MVRDVは、オランダ・ローゼンダール市の都市密度向上を目指すマスタープラン「The Mosaic(ザ・モザイク)」を発表しました。この計画は、2021年からローゼンダール市と協力し、市民参加型のプロセスを経て策定されたものです。都市の成長を支え、文化・教育・レジャー環境を充実させるための戦略をまとめた7つの文書として公開され、市内40以上のプロジェクトが提案されています。
The Mosaic(ザ・モザイク)の概要
1. 背景と目的
ローゼンダール市はMVRDVと協力し、都市開発の総合的な戦略を策定した。この計画は、既存のプロジェクトを統合し、持続可能な成長を促進することを目的としている。
2. 「The Mosaic」のビジョン
この計画は「The Mosaic」と名付けられ、市民の参加を通じて策定された。土地利用の調整や40以上のプロジェクトを通じて、市の可能性を最大限に引き出すことを目指している。
3. 人口増加への対応
ローゼンダールは現在人口約77,000人であるが、100,000人への増加を目標としている。これにより、文化、レジャー、投資の機会を拡充し、若者の流出を防ぐ狙いがある。
4. 土地利用と都市構造の再編
都市の土地利用を「バーコード」として再構築し、住宅、文化、自然、再生可能エネルギーのためのスペースを増やす。インフラ面では、新設と撤去をバランスよく調整する方針である。
5. 移動手段と都市の魅力向上
徒歩や自転車を重視した移動ネットワークを構築し、住民の利便性を向上させる。また、多様な住宅開発と教育・文化施設の充実により、幅広い世代に魅力的な都市を目指している。
6. 地域ごとの個性を活かす
各地区の特性を生かした「地区パスポート」を作成し、個々の役割を明確化する。これにより、ローゼンダール全体のアイデンティティの確立を図る。
7. 主要プロジェクトの展開
駅周辺の再開発、高層ビルの建設、修道院庭園の再生、教会の活用など、40以上の戦略的プロジェクトを実施予定である。これにより、市の魅力と機能性を高めていく。

ローゼンダールは、オランダ南西部に位置し、ランドスタット、フランダース、北ブラバント州の主要都市、ゼーラント州に囲まれた地域にあります。人口は約77,000人で、ここ10年停滞が続いており、特に若者の流出が課題となっています。市は人口10万人への増加を非公式な目標とし、文化・レジャー・投資の機会を増やすことで地域の活性化を目指しています。「The Mosaic」は、この人口減少の流れを食い止め、都市の魅力を高めるための戦略として策定されました。

2021年、ローゼンダール市はMVRDVを都市開発コンサルタントとして迎え、同社の創設パートナーであるウィニー・マース氏が都市アドバイザーに就任しました。MVRDVはRebel GroupやTransitiefocusなどの専門家と協力し、これまで進められてきた個別のプロジェクトを統合し、包括的な戦略ビジョンを作成しました。市民3,000人以上の意見を取り入れた「ボトムアップ」と「トップダウン」を融合させた計画となっています。

計画では、ローゼンダールの土地利用を「バーコード」のように視覚化し、住宅、文化、自然、水資源、再生可能エネルギーのためのスペースを再配分しています。未利用地を活用しながら、既存のインフラ面積を増やさずに機能を集約する方針を示しています。さらに、歩行者や自転車に優しい都市づくりを推進するため、道路、歩道、堤防を統合した移動ネットワークの整備も進められます。

現在、ローゼンダールの住宅は一戸建てが中心ですが、計画ではより多様な住宅タイプを導入し、若年層や家族、シニア世代にとって魅力的な環境を整えていきます。また、レジャー、文化、教育施設の充実を図ることで、すべての世代にとって住みやすい都市を目指しています。

ローゼンダールは、歴史的な中心部ではなく、個性的な複数の地区によって成り立つ都市です。計画では、それぞれの地区に「ネイバーフッド・パスポート」を設定し、役割と今後の変革を明確にしています。例えば、駅周辺を職業学校を含む複合用途エリアに再開発することや、A58高速道路の一部を覆い公園と住宅地を設置すること、新市場(Nieuwe Markt)周辺の高層化、マリアダル修道院庭園の住宅併設リノベーション、河川拡張によるレクリエーションスペースの創出、空き教会の住宅・コミュニティ施設化など、40以上のプロジェクトが提案されています。

「The Mosaic」は、市の成長を促すための「質的飛躍(Quality Leap)」を実現するビジョンとして策定されました。提案されたプロジェクトの一部でも実行されれば、ローゼンダールの住民の生活の質が向上し、より活気ある都市へと変貌を遂げるでしょう。市の承認を受けたことで、今後は具体的な実施計画が進められることが期待されます。
最終更新日:2025年3月29日