宮城県は、東九州新幹線整備に向け、「日豊本線ルート」、「鹿児島中央先行ルート」、「新八代ルート」の3案を対象に、整備費用、所要時間、需要推計、費用便益分析などの調査を実施、整備計画路線への格上げを求める要望書を国土交通省に提出しました。調査結果では、各ルートは、時間短縮効果や整備区間の長さなどで特色があり、近年の事例を基に各構造物の単価や延長比率、資材物価指数を用いて整備費を試算しています。都市間距離を平均速度210km/hで算出した所要時間は参考値とし、2018年度の移動者数を基に需要推計を行い、開業年度を2060年度と仮定しています。
さらに、建設開始を2045年度、運行開始を2060年度とし、利用者便益、供給者便益、残存価値を50年間で評価する費用便益分析も行われています。なお、東九州新幹線は1973年に基本計画路線として定められて以来、整備計画路線への格上げが進まず、他路線と比べて開業までの期間が長引いています。これに対し、宮崎県は沿線自治体と連携し、日豊本線ルートの整備計画路線への格上げと、約3.8兆円の必要財源確保を国土交通省に要望するなど、議論と機運の醸成を図っています。
東九州新幹線の計画概要
- 調査対象ルートと特徴
「日豊本線ルート」「鹿児島中央先行ルート」「新八代ルート」の3案を調査。
各ルートは、時間短縮効果や整備区間の長さなどに特徴がある。 - 整備費用の試算
近年の新幹線事例を基に、各構造物の単価と延長比率で整備費を試算。
2015年価格を基準に、2024年の資材物価指数で換算している。 - 所要時間の想定
各ルートの都市間距離から平均速度210km/hで計算。
実際の接続条件などの不透明要素もあるため、参考値としている。 - 需要推計の手法と前提
2018年度の移動者数を基に四段階推計法で需要を算出。
新幹線開業年度を2060年度とし、既存利用者の転換分を含む。 - 費用便益分析の概要
建設開始を2045年度、運行開始を2060年度と仮定。
利用者便益、供給者便益、残存価値の合計で50年間の効果を評価する。 - 新幹線整備の歴史と課題
東九州新幹線は1973年の基本計画路線決定後、整備計画路線への格上げが進んでいない。
他路線との比較で、整備開始まで長い年月が経過している。 - 宮崎県の要望と取組
宮崎県は、沿線自治体と連携し日豊本線ルートの整備計画格上げと財源確保(約3.8兆円)を要望。
3ルートの費用・所要時間調査を通じ、県民の関心と議論の活性化を図っている。

宮崎県の調査によると、新幹線の導入により、宮崎と福岡の間の移動時間が大幅に短縮される見込みです。例えば、日豊本線ルートでは本州からの時間短縮効果が大きく期待される一方で、整備区間が最も長くなる点が課題とされています。対照的に、鹿児島中央先行ルートは整備区間が最も短いという利点を有するものの、最大限の時間短縮効果を実現するためには全線の開業が不可欠です。
また、新八代ルートにおいては、福岡から宮崎への大幅な時間短縮が見込まれるものの、そのルートが基本計画路線としての位置づけに課題が残っているとされています。さらに、新幹線開業後の運賃は現行の特急料金体系に基づいて算出されるため、特急利用者や航空、バス、自家用車利用者からの転換が期待されています。

宮崎県と福岡県を結ぶ新幹線の導入による所要時間と料金の予測結果が示されました。現在、宮崎から福岡までの移動距離は414.8kmで、所要時間は約231分、運賃は合計14,730円(うち特急料金は7,360円)となっています。新幹線導入後のルートとして、「日豊本線ルート」、「鹿児島中央先行ルート」、「新八代ルート」の3つが想定されています。
日豊本線ルートでは、移動距離は342.8kmとなり、所要時間は98分と大幅に短縮されます(▲133分)。運賃は14,290円(特急料金6,920円)となる見込みです。
鹿児島中央先行ルートでは、移動距離は391.5kmとなり、所要時間は132分(▲99分)となります。運賃は14,290円(特急料金6,920円)と、日豊本線ルートと同水準です。
新八代ルートでは、移動距離は最も短い292.3kmとなり、所要時間も最も短い84分(▲147分)となることが予測されています。運賃も他のルートより低く、10,640円(特急料金5,030円)となる見込みです。
これらのルートの選定により、宮崎~福岡間の移動時間が大幅に短縮されることが期待され、特急利用者に加え、航空・バス・自家用車利用者の新幹線への転換が進む可能性が高まります。

全国の新幹線整備計画では、1973年に決定された基本計画路線11路線のうち、整備計画への格上げが進んだのは一部にとどまっています。九州では西九州新幹線が2022年に開業しましたが、東九州新幹線は未だ整備計画に至っていません。今回の要望書提出を受け、宮崎県を含む沿線自治体は新幹線実現に向けた機運醸成を強めています。

現在の宮崎駅周辺では、新幹線整備に向けた動きが徐々に広がっています。宮崎県では2024年度に3ルートの調査を実施し、費用便益や所要時間の試算を通じて、県民の関心を高めています。新幹線の整備により、観光・ビジネスの活性化、福岡や本州とのアクセス向上が期待される一方、財源確保が今後の大きな課題となります。
最終更新日:2025年2月5日