に開業予定。 - 建築コンセプト
「THE VEIL」をテーマに、皇居の自然と調和し、次世代の舞台芸術を支える機能美を追求。 - デザインとランドマーク性
伝統と現代性を融合したデザインで地域の象徴的存在となり、サステナビリティを考慮したエコデザインを採用。 - 舞台芸術の革新
最新技術を活用した施設設計により、舞台芸術の可能性を広げ、観客に新たな体験を提供。 - 地域・文化への貢献
新劇場を通じて、文化・芸術の発信拠点としての役割を強化し、地域住民との交流を深める場を提供。

新しい帝国劇場の外観デザインは、過去から未来へと続く歴史の橋渡しを象徴するものとなります。外観は、劇場の伝統的な要素を受け継ぎながら、現代的で斬新なデザインを採用し、訪れる人々に一目で特別な存在感を感じさせるものとなります。劇場は皇居に隣接する立地を最大限に活かし、自然光が建物に柔らかな表情を与え、緑豊かな景観との調和を図るよう設計されています。
建物全体が地域のランドマークとしての役割を果たすようにデザインされ、遠くからでもその存在を認識できるアイコニックな形状を持つ予定です。さらに、環境負荷を最小限に抑えるためのエコデザインも採用され、サステナビリティを意識した建築として、次世代への配慮を感じさせる劇場になるでしょう。

帝国劇場は、日本初の本格的な西洋式劇場として、1911年に設立されました。創設には伊藤博文や渋沢栄一をはじめとする多くの著名人が関わり、創立当時の劇場は横河民輔設計によるルネサンス建築様式で建設されました。1912年には歌劇やバレエ、歌舞伎、シェイクスピア劇などを上演し、「今日は帝劇、明日は三越」という流行語を生み出すなど、消費文化の象徴的存在となりました。また、川上貞奴の帝国女優養成所を引き継ぎ、付属技芸学校が多くの女優を輩出しました。
1923年の関東大震災で大きな被害を受けましたが、翌年には改修を経て再開。1930年には松竹経営下で洋画封切館となり、1939年以降は東宝が運営を引き継ぎ、再び演劇主体の劇場へと戻りました。第二次世界大戦中は一時休演し、地下食堂が雑炊食堂として利用されることもありましたが、戦後は演劇活動が復活。1955年には映画館として機能しましたが、1964年に解体されました。

1966年に2代目の新しい劇場が谷口吉郎設計で再建され、劇場は国際ビルヂングの一部として生まれ変わりました。この2代目劇場では年間10作品程度の公演を行い、「日本レコード大賞」や年末ジャンボ宝くじ抽選会など、文化・エンターテインメントの発信地としても機能しました。2022年には建物の老朽化を受け、共同所有者とともに建て替えが発表されました。2025年に一時休館し、新劇場は2030年度に再開予定です。100年以上にわたる歴史を持つ帝国劇場は、日本の演劇文化を支え続けています。

新帝国劇場が含まれる「丸の内3-1プロジェクト」は、地上29階、地下4階の超高層ビルとして計画されています。劇場や出光美術館の他、商業施設やオフィスを備えた複合施設として、地域の新たなランドマークとなることが期待されています。特に皇居外苑を望む低層屋上テラスは、多彩なイベントの開催や観光資源化を目指した取り組みが行われ、都市景観面でも歴史と未来が融合する新しいシンボルとなるでしょう。

新劇場のエントランスは、訪れる人々を温かく迎え入れる特別な空間としてデザインされています。劇場に入る瞬間から期待感を高めるよう、壮大で開放的な造りが採用されています。正面玄関から続く広々としたアプローチは、劇場の華やかさを引き立てるだけでなく、訪れる人々に余裕と落ち着きを与える設計となっています。
エントランスホールでは、天井の高さや素材選びにこだわり、劇場全体の雰囲気を象徴するような豪華さとモダンなデザインが融合します。夜間にはライトアップが施され、昼間とは異なる幻想的な空間を楽しむことができます。さらに、エントランス付近にはインフォメーションデスクや荷物預かり所が設けられ、初めて訪れる人にも親切で快適な案内が可能な設計になっています。


新しいロビー空間は、劇場の中心的な交流の場として機能します。広々とした空間は、訪れる人々がリラックスし、公演前後のひとときを楽しむために最適な場所となるよう設計されています。ロビーの大きな窓からは自然光が差し込み、開放感と温かみを与える空間が広がります。
また、劇場内にはカフェやバーが設置され、軽食やドリンクを楽しみながら観劇の余韻に浸れる場所が提供されます。特別な公演の日には、ロビーでのミニコンサートや展示イベントが開催される予定で、劇場全体が文化と芸術の発信地となることを目指しています。観客同士が交流を深めたり、演出家やキャストとの特別な交流イベントが行われる場としても期待されています。

新帝国劇場の客席は、見やすさと快適さを追求した設計が施され、観劇体験が格段に向上します。従来の劇場では、後方や端の席からの視界が制限されることがありましたが、新劇場では全ての座席で最適な視界が確保されるよう、緻密な設計が行われます。
また、座席自体も快適性を重視し、クッション性や座面の広さが改良され、長時間の観劇でも疲れにくい作りとなります。さらに、足元のスペースを広げることで、観客がリラックスして楽しめる環境を提供します。車椅子やベビーカーにも対応した席が設けられるほか、補聴器や字幕サポートなど、アクセシビリティの向上にも配慮されています。新しい劇場では、すべての人が等しく舞台芸術を楽しめる空間が実現するのです。
最終更新日:2025年1月16日