神戸市は2025年4月、「神戸ウォーターフロントグランドデザイン」を策定したことを公表しました。神戸ウォーターフロントグランドデザインは、2012年から段階的に進められてきたウォーターフロント再開発事業が、神戸ポートタワーのリニューアルやジーライオンアリーナ神戸の開業といった重要な節目を迎えたことを契機に、再開発の新たなステージとして策定されたものです。
神戸空港の国際化をはじめとした都市を取り巻く社会環境の変化を踏まえ、概ね2040年頃までを見据えた今後10〜15年間におけるまちづくりの方向性を示しています。都市としての魅力をより一層高め、国内外からの来訪者や居住者にとって持続可能で魅力的な空間となるよう、自然や歴史、文化、テクノロジーを融合させた未来志向のビジョンが打ち出されています。
神戸ウォーターフロントグランドデザインの概要
- グランドデザインの策定背景と目的
2012年から進められてきたウォーターフロント再開発が新たな段階に入ったことを受け、2040年頃までを見据えた将来ビジョンとして「神戸ウォーターフロントグランドデザイン」が策定された。 - 移動・回遊性の強化
歩いて楽しい空間づくりを目指し、LRTやBRTなど新たな交通手段の導入を含む移動環境の改善とエリア間のシームレスな接続を推進。 - 緑と開放空間の創出
港と山の景観を活かしながら、緑地や広場などのオープンスペースを整備。自然と調和した快適な都市環境の形成を図る。 - 夜景とナイトタイムエコノミーの活用
ランドマークのライトアップや夜間イベントの充実によって、夜の時間帯も魅力的なエリアとし、観光や経済活動の活性化を促進。 - 民間投資と官民連携の促進
多様な民間事業者の参画による複合機能都市の形成と、官民連携によるエリアマネジメント体制の構築を推進。 - 都市の魅力と持続可能性の両立
自然、歴史、文化、テクノロジーを融合させたまちづくりにより、国内外の人々に選ばれる都市空間の実現を目指す。 - 神戸ブランドの再構築と発信力強化
ウォーターフロントを中心に、都市の魅力や発信力を高める取り組みを通じて、神戸のブランド力と国際的な存在感の向上を図る。

「移動・回遊」の戦略では、ウォーターフロントエリア全体を「歩いて楽しい、歩きたくなる」場所とすることを目的に、安心・快適な移動環境の整備が重視されます。ウォーカブルな空間の形成として、歩行者優先の広場や緑地、パブリックスペースの創出が進められ、特に回遊性を高めるための街路設計や景観整備が図られます。また、次世代型交通としてLRT(次世代型路面電車)やBRT(バス高速輸送システム)といった新たなモビリティの導入も検討されており、三宮駅や元町駅などの主要ターミナルとウォーターフロントをシームレスにつなぐ交通ネットワークの強化が期待されます。これにより、移動の利便性が飛躍的に向上し、地域全体の回遊性と魅力が高まります。

「夜景・ナイトタイムエコノミー」では、神戸の代名詞とも言える美しい夜景を活かしたまちづくりが進められます。神戸ポートタワーや神戸海洋博物館といったランドマークのライトアップに加え、夜間を彩るイルミネーションやデジタルアートなどの演出によって、夜の時間帯にも訪れたくなる魅力的なエリアを形成します。また、ナイトマーケットやライブイベント、花火大会など夜型コンテンツの充実を通じて、夜の観光需要や滞在時間の延長が期待されます。ナイトタイムエコノミーの推進は、観光産業の振興や地域経済の活性化につながるとともに、神戸のブランド力向上にも寄与する取り組みです。

「緑とオープンスペース」の戦略では、神戸の魅力の一つである港と山の風景、海からの眺望といった自然資源を最大限に生かした空間づくりが進められます。特に気候変動への対応やヒートアイランド現象の緩和を視野に入れた緑化ネットワークの形成(グリーンコネクト)が進められ、四季折々の自然を感じながら過ごせる環境の整備が目指されます。オープンスペースとして、緑地、遊歩道、広場、テラスなどが整備され、訪れる人々に開放感と癒しを与える都市空間が広がります。こうした空間は、地域住民の憩いの場としてはもちろん、観光客やビジネス利用者にとっても魅力的な滞在環境となります。

「民間投資によるまちづくり」では、官民連携のもと、多様な事業者の参画によって、ウォーターフロントのポテンシャルを最大限に引き出す取り組みが展開されます。瀬戸内海と六甲山の自然景観に囲まれた神戸ならではの立地や、歴史的建築物・施設といった都市資源を活用した開発が進められ、観光、商業、文化、居住といった多様な機能が融合する複合的な都市空間が形成されます。また、エリアマネジメントの手法を用いて、地域の価値を高め、継続的な維持管理・運営がなされることで、まちの魅力と活力が長期にわたって維持されることが期待されます。こうした民間主導のまちづくりは、神戸の都市力向上の原動力となります。

新港突堤西の海を望む現在の様子です。神戸港ならではの開放的な景観が広がる一方で、未活用の空間も点在しており、再整備によって大きな可能性を秘めたエリアであることがうかがえます。今後は、歩行者の回遊性を高める動線の整備や、緑豊かな空間の創出、多様な機能の導入などにより、神戸らしい魅力とにぎわいを備えた新たな都市空間への生まれ変わりが期待されています。
最終更新日:2025年4月24日