ザハ・ハディッド・アーキテクツ(ZHA)が手がける最新プロジェクト「Oystra(オイストラ)」が、アラブ首長国連邦(UAE)のラアス・アル=ハイマに位置するアル・マルヤン島で発表されました。
オイストラは、総面積12万8000平方メートルにおよぶ海辺の複合開発で、950戸のレジデンス(1~4ベッドルームのアパートメント、デュプレックス、ペントハウス、水辺のヴィラ)に加え、ショッピング、ダイニング、レジャー施設が一体となった高級ライフスタイルの拠点となる予定です。アラビア海を望む流麗な建築は、自然環境との調和を意識して設計されており、ラアス・アル=ハイマ首長国の観光・居住需要の急成長に応えるランドマークとなることを目指しています。
Oystra(オイストラ)の概要
- プロジェクトの概要
Zaha Hadid Architects(ZHA)による、アラブ首長国連邦ラアス・アル=ハイマ首長国・アル・マルヤン島での海辺の複合開発プロジェクト。総面積約12万8000平方メートル、高級レジデンスと商業・レジャー施設の融合。 - 建設地と地域の特性
全長4.5km、白砂のビーチ7.8kmを誇る人工島「アル・マルヤン島」。2030年までに観光客数年間350万人、人口55%増加を見込む注目の開発エリア。 - 建築の特徴
波紋や自然エネルギーに着想を得た、曲線的かつ彫刻的な建築デザイン。20階建てタワー群、住戸の約75%が海の眺望を確保するレイアウト。 - レジデンスと施設構成
1~4ベッドルームのアパートメント、デュプレックス、ペントハウス、水辺のヴィラなど計950戸の住戸。屋上インフィニティプール、高級レストラン、ビーチクラブ、商業施設の併設。 - 環境配慮と技術的工夫
自然換気、太陽光遮蔽、二重ファサード、海水冷却システムなどを活用した持続可能な建築技術。過酷な気候下での快適性と省エネ性の両立。 - 公共性と都市との接続
4万2000平方メートルの緑地、遊歩道、島を一周できるプロムナードの整備。住民や観光客に開かれた公共空間の創出。 - パートナーシップと今後の展望
ZHAとデベロッパーRichmindによる共同開発。地域開発機関Marjanとの連携による、アル・マルヤン島の中東屈指のライフスタイル拠点化への貢献。

オイストラが建設されるアル・マルヤン島は、アラブ首長国連邦の中でも急速に発展を遂げているラアス・アル=ハイマ首長国に属する人工島です。全長4.5キロメートルにおよぶこの島は、23キロメートルの海岸線と7.8キロメートルの白砂のビーチを有しており、観光と居住の両面で注目される新興開発地となっています。周辺には公園、マリーナ、ウェルネス施設、エンターテインメント施設などが整備されており、住民や観光客にとって魅力的な環境が整えられています。ラアス・アル=ハイマ空港からは車で約25分、ドバイ国際空港からも45分とアクセスも良好です。
この地域では2030年までに人口が55%増加し、さらに年間観光客数も350万人に達すると見込まれています。それに伴い、住宅および観光インフラの需要が急増しており、そうした背景の中で「Oystra」は単なる住宅開発にとどまらず、都市計画の中核を担う存在として期待されています。

「Oystra」のデザインは、波紋のように広がる自然の力学から着想を得た、彫刻的で有機的なフォルムが特徴です。ZHAが得意とする流動的な幾何学形態が建物全体に展開されており、建築物と自然が融合するような空間が生み出されています。20階建てのタワー群は白砂のビーチと海を臨む広大な敷地に配置され、全住宅の約75%が海のパノラマビューを楽しめるように設計されています。
アパートメントには広々としたバルコニーやテラスが備えられ、波が砂に描く模様を思わせる曲線が外観に優雅なリズムを与えています。これらの屋外空間は、室内空間の延長としても機能し、直射日光を遮ることで快適性を高めています。また、屋上には360度のインフィニティプールとレストランが設けられており、海と島を一望できる特別な体験を提供しています。


Oystraの設計には、ZHAの環境・サステナビリティチームによる先進的なエコ技術とシミュレーションが多く取り入れられています。建物の配置や構造、向きなどは、気候データに基づく環境シミュレーションによって最適化されており、自然換気の最大化や太陽熱遮蔽の強化が図られています。ファサードには断熱性を高める二重構造が採用され、外気の熱から室内を守りながら冷房負荷を軽減しています。
さらに、海水を利用した冷却システムも導入されており、地球温暖化対策としても意義深い取り組みといえます。このような包括的なアプローチにより、Oystraはラアス・アル=ハイマの過酷な乾燥気候の中でも、持続可能で快適な生活空間を実現する建築として注目されています。

Oystraは、単なる居住施設としてだけでなく、都市と自然をつなぐ「結節点」としての役割も果たすように設計されています。敷地内には4万2000平方メートルにおよぶ緑地、コートヤード、スイミングプール、ビーチクラブが配置されており、都市の賑わいと自然の静けさが共存する空間となっています。また、開発地はアル・マルヤン島全体を巡る緑陰のプロムナード(遊歩道)と接続しており、住民や来訪者が歩いて島を一周できるようになっています。
この遊歩道は、北西から吹く海風によって自然に冷却される設計が施されており、年間を通して快適に利用できるインフラとして機能しています。Oystraは、島内の公共施設や観光スポットとシームレスに繋がっており、都市的な利便性と自然の潤いが両立する生活環境を提供しています。


オイストラは、ZHAとデベロッパーであるRichmind(リッチマインド)とのクリエイティブな対話と共通のビジョンに基づいて進められています。ZHAのクリストス・パッサス氏は、「Oystraの彫刻的なデザインは、海と空の自然のエネルギーに触発され、環境と調和するダイナミズムと開放性を表現しています」と語っています。
また、RichmindのCEOであるモハメド・ラフィー氏は、「Oystraは、我々のビジョンである革新的で時を超える空間づくりへの情熱を体現しています」と述べており、ZHAとの協業が戦略的かつ創造的な選択だったことを強調しています。さらに、開発地域を管轄するMarjanのCEO、アブドゥッラー・アル・アブドゥリ氏も、「Oystraはアル・マルヤン島を世界的なライフスタイル拠点へと成長させるビジョンの中核を担うプロジェクトです」と述べ、今後の発展への期待を示しています。
最終更新日:2025年5月21日